コナカイガラムシの発生原因まとめ!予防・治療に効果的な対策 | 病気・虫・雑草

コナカイガラムシの仲間
学名 Coccoidea
別名
英名Planococcus Insect

コナカイガラムシとは

カメムシ目のカイガラムシ上科の仲間のうち、外見がフワフワした白い粉を全身につけている種類をコナカイガラムシ科として分類しています。コナカイガラムシは、農作物や植物の被害の原因となる害虫で対策が面倒な虫です。

虫の外見

コナカイガラムシは体長が3~4mm程度で、白い粉状の楕円形(わらじ型)です。成虫には足があり、長めの2本の触覚をもつ種類もいます。植物の栄養分を吸い取るために、管状の口針をもっています。幼虫は0.5mmほどの茶色っぽい色です。葉の裏など、蜘蛛の巣が絡んで集まっているようなところに生息しています。

コナカイガラムシの生態

日本に多く分布しているカメムシ目の昆虫は、冬場の寒い期間は休眠しています。それ以外は活動し、繁殖力の旺盛な害虫です。気温が上がる春に木の幹に列を成している姿や、葉の裏が真っ白に見える症状からコナカイガラムシの発生に気づくことがあるでしょう。

コナカイガラムシの活動期間
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
発生時期
発生ピーク

羽根の分類

昆虫は節足動物の総称です。からだは頭・胸・腹の3つの部分に分かれている虫で、羽は4枚と2枚のものがいます。昆虫の羽は、分類上は「翅(し)」の文字をつかって表し、頭の近くにある上側の羽根は「前翅」(ぜんし)」、腹に近い部分の羽根を「後翅(こうし)」と呼びます。

コナカイガラムシは半翅目

カイガラムシの「前翅」とよばれる羽の部分は硬いので「半翅(はんししょう)目」として分類されています。この「半翅目」の仲間には、カブトムシやカメムシもいます。

口の分類

Photo by vaboo.com

ヨコバイ

コナカイガラムシは、針状の口針を植物の茎や葉に突き刺して栄養分を摂取しています。口器とよぶ口の位置が腹付近にあることから腹吻(ふくふん)群の仲間とされ、ヨコバイ目のカメムシ亜目として分類されます。このような口と羽の特徴をあわせもっているカメムシ科の昆虫は、地球上に約1万種類もいるのです。日本には約500種類生息し、そのうちコナカイガラムシは日本全土に約60種いることがわかっています。

腹吻群 口器は前脚の間から出ている仲間(アブラムシ・カイガラムシ・ハゴロモなど)
頸吻群 口器は頭部の基部から出ている仲間(セミ・ヨコバイ・ウンカ)
鞘吻群 口器は前胸側版前部から出ていて鞘状部に収納される仲間(日本に分布していない)

コナカイガラムシの見分け方

コナカイガラムシ 害虫 梅の木
梅の木に寄生したコナカイガラムシ(枝の下方、白いポツポツが見える)
出典:筆者撮影

メスの見分け方

カイガラムシの多くの仲間は、脚が退化して硬い殻をまとった状態で木の幹などに寄生し、一生を過ごします。しかし、コナカイガラムシのメスは成虫になっても移動できることが特徴です。繁殖した場所の白カビが増殖しているように見える部分があれば、卵のうを背負ったメスがいて産卵しています。

オスの見分け方

オスの成虫はメスと違ってサナギを経て変態し、一対の羽をもっています。メスの近くにいる羽をもった虫を探してみると見つけられるでしょう。オスの口は退化しているため寿命は短く、交尾を終えるとその生涯を閉じるともいわれていますが、メスだけで単為生殖する種類もいます。

コナカイガラムシによく似た虫の見分け方

アオバハゴロモ
Photo by isado

アオバハゴロモ

幼虫の間、白い粉をまとっているアオバハゴロモという虫は、コナカイガラムシと間違えられることがあります。アオバハゴロモはコナカイガラムシと違い、蛾の形です。葉や枝を揺すると飛んで逃げていくので、見分け方は簡単です。ぴょんぴょんといった動きをしたり、素早い横移動をしたりする昆虫であればコナカイガラムシではありません。

コナカイガラムシの仲間

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白い粉あるいはカビのような外見をしたコナカイガラムシには、多くの仲間がいます。柑橘類を好むミカンコナカイガラムシや果実を好むクワコナカイガラムシ、松の葉に寄生するマツコナカイガラムシ、マツモトコナカイガラムシなどです。どの種類も大きさは同じぐらいですが、10mmの大きさになる種類もいます。

コナカイガラムシの発生原因

コナカイガラムシは、風で飛ばされて移って来ることが発生の原因です。飛ばされて移ってきたところで繁殖していきます。このほか、風で飛ばされて人の服に付き、家の中の植物に移って発生することもあります。つまり、大きな理由もなく、どのような植物でもコナカイガラムシが発生するといえるでしょう。

コナカイガラムシによる作物への被害

コナカイガラムシが発生したとき

コナカイガラムシは集団で集まり群れを成していることが多いので、排せつ物や分泌物の糖分を求めてアリや蜂などが寄ってきます。アリが列をなして木に登っているときやハチが頻繁に飛び回っている場合は、コナカイガラムシの発生を疑いましょう。葉の裏や新梢を観察してください。

果物の病気を招く

コナカイガラムシの仲間は、果物に悪影響を与えます。果実とヘタの間のような狭い隙間で冬越しするので、気温が下がる10月下旬になると越冬できる場所を探して果樹に移っていきます。越冬した幼虫は6月上旬~7月下旬に発生し、その年に生まれた幼虫は7月~9月ごろに発生します。特にフジコナカイガラムシは果物を好み、柿、梨、柑橘、ブドウ、イチジクなどの果物に発生する種類です。

カイガラムシが原因となる症状

すす病の発生症状

コナカイガラムシは、余った栄養分(糖分)を排泄物や分泌液として出し、それらにカビが発生します。カビから「すす病」が発生し、黒いすすのようなものがつく症状がでてきます。この部分は光合成ができません。そのため、生育が阻害され、へこんだり変色したりします。また、すすけて見えるので、食べるには敬遠したくなるような見た目です。

こうやく病の発生症状

コナカイガラムシの排泄物や分泌液にカビの仲間が繁殖しておきる「こうやく病」は、枝や幹を冒す病気です。色は灰色・茶褐色・黒褐色などがあり、病気の始まりは円形です。しかし、広がっていくと幹や枝にカビでできた厚い幕が張ったように見え、広がると生育が衰え枯枝も目立つようになります。

コナカイガラムシの防除・対策

対策①生育できない環境づくり

コナカイガラムシが好むのは、風通しの悪い枝や葉の茂みです。新芽や若枝(新鞘)が伸び始める樹木の勢いがでるころには注意しなければいけません。込みあった葉や枝を探し、定期的に剪定しておけば発生をある程度防げます。鉢植であれば繁殖期の5〜7月は植木鉢を風通しのよい場所に移動させたり、防虫ネット(寒冷紗)で覆ったりする対策もおすすめです。
 

風で運ばれるコナカイガラムシ

コナカイガラムシの対策は羽をもつオスだけでなく、風にのって羽のないメスや幼虫も移動していくので、発生した樹木だけでなく周囲の木々にも目を向けて、農薬散布の範囲を広めに行うことがよいとされています。

対策②虫を使ったバンカー法

害虫 天敵 テントウムシ
Photo byMyriams-Fotos

コナカイガラムシやアブラムシの天敵は、ハチやテントウムシです。コナカイガラムシなどを食べてくれる昆虫を駆除に利用するバンカー法は「天然の駆除剤」とも呼ばれます。天敵とされる昆虫(害虫ではない)のいる植物をビニールハウスに配置して放飼する方法です。

対策③農薬による治療

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コナカイガラムシに限定した特効薬はないため、スミチオンやオルトランなどの薬剤を使います。成虫にはマシン油乳剤(97%剤)、柑橘系につくコナカイガラムシは石灰硫黄合剤などで駆除します。寄生されている植物によって薬剤の濃度を変えて使いましょう。越冬する頃の幼虫、卵に効果的です。越冬する12~2月は植物の休眠期にあたるので、濃いめの濃度でも樹木への影響は少ないとされています。

薬剤が効きにくい

硬い殻を作るカイガラムシの成虫はこすり落とすか、気門を塞ぐ効果を利用したマシン油乳剤がよいとされています。しかし、コナカイガラムシは硬い殻を作りません。それでも「ろう物質」の膜が表面にあるので、ほかの昆虫に使ったときのような薬剤効果は期待できませんが、散布の時期を選ぶと効果が望めます。

散布回数

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株の周囲に規定量を撒く顆粒状の農薬です

コナカイガラムシは通年で発生するので散布回数が多く、成虫が少なくなる時期でも幼虫対策で追加散布をする場合もあります。散布の適期は越冬した幼虫に対して6月中旬~下旬ごろに、年内に生まれた幼虫には8月中旬~下旬ごろ、さらに冬越し前の幼虫や卵に対して12月に散布します。6月、9月、12月は液体のものを直接散布し、3月ごろは固形の規定量の農薬を、植物の根元にまいておくと予防に効果的です。

冬の薬剤散布は必須

コナカイガラムシ 越冬 幼虫
左:ハナミズキの枝の樹皮にいる幼虫
右:左図の越冬中の生息している部位を拡大

(筆者が撮影)

一度カイガラムシが発生した場所は、翌年も発生しやすいです。冬越しする卵や幼虫を狙って薬剤を使い、翌年の発予防しましょう。

コナカイガラムシに農薬を散布するときの注意点はありますか?

農薬は全般的に取り扱いに注意が必要です。希釈の段階は薬剤が皮膚につかないよう手袋を着けましょう。散布するときは目に入らないよう眼鏡をかける、吸い込まないようにマスクを装着、皮膚の露出を少なくするなどの工夫をしておくと安全です。

コナカイガラムシに触るとからだに影響がでますか?

果物に寄生する種類もいるので収穫するときに触れることもあります。カイガラムシの仲間には食品の赤い色素の「コチニール」として用いられている種類もおり、体調に影響がある可能性はとても低いといえます。しかし、何らかのアレルギーのある人は念のため1~3時間は皮膚の変化や呼吸がしにくいなどの体調の変化がないか注意しておきましょう。