トマト黄化葉巻病は、トマト黄花葉巻ウイルスが原因で起こる病気です。ウイルスによる病気は薬剤を使っても治療することができません。したがって、病気にかからないように徹底した予防対策をとることと、早期発見により伝染を回避することが非常に大切です。
トマト黄化葉巻病にかかると、葉の緑色がまだらに色抜けし、黄色く変色します。さらに葉が内側に巻き込み、黄変したところから株の成長が止まります。そのうえ、発病した部分から先はトマトが実らなくなります。幼苗期に感染すると、苗全体が枯れてしまい、収穫できなくなります。
発病の初期は、新芽の芽先が緑色から黄色に変色し、内向きに葉を巻き込んでいくのが特徴です。その後葉脈間も黄化して、葉が縮れていきます。芽先から症状がでるので、よく観察していれば早期に発見できます。
トマト黄化葉巻病が発生する原因は、タバココナジラミがトマト黄化葉巻ウイルスを伝搬（でんぱん）することによります。発病したトマトの汁を吸って体内にウイルスを取り込んだタバココナジラミは、ほかの株に移動しながら、次々と伝染させていきます。このトマト黄花葉巻ウイルスは、人による接触や土壌を介した伝染はしません。
トマト黄化葉巻ウイルスを媒介するタバココナジラミは、日中平均気温が10℃以上になると活動が活発になります。したがって、3月には病気が発生し始め、6～9月にピークを迎えます。気温の低下とともに減少しますが、11月まで発生が確認されています。
トマト黄化葉巻病はトマトやミニトマトはもちろん、トルコギキョウにも被害がでます。ピーマンやじゃがいもなどにも感染しますが、これらの植物には被害がでません。
トマト黄化葉巻ウイルスを伝搬するタバココナジラミは、トマトやミニトマトの葉裏に寄生し、汁を吸います。ウイルスに感染すると、トマトの芽先の葉が黄色く変色して縮れ、葉の緑色がまだらに抜けて黄化します。葉が内側に巻き込んでいるところが、ほかの病気との見分け方のコツです。発病後の果実は大きくならずに落下してしまうので、収穫量が減少します。
トルコギキョウは、トマト以外で唯一トマト黄化葉巻病の被害がでる植物です。トルコギキョウがトマト黄化葉巻病に感染すると、葉が黄化して縮み、内側に巻き込みます。節間が短くなり株の成長が止まるので、元気な株に比べて小型化します。見た目では新芽の先だけに感染の症状が見られる場合でも、実際は株全体にウイルスがまん延しています。
トマト黄化葉巻病を予防するためには、ウイルスを伝搬するタバココナジラミを徹底的に防除する必要があります。ウイルスを「持ち込まない」「寄せ付けない」「感染させない」この3点からの予防方法を紹介します。
苗を購入するときは、ウイルスを持ち込まないように全体の状態をよく観察しましょう。葉にウイルス感染の病状がでていないか、葉の裏に虫が寄生していないか、ていねいに確認して、健全な苗を選ぶことが大切です。
タバココナジラミを徹底的に防除することによって、トマト黄花葉巻ウイルスの感染を防ぎましょう。タバココナジラミを寄せ付けない工夫と捕まえる方法について紹介します。
防虫ネット
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タバココナジラミは、0.4mm以下の網目を通れないことが実証されています。0.4mm以下の防虫ネットで株を覆うことによって、飛来してくるタバココナジラミを寄せ付けないようにしましょう。
シルバーマルチ
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日中活動する虫は、背中に光を受けることによって飛ぶことができます。そのため下から強い光を浴びると上下感覚を失い、うまく飛ぶことができなくなります。この性質を利用して、反射するシルバーマルチを設置することで、タバココナジラミの飛来を防ぎましょう。
ボタニ子
粘着くん
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化学殺虫成分を含まず、食用でんぷんを使用して物理的に殺虫する液剤です。粘着性で退治するため、収穫の前日まで使用できます。臭いも気になりません。ミツバチやテントウムシなどの益虫にもほとんど影響がなく、安心して使用できます。
ホリバー
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トマト苗にタバココナジラミが寄生しないように、黄色粘着補虫シートをトマトの上部に取り付けて、捕殺します。このシートはタバココナジラミのモニタリングとしての役割も果たしており、早期発見することにも効果的です。
防除対策をとってもタバココナジラミが葉裏に寄生してしまった場合、薬剤を使用することも検討しましょう。農薬はできれば使いたくないものですが、人力で除去することにも限界があります。決められた回数と決められた量を守って使用すれば、人体への影響はほとんど心配ありません。
ベニカベジフルスプレー
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殺虫成分ピレトリンは蚊取り線香にも含まれている成分です。高い持続性と速効性があり、葉裏まで浸透してタバココナジラミを撃退します。有機JAS適合の薬剤です。
トマト黄化葉巻病はウイルス病なので、どんな薬剤を使っても治療することはできません。したがって、病気を発見した場合は、伝染させないための対策をとることにより被害を最小限に抑えましょう。
トマト黄化葉巻病の感染を広げないようにするためには、ウイルスを伝搬するタバココナジラミの防除とともに、この害虫の温床を作らないことも必要です。タバココナジラミの生態を生かした対策により、ウイルス感染を防ぎましょう。
トマト黄化葉巻病の症状が出た株を放置すると伝染病になるため、すみやかに抜き取りましょう。取り除いた株はタバココナジラミの温床になるので、ビニール袋に入れて処分するか、土に埋め込みます。
タバココナジラミの寿命は約30日です。畑からウイルスを一掃するために、トマトの栽培が終わったら30日ほど間隔をあけましょう。タバココナジラミの伝搬以外でウイルスは伝染しないので、タバココナジラミを完全に除去することが目的です。
畑の周りに雑草を生やしておくと、タバココナジラミの発生源となるだけでなく、伝染源となる可能性もあります。雑草はこまめに取り除きましょう。
トマト黄化葉巻病はウイルス病のため、治療できる薬剤はありません。とにかく予防することと、除去することを徹底して、ウイルスのまん延を防ぎましょう。
トマト黄化葉巻病の見分け方は？
トマトの新芽が黄色く変色したら、トマト黄化葉巻病を疑いましょう。変色と同時に葉が内側に巻き込んでいたり、縮れていたりしていれば、間違いなくトマト黄化葉巻病です。
トマト黄化葉巻病の症状を見つけた場合、まず何をしたらよいか？
発病後は、株丸ごとウイルスに侵されています。感染が疑わしい株は、根ごと取り抜きます。抜き取った株はすばやくビニール袋に入れて密封し、処分しましょう。
トマト黄化葉巻病は、土や人の作業工程からうつるのか？
トマト黄化葉巻病の原因であるトマト黄化葉巻ウイルスは、タバココナジラミによる吸汁のみによって伝搬されます。土や人（作業）を介して感染することはありません。
この方法はコナジラミ類のほかに、アブラムシ類やアザミウマ類にも効果があるよ。