肥料の三要素はチッ素・リン酸・カリウムの3つです。肥料のパッケージにはN:P:Kの割合が数値で記載されています。植物にとって大切な栄養素として知られていますが、具体的にどのような役割をするのかをひとつずつ見ていきましょう。
チッソ(N)は植物全体の成長にも影響する、光合成に欠かせない栄養素のひとつです。葉が出て枝分かれして植物が大きくなるのに欠かせないため、葉肥(はごえ)とも呼ばれます。葉を観賞する観葉植物や多肉植物、葉物野菜にグリーンカーテン、毎年落葉する庭木など、全ての植物にとって欠かせない栄養素です。
リン酸(P)はタンパク質の合成や、遺伝情報を伝えるDNAやRNAに欠かせない栄養素のひとつです。花芽が出たり実をつけるのに欠かせないため、花肥(はなごえ)や実肥(みごえ)とも呼ばれます。花を咲かせる草花や庭木、野菜や果樹など多くの植物にとって大切な栄養素です。
カリウム(K)は植物全体に栄養を循環させる働きがあり、暑さや寒さなどへの抵抗力を高めるために欠かせない栄養素のひとつです。根の成長を促して植物全体の成長にも関わることから、根肥(ねごえ)とも呼ばれます。水分とともに栄養を行き渡らせる根の成長に欠かせない、全ての植物に必要不可欠な栄養素です。
N:P:Kの数値の違いは?
市販の肥料に記載されている数値の違いは、濃度です。8:8:8などのように数値が等しいものほど、汎用性が高くなります。また数値が大きいほど濃度が高くなります。化成肥料のなかでも数値が2桁以上のものは高度化成と呼ばれ、直接根が当たらないようにするなど使いかたには注意が必要です。
微量要素とはミネラル類のことで、人の生活に欠かせない元素です。微量要素の中でもマグネシウム・カルシウム・イオウは特に必要性が高く、中量要素とも呼ばれます。また鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・銅・モリブデン・塩素・ニッケルの8つは、必須微量要素と呼ばれ重要な役割を果たします。
マグネシウム(Mg)は植物が光合成を行う、葉緑素を作り出す成分のひとつです。酵素を活性化する働きやリン酸の吸収・油脂の合成などさまざまな働きがあります。苦土石灰の苦土とはマグネシウムのことです。マグネシウムとカルシウムは特に水に溶けやすく降雨などで流出しやすいため、定期的に補う必要があります。
カルシウム(Ca)は植物の細胞を守る細胞膜を丈夫にする働きや、細胞と細胞を結びつける役割があります。根の生育にも欠かせない成分で、植物の病害虫に対する抵抗力を高めることも知られています。カルシウムの補給には石灰肥料が有効で、骨肥や骨粉はリン酸が主体です。
イオウ(S)はチッ素とともにタンパク質を作り出すアミノ酸に欠かせない成分です。植物の体内で酸化・還元などの生理作用に関わるため、植物の成長に欠かせません。火山大国でもともと土壌に含まれているため、肥料としては不必要だといわれてきましたが、近年の研究で植物への作用が改めて注目されている成分です。
鉄(Fe)は葉緑素の形成に欠かせない成分です。植物の呼吸や代謝に関わる酵素の働きを助けます。花だんや菜園などの土壌にはもともと含まれていますが、鉢植えの植物の生育には不足しがちな微量要素です。
マンガン(Mn)はタンパク質を作り出す酵素や、呼吸をする酵素に含まれる成分です。ビタミン類の生成や光合成を助ける働きがあります。チッ素の代謝を助ける役割も担っています。
亜鉛(Zn)は植物の成長ホルモンに欠かせない成分です。でんぷんやタンパク質の合成など植物の成長を促す働きが知られています。土壌に含まれる量で十分ですが、不足すると植物そのものの成長が悪くなることがあります。
ホウ素(B)は植物の細胞壁を作る成分です。芽や根の形成、受粉や結実に関わります。特にホウ素の吸収率が高いのは、大根やキャベツなどのアブラナ科の植物です。ホウ素が不足するとカルシウムの吸収が悪くなります。
銅(Cu)は植物の呼吸や光合成、葉緑素の形成に欠かせない成分です。タンパク質や炭水化物を代謝など、酸化還元を促す役割があります。
塩素(Cl)は光合成を助けて、でんぷんや炭水化物の合成に関わる成分です。植物の病気や害虫に対する抵抗力を高める役割があります。
ニッケル(Ni)は尿素からアンモニアを分解・代謝する働きがあります。ニッケルが過剰になるとpHバランスが崩れて、用土の酸性化を引き起こします。
モリブデン(Mo)は植物にとって、ビタミン類の合成に欠かせない成分です。チッ素を固定する共生菌である根りゅう菌の触媒としての働きが注目されています。
人間の食事に置き換えると、肥料はメインのおかず、微量要素は小鉢や汁物のようなものです。たくさん必要となるのは肥料で、植え付けや開花・結実などエネルギーを必要とする場面で多く消費されます。微量要素は少量でも植物に欠かせない栄養素で、植物が丈夫に成長するのを助ける役割があります。
葉や茎の成長に欠かせないチッ素が不足すると、葉が黄色くなって枯れたり茎の伸びが悪くなったりします。特野菜や草花の下の方から葉が黄色く枯れてくるのは、チッ素欠乏症が一因です。チッ素肥料が多すぎると、葉ばかり茂って花芽が出ないことがあります。
花や実の成熟に欠かせないリン酸が不足すると、花芽の数が少なく実の成熟が遅れて収穫前に落下してしまいます。根や株全体の生育も悪くなるのがリン酸欠乏症です。一方、リンが過剰になると株が軟弱になって病害虫の被害を受けやすくなったり、亜鉛や鉄などの微量要素の吸収が悪くなったりします。
根の成長に欠かせないカリウムが不足すると、葉の色が悪くなり縁から茶色く枯れてきます。根が成長できないために、根腐れを起こしやすくなります。過剰になった場合、症状は出ないもののカルシウムやマグネシウムなどの微量要素の吸収が悪くなるのが特徴です。
微量要素であるミネラル類が不足すると、葉が黄色くなったり花の発色が悪くなることが知られています。暑さや寒さ・病気や害虫への抵抗力をつけることが、肥料だけでは補えない微量要素の役割です。ほかにも成長に支障が出て奇形したり根が発育不良になったり、バランスが崩れて栄養の吸収が悪くなったりすることもあります。
欠乏症にならないための注意するポイントは?
植物にあった肥料選びと、与えるタイミングが重要なポイントです。植物が弱ってから肥料を与えるのは、間違った使いかたです。花芽が出始める春先や、花後・結実後など植物によって肥料を必要とする時期はそれぞれ違います。三要素を含んだ肥料と微量要素を含んだ活力液などを、上手に組み合わせて欠乏症を防ぎましょう。栄養分の吸収をよくするには、用土のpHを整えることも大切ですね。
ソフトシリカ ミリオンA 500g
参考価格: 698円
土壌改良や中和剤・ハイドロカルチャーの根腐れ防止剤として知られているミリオンAは、微量要素を効率よく補えるアイテムです。珪酸塩白土という天然の鉱物で、珪酸・アルミニウム・カルシウム・マグネシウム・鉄・ナトリウム・カリウムが含まれています。少量を追肥と同じタイミングで与えると、観葉植物の色つやがよくなります。
サイズ | 100g、500g、3kg、20kg(大粒) |
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適用 | 全ての植物に |
日清ガーデンメイト ペンタガーデン 450ml バラ用
参考価格: 812円
ペンタガーデンのバラの液体肥料はNPKが0.8:0.9:1.1とバランスよく、微量要素のマグネシウム・マンガン・ホウ素・鉄・亜鉛・銅・モリブデンも同時に補える液体肥料です。独自成分ALA配合で、光合成を促進する働きが注目されています。使い方は1Lの水にキャップ2杯を入れて、100倍液を作り水やり後にまわしかけます。日当たりがよくない狭い庭やベランダなどの、バラや草花におすすめです。
容量 | 450mL |
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適用 | バラ、草花、花木 |
ハイポネックス リキダス 800ml
参考価格: 665円
ハイポネックスのリキダスは、カルシウム・鉄・銅・亜鉛・モリブデンなどの微量要素をバランスよく含んだ活力液です。アミノ酸やフルボ酸などを独自に配合して、野菜や草花など植物への吸収がよく肥料との併用がおすすめです。200倍液を葉裏にスプレーしたり、多肉植物には1000倍液で水やりしたり、使い方が自在で夏バテが気になる鉢植えの植物のミネラル補給にもおすすめです。
サイズ | 160mL、450mL、800mL |
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適用 | 全ての植物に |
朝日工業 粒状有機石灰 700g
参考価格: 328円
有機石灰は用土のpHを中性に整える土壌改良材です。畑や花だんのカルシウム肥料としても効果的で、微量要素も含まれています。ほかの石灰肥料と違って熱を発することがないため、土に混ぜ込んですぐに植え付けたり、追肥のように株の周囲に漉き込んだりもできます。カルシウムは水に溶けて流れ安いため、春と秋など定期的にプラスするのがおすすめの使い方です。
容量 | 700g |
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適用 | 中性〜中性に近い弱酸性を好む植物に |
平和 粒状苦土石灰 1kg
参考価格: 1,563円
苦土石灰は用土のpHを中和する土壌改良材です。カルシウムとマグネシウムを補う肥料としても効果があります。土に混ぜ込むと熱を発するため、畑や花だんには混ぜ込んでから1週間〜10日間ほど寝かせるのがコツです。ハーブや球根植物をはじめ、多くの植物がpH5.5〜6.5の中性に近い弱酸性の用土でよく育ちます。定期的に追加してきれいな花と野菜を育てましょう。
サイズ | 1kg、5kg、10kg |
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適用 | 中性〜中性に近い弱酸性を好む植物に |
肥料の三要素だけでは補いきれない、大切な役割を持っているのが微量要素の成分です。活力液にはミネラル類を含むものが多く、肥料と同時に与えることで吸収を高める効果が期待できます。上手に活用して病気や害虫・暑さや寒さに負けない、丈夫な植物を育てていきましょう。
出典:写真AC