紋枯病の代表的な症状と原因まとめ!予防・治療に効果的な対策は? | 病気・虫・雑草

イネの紋枯病
学名Thanatephorus cucumeris
別名葉腐病、苗立枯病、根腐病、くもの巣病
英名Thanatephorus cucumeris

紋枯病とは

Photo by JIRCAS

紋枯病(もんがれびょう)は、主にイネ科の作物とトウモロコシにおこる病気です。病気の発生は梅雨の時期から始まり、30℃以上になると伝染した作物が大量に見られるようになります。厄介なことに紋枯病の原因菌は越冬するため、効果的な対策を行うことが重要です。

紋枯病の症状

紋枯病では、病気の進行状況によって症状が変化します。紋枯病の初期段階では、土や水に近い葉鞘部に病斑が現れるだけです。症状が進行すると病斑は変色しますが、変色や病気の進行過程は、伝染した作物の種類によっても変わってきます。

紋枯病が発生する原因

紋枯病は、糸状菌(カビ菌)が原因でおこる病気です。糸状菌は気温が22℃を超えると活動が始まり、30℃以上になると活発に活動します。そのため「気温が30℃以上」「カビが発生しやすい状態」が長期間続くことが、紋枯病発生の原因です。

紋枯病が発生しやすい時期と作物

紋枯病を発生させるのは、カビ菌の一種です。そのためカビ菌が繁殖しやすい高温多湿の環境では、紋枯病が発生しやすくなります。発生し始める時期は作物によって異なりますが、病気発生のピークを引きおこす共通理由は、高温多湿の環境です。

病気が発生しやすい時期は?

時期1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
発生時期
発生のピーク

最も被害が深刻なイネ科植物の場合、高温多湿の状態が続く梅雨の中期以降に多く発生します。ところがトウモロコシの場合は、イネ科よりも若干早く、梅雨入り直後の発生が多いです。さらに気温だけでなく湿度が高い状態も、病気の発生に影響します。

病気が発生しやすい植物は?

紋枯病はイネ科に多く発生する病気ですが、紋枯病は別名で呼ばれることも多く、作物の種類によって名前を使いわけるのが一般的です。紋枯病の別名は葉腐病、苗立枯病、根腐病、くもの巣病があります。これらはすべて紋枯病の別名なので、病名は違っても症状や発生原因は基本的に同じです。

紋枯病 イネ・イグサ・トウモロコシなど
葉腐病 飼料用イネ、牧草類
苗立枯病または根腐病 トウモロコシ以外の野菜
くもの巣病 果樹、樹木類

紋枯病の症状と見分け方【作物別】

紋枯病の被害が深刻なのはイネ科の植物ですが、ほかの植物でも病気は発生します。「紋枯病」の病名を使うのはイネ科の作物とトウモロコシだけですが、そのほかの作物の場合は、紋枯病の別名を使うのが一般的です。別名は作物の種類によって使いわけられており、初期症状にはそれぞれ特徴があります。

①イネの紋枯病

イネ紋枯病は、担子菌類の糸状菌が原因でおこる病気です。梅雨の中頃から高温多湿の状態が続くと、病気の発生が始まります。イネ紋枯病は30℃以上になると原因菌の活動が活発になるため、気温の上昇とともに発生率が高くなるのも特徴です。

初期症状の特徴や見分け方

イネ紋枯病は、水に違い部分にある葉鞘部に病斑が現れるのが初期症状です。病気の進行状況は、病斑の色によって判別できます。発生直後の病斑は暗緑色ですが、次第に病斑の周囲が褐色化し、最終的に全体が灰褐色に変色して枯死するのがイネ紋枯病の特徴です。

②トウモロコシの紋枯病

トウモロコシ紋枯病の発生理由も糸状菌です。梅雨入り前から発生し始め、気温の上昇とともに病気は進行します。初期段階の症状は、葉鞘部にしか現れません。結実する頃には病斑が実の周辺にまで拡大し、実の表面に菌膜を作ります。実に付着した菌膜は、土に落ちた状態で越冬するのがトウモロコシ紋枯病の特徴です。

初期症状の特徴や見分け方

トウモロコシ紋枯病は、地面に近い葉鞘部に病斑ができるのが初期症状です。初期段階での病斑は褐色で、葉鞘部の縁に集中します。やがて病斑は葉鞘部の中心部からトウモロコシ全体に広がるため、目視だけで病気発生の確認が可能です。この段階での病斑は、灰褐色または灰白色に変色しています。

③パールミレット・ネピアグラスの紋枯病

パールミレット・ネピアグラスは、別名「トウジンビエ」というイネ科チカラシバ属の植物です。トウモロコシと同じく雑穀の1種ですが、夏~秋にかけてガマのような筒状の穂をつけるため、観賞用に栽培することもあります。よく似た穀類にチア、キアヌ、ダッタンソバなどがありますが、これらも紋枯病にかかりやすいです。

初期症状の特徴や見分け方

パールミレット・ネピアグラスは、耐暑性の強い穀物です。ただし紋枯病の原因菌は30℃以上で活動が活発化するため、気温の上昇とともに病気が発生し、初期症状が見られるようになります。パールミレット・ネピアグラスも、病気が発生すると「病斑の出現→病斑の変色→枯死」と進行していくのが特徴です。

紋枯病の予防方法

紋枯病はイネ科作物とトウモロコシの病気ですが、同じ病気でも別名で呼ばれる作物が存在します。そのため病名は違っても、紋枯病と同じ予防対策を必要とすることも多いです。予防には農薬を使うこともありますが、管理のポイントを工夫するだけでも予防対策として一定の効果があります。

予防法①ゴミの撤去

紋枯病の原因菌は土を農薬で殺菌消毒しても、畦や農道に残っている場合があります。生き残った菌はゴミに付着して畑や水田に戻ってくるため、こまめに掃除しゴミを撤去すると二次発生の予防に効果的です。撤去したゴミは二次発生の原因にならないよう、畑や水田から離れた場所で処分してください。

予防法②雑草駆除

紋枯病は畑や水田の畔に生えた雑草にも発生するため、農耕地だけでなく畦の雑草駆除も病気の予防対策に効果的です。雑草駆除は手作業でも構いませんが、土に根が残るとすぐに新芽が生えてきます。そのため雑草の駆除範囲が広い場合は、農薬の使用も検討するとよいでしょう。

紋枯病に予防効果が期待できる薬剤

ベンレート水和剤

参考価格: 989円

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紋枯病の予防には、ベンレート水和剤がおすすめです。ベンレート水和剤はベノミル剤を主成分とした薬剤で、紋枯病だけでなく、カビ菌が理由で発生する病気に効果があります。少量でも予防効果が現れるので経済的ですし、病気の治療にも適用可能です。

適用病名紋枯病、うどんこ病、菌核病、灰色かび病など
主な作物イネ
タイプ水和剤
主な用途予防
主成分ベノミル剤

紋枯病の治療方法

紋枯病は原因菌に伝染すると病気の進行スピードが速いため、治療が難しい病気です。さらに高温多湿を好むカビ菌によって発生するため、治療や対策が少しでも遅れると、作物全体に病気が伝染するリスクがあります。そのため初期症状が見られたら、即効性のある農薬を使って速やかに治療を開始しましょう。

紋枯病に治療効果が期待できる薬剤

薬剤①バリダシン液剤5

バリダシン液剤5

参考価格: 1,442円

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バリダシン液剤5は、バリダマイシンAを主成分とした薬剤です。イネの紋枯病の治療効果が高く評価されていますが、キャベツ黒腐病やハクサイ軟腐病などにも適用できます。有用害虫への影響がなく、作物に汚れがつきにくいのも人気の理由です。

主な作物イネ
タイプ液剤
主な用途治療
主成分バリダマイシンA

薬剤②オーソサイド水和剤80

オーソサイド水和剤80

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オーソサイド水和剤80は、ポリハロアルキルチオ剤を主成分とした薬剤です。野菜・果樹・小麦のほか、花卉類にも適用できます。さらに散布しても汚れがつきにくいため、雑穀類のオオクサキビやパールミレット・ネピアグラスの治療におすすめです。

主な作物小麦、オオクサキビ、パールミレット・ネピアグラス
タイプ水和剤
主な用途治療
主成分ポリハロアルキルチオ剤

薬剤③リゾレックス水和剤

リゾレックス水和剤

参考価格: 1,628円

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リゾレックス水和剤は、有機リン系のトルクロホスメチルが主成分の薬剤です。トウモロコシの紋枯病におすすめの薬剤ですが、トマト・キュウリ・ナスなど家庭菜園で人気の野菜にも使えます。残効性に優れており、少量でも効果が持続するのが特徴です。

主な作物トウモロコシ
タイプ水和剤
主な用途治療
主成分トルクロホスメチル

紋枯病の予防・治療におすすめの薬剤一覧

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商品
商品名ベンレート水和剤バリダシン液剤5オーソサイド水和剤80リゾレックス水和剤
価格989円1,442円3,671円1,628円
主な作物イネイネ小麦、オオクサキビ、パールミレット・ネピアグラストウモロコシ
タイプ水和剤液剤水和剤水和剤
主な用途予防治療治療治療
主成分ベノミル剤バリダマイシンAポリハロアルキルチオ剤トルクロホスメチル
商品リンク
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紋枯病によくある質問

栽培管理で予防対策に効果的なことは?

紋枯病は高温多湿の状態が継続すると発生しやすいので、気象庁が発表する天気1ヵ月予報のチェックは予防対策に効果的です。特に例年よりも気温が高く雨が多い場合は、こまめな防除が病気を予防します。