はじめに
この記事では、和紙の三大原材料である、①楮(こうぞ)、②三椏(みつまた)、③雁皮(がんぴ)について紹介します。また、黄蜀葵(おうしょっき)と呼ばれる和紙づくりに必要な植物「トロロアオイ」についても解説します。他にも、身近で使われている和紙にもスポットをあて、和紙をつかった「あぶらとり紙」や伝統工芸品である「和紙提灯」、「書道用半紙」などにも触れて説明します。
和紙の原料について
日本の和紙作りの三大原材料として使われている楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)は、幹の部分ではなく、樹皮の部分の繊維が原料に使われていることが共通の特徴です。樹皮は、外皮の中にある内皮の柔らかい繊維を使いますが、中でも柔らかい繊維を靭皮(じんぴ)と呼びます。以下、それぞれの植物に関して詳しくみていきます。
和紙の三大原材料① 楮(こうぞ)
楮(こうぞ)は、クワ科コウゾ属の落葉低木で、ヒメ楮とカジノキの雑種です。別名かみそ(紙麻)とも呼ばれています。成木は約3mほどになり、栽培も難しくなく、毎年収穫できる安定素材です。春に淡黄緑色の花が咲き、6月頃には、赤く甘い実をつけ、甘みがあり食べられます。
楮の歴史
楮は、古くから和紙の原料として知られていました。和紙の原料の代表として知られ、多くの和紙に使われました。楮は強く、比較的長い繊維を持つので、丈夫な紙ができます。そのため、かつては大事な文書などに使われ、重宝されていました。
楮の使用用途
楮は、現在でも和紙の主要原料で、日本で一番多く使われている和紙の原材料です。障子紙や本、画用紙などたくさんの素材として使われています。
和紙の三大原材料② 雁皮(がんぴ)
雁皮(がんぴ)は、生長すると2メートルほどになる、ジンチョウゲ科の落葉低木です。石川県より南側の、西日本に広く分布しています。夏の初め頃に、黄色く小さな花が密生して咲きます。生産は、少なく山に自生している木を使いますので生産量は少ないです。
雁皮の歴史
古くから紙の原料として使われていたといわれています。江戸時代にいたるまで、鳥の子紙という名で、紙の王として知られていました。平安時代には、かな文字を書くのによく使われていたようです。また、さらに古くには、日本で雁皮から作られた紙が、唐に献上されたという記録も残っています。
雁皮の使用用途
雁皮で作る紙は丈夫で虫の害に強いため、古くは貴重な文書に使われていました。しかし、今では、その用途ではほとんど使われなくなりました。現在は、写経用紙や手紙によく用いられています。また、岐阜県で作られる伝統工芸品の、岐阜うちわに用いられている和紙も、雁皮が使用されていることで有名です。
和紙の三大原材料③ 三椏(みつまた)
三椏(みつまた)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木で、冬になれば、葉を落とします。枝が三又に分かれることにより、名付けられました。3~4月頃枝の先に黄色いかわいい花が咲き、6月に実を付けます。赤い花をつける赤花三椏もあります。
三椏の歴史
原産地は中国中南部のヒマラヤ地方とされていますが、三椏は、日本固有の製紙原料です。製紙原料として日本では、今から400~500年くらい前から使い始められたと言われています。また、200年前には計画的に栽培し使用され始めました。現在では、和紙を作るときには、なくてはならない原料となっています。
三椏の使用用途
三椏は、世界一の品質である日本の紙幣の原料として使われています。印刷性に優れているため大蔵省印刷局に一定量、納められています。他には、かな用書道用紙や美術工芸品として、和紙人形やちぎり絵などに使用されています。
和紙におけるトロロアオイの役割
トロロアオイとは
トロロアオイをご存じでしょうか。トロロアオイは、アオイ科トロロアオイ属の植物です。別名花オクラと呼ばれ、和名では黄蜀葵(おうしょっき)ともよばれています。夏に黄色いきれいな花を咲かせます。花は、サラダなどにして食べられ、最大1.5mほどに成長する植物です。
「ねり」とは
トロロアオイは、根を「ねり」として使用されます。「ねり」とは、きれいな紙を作るために欠かせない成分です。ですが、トロロアオイの生産農家が高齢化しているため、トロロアオイの生産量も現在危機的な状態となっており、「ねり」の供給も厳しい状況のようです。
トロロアオイの根の成分
トロロアオイの根(黄蜀葵根)には、粘りのある、水に溶けやすい「カラクチュロン酸」といわれる多糖類が多く含まれています。
「ねり」の役割
この多糖類が、紙となるための繊維を水中に均一に広げる役割を持っています。和紙になる素材(楮、三椏、雁皮の三大原材料)は、繊維も長く食物繊維の比重:水の比重=3:2であるため、食物繊維が重たくすぐに沈んでしまいます。そこで、ねりを入れることによって沈むのを防いでいるわけです。
和紙で作られた商品① あぶらとり紙
あぶらとり紙は、化粧用の和紙で、顔の余分な皮脂をとるための商品です。元々は金箔の製造の時に使用する目的で作られた箔打紙でしたが、箔打紙の再利用として、使われたのがはじまりです。
雁皮のあぶらとり紙はあぶらとり紙の王様
金箔の箔打紙の原材料として雁皮(がんぴ)が採用されています。がんぴで作られたあぶらとり紙は、繊維の長さが長く丈夫なため、薄くても破れることが少なく抜群の吸収力があります。そのため、あぶらとり紙の王様と呼ばれています。
和紙で作られた商品② 和紙提灯
提灯には、和紙提灯と洋紙提灯、ビニール提灯などがあります。和紙提灯は、昔ながらの製法で、手作業で作られる伝統工芸品です。目を奪われるような高級感のある美しい和紙提灯や使い込まれることで生まれる和紙提灯特有の風合いが魅力の和紙提灯です。ですが、耐水性や耐久的には優れていない特徴があります。
提灯の歴史
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参考価格: 4,300円
提灯の歴史は、室町時代に中国から渡ってきました。中国提灯は、縦に竹ひごが入っているため折りたたむことができません。折り畳み式の提灯は、日本人により改良され、安土桃山時代から大量に使用されるようになり、日本の夏の風物詩の1つとなりました。現代では、洋紙提灯やビニール提灯が開発され、お祭りやお店の装飾用として使われています。和紙よりは品質が落ちますが、雰囲気を楽しむのに安価で、軽く手入れ不要ということもあり、好評です。
和紙で作られた商品③ ふすま・障子
現代では、ふすまや障子のある家も少なくなっていますが、純和風な家や民宿など少なくなっている分、魅力的に映ります。さて、現在のような和紙を張ったふすまや障子が誕生したのは、平安時代末期と言われています。
和紙は高価だったため普及が遅れ、江戸時代中期になると、障子の原料であるこうぞやみつまたの生産がさかんになり、庶民の家にも障子が使われるようになりました。ふすまは、がんぴからできていて、そのため、生産するのが難しく、障子よりもふすまのある家庭は、減少しています。
和紙で作られた商品④ 書道用半紙
書道と言えば、小学校でのお正月の書初めなどを思い浮かべる人も多いことでしょう。小学校で使う短い半紙と長い長半紙がありますが、半紙と言われるようになったのは、飛鳥時代とも言われています。この時代に作られた和紙を半分に切って使ったことが始まりです。
和紙で作られた商品⑤ その他
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和紙を利用して作られた製品は、他にも和紙の折り紙・番傘、小物(扇子や置物など)があり、海外からの旅行客のお土産として、喜ばれています。美術工芸品として和紙人形やちぎり絵などの素材としても使われています。
まとめ
和紙の三大原材料である楮・雁皮・三椏、そして、トロロアオイについてご紹介しました。また、和紙で作られた商品もたくさんありましたが、いくつかにスポットをあてて書かせていただきました。日本の工芸品の1つである和紙が少しでも身近に感じていただけたら幸いです。