分類 | 単子葉植物イネ科スズメノヒエ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 30~60cm |
花の色 | 黒 |
花期 | 8~9月 |
生育場所 | 道路、空き地、河川敷、草地 |
分布 | 本州~九州 |
利用の可否 | 可 |
アメリカスズメノヒエは、南アメリカ原産の植物です。牧草や景観保全目的で栽培していたものが野生化し、あらゆる場所で雑草化しています。花序(かじょ:穂をつける茎)は二又に分かれており、子穂を茎に並ぶようにつけているのが特徴です。また茎を芝のように地上をはわせるため、時間経過とともに生息域が広がります。
アメリカスズメノヒエに花言葉はありません。仲間のスズメノヒエには「邪魔しないで」という花言葉があります。
アメリカスズメノヒエという名前は、南アメリカが原産国のスズメノヒエ属であることが由来です。スズメノヒエは人が食べる稗(ヒエ)に似ており、子穂が雀のように小さいことから名づけられました。英名のバヒアグラスは、ブラジル北東部のバイーア州が関係しています。
アメリアスズメノヒエは暖地型の草種ですが耐寒性が高いため、標高が高い場所でも生育が可能です。適応性があるのは乾燥した場所と日当たりのよい場所で、道端や公園でよく育ちます。また、根が地中深くに入り表面をち密に覆うため傾斜がある場所に適しており、山地帯の放牧草として栽培されています。
アメリカスズメノヒエは、種とほふく茎からの栄養生殖によって繁殖します。アメリカスズメノヒエは春~夏にかけての期間に、茎とともに根を伸長させ生息範囲を広げます。一方で、種子は硬い殻に包まれているので発芽に時間がかかり、雑草との競争に負けやすいです。しかし、芝のような草丈が低い植物が周りにある場所では種子から雑草化します。
ボタニ子
笹に似た育ち方をするんだねー。
アメリカスズメノヒエは開花時期が長く、夏~秋にかけて何度も穂をつけるほどです。登熟した種子は秋の期間に発芽し、小さな状態で冬を越します。冬の期間は日本芝のように茶色くなりますが、春になると緑色に戻ります。
アメリカスズメノヒエは草丈が30~60cmと高い雑草のため、芝を敷いている場所に発生すると景観を損ないます。駆除しようにも茎が太く、多方面に伸びているため引き抜きにくいです。また、根生葉(土壌表面を這う茎から葉が出ること)が多く生長点が低いことから、草刈りを繰り返しても退治が難しいです。
アメリカスズメノヒエを防除するときは、グリホサート系の除草剤を使用して根まで枯らすのがおすすめです。農用地であればラウンドアップやサンフーロンなどの除草剤を、10,000㎡(10a)あたりに薬剤1000mLを50~100Lの水に希釈して散布してください。
グリーンアージラン
参考価格: 3,471円
高麗芝などの日本芝であれば、春先の生育初期にアージラン液剤を10,000㎡(10a)あたりに薬剤500mLを200~300Lの水に希釈して散布してください。大きくなった雑草や西洋芝には効果がないので注意が必要です。
適用作物 | 日本芝、樹木など |
---|---|
毒性 | 普通物 |
性状 | 淡褐色澄明液体 |
有効成分 | アシュラム |
アメリカスズメノヒエを農薬を使用せずに駆除する場合は、シャベルを使って掘り起こします。芝のように茎を張り巡らしたアメリカスズメノヒエは抜き取りでは駆除できないため、シャベルで少しずつ茎を切りましょう。効果的なやり方は以下のとおりです。
アメリカスズメノヒエは一度発生すると退治するのが難しくなる雑草です。芝がある場所では、姿を確認できなくても予防として4~5月ごろに薬剤を散布すると効果的に駆除できます。ラウンドアップなどの除草剤を使って全体を枯らす場合は、種を落とす7月までには散布しましょう。
アメリカスズメノヒエは「バヒアグラス」という名前で、世界中で利用されています。バヒアグラスは暑さに強く、深根性のため砂質土壌(草が繁茂しにくい場所)でも生育でき、幅広い場所で栽培が可能です。さらにその生態は永続性が高く、草丈が低いことから放牧用や緑化用として利用できます。
バヒアグラスは、春時期に種子をまいて栽培します。寒さに弱く、緑化目的で栽培する場合は関東以西の地域でしかできません。初期生育が遅いため、播種のタイミングは雨の日前日を狙い、なるべく競合する雑草は抜いてください。播種量は牧草利用であれば3~5g/㎡、緑化利用であれば15~30g/㎡とし、時期が下がるほど量を増やしましょう。
バヒアグラスは、景観保持や芝生目的として利用できます。種子の値段がやすいので芝に比べるとコストをかけずに緑化できます。草丈も芝よりも高く、ほかの雑草発生の予防にもつながります。また、傾斜地で使えるため法面での利用もおすすめです。
バヒアグラスは人の食用には向きませんが、家畜の飼料として利用されています。日本国内では子取り用を目的とした牛が食べることが多く、山あいの放牧地に牧草として栽培しています。栽培にかかるコストが安く永続性が高い特徴がありますが、冬場は枯れてしまうので、別の牧草を育てたり飼料の確保が必要です。
キシュウスズメノヒエはアメリカスズメノヒエの花茎と同じ形をしている多年草です。アメリカスズメノヒエと比べると湿気に強く、水辺付近や湿地で生息しています。
ボタニ子
和歌山(紀州)で発見されたことが名前の由来になっているけど、北アメリカ原産の植物だよ。
名前がよく似ているスズメノヒエは、日本在来の多年草です。日当たりのよい場所を好み、ほふく茎がないためアメリカスズメノヒエのように横に広がりません。花序子穂が互生(茎の左右交互から子穂がでている)しており、毛が生えていないのが特徴です。
アメリカスズメノヒエとキシュウスズメノヒエは花序の大きさで見分けられます。どちらも二又にわかれて子穂をつけますが、アメリカスズメノヒエは穂の長さが10cmに対して、キシュウスズメノヒエは5cm前後と小さいです。その他のスズメノヒエ属の植物は花序が互生しているので簡単に見分けられます。
アメリカスズメノヒエの入手方法は?
アメリカスズメノヒエを栽培する場合は、バヒアグラスの名前で種子を探すとすぐに見つかります。緑化目的であれば「ペンサコラ」、飼料目的であれば「ナンオウ」といった品種があります。
アメリカスズメノヒエの栽培における注意点は?
アメリカスズメノヒエは環境適正が高い植物ですが、耐陰性(日照量の少ない場所でも生育できる)はあまり高くありません。標高のある北側斜面などでは、トールフェスクやイタリアンライグラスといった草種を選択してください。
出典:筆者撮影