追肥(ついひ)とは、野菜や植物を育てる過程で与える肥料のことです。「おいごえ」とも読みます。追肥は鉢植えや花壇の観賞用植物や、畑や家庭菜園の野菜や果物など、種類を問わず植物を育てるうえで重要な要素です。植物の種類にもよりますが、品質のよいものに育て上げるために欠かせない、必要性の高い園芸アイテムとされています。
肥料が田畑や花壇、家庭菜園などで必要とされる理由は、植物が育つための養分が乏しいからです。山野や森林などの自然環境下にある土は、枯れ葉や落ち葉、動植物や虫の死骸または排泄物などが土に還ることによって常に養分が補充されます。しかし、田畑や家庭菜園のような人工的に作られた場所には、このような仕組みがありません。そのため、肥料で養分を補充する必要性が生じるのです。
肥料は大別すると「有機肥料」と「化学肥料」の2種類があります。有機肥料は動物や植物由来の有機物から作る肥料です。有機物は微生物のエサになるため、土壌改良効果が望めるという利点もあります。一方、成分量がわかりにくく効き目が遅いのが難点です。化学肥料は無機物を化学合成して作る肥料です。成分量が明確で即効性があるという利点がありますが、土壌改良効果はありません。
化学肥料のなかには「化成肥料」と呼ばれる種類があります。化学肥料は「単肥(たんぴ)」と「複合肥料」にわかれます。肥料の三要素「窒素・リン酸・カリ」のうち、1種類のみを含むのが単肥、2種類以上を含むのが複合肥料です。化成肥料は複合肥料の一種にあたります。化学肥料の原料や単肥を混ぜあわせ、化学的処理を加えて製造する複合肥料が化成肥料です。
追肥も元肥(もとごえ)も肥料のやり方を意味する名称です。肥料はやり方や撒き方、与えるタイミングなどで呼び方が違います。お礼肥、寒肥、置き肥などさまざまな呼び方がありますが、追肥と元肥の2種類で語られることが多いです。追肥と元肥のおもな違いは、下記の2つがあります。
追肥と元肥は与えるタイミングが違います。元肥は植物を植え付ける前に、土壌に混ぜ込む肥料です。元肥の名前も、「元となる肥料」という意味でつけられました。「基肥(きひ)」という別名がありますが「基盤となる肥料」と、同じような意味でつけられたものです。追肥は植物の生育期間中に施します。追肥という名前は「追加で与える肥料」という意味でつけられました。
元肥はじっくりと長く効く緩効性肥料が向いています。理由は土の栄養状態を改善して根の初期成長を促し、植物の生育を滞らせない目的があるためです。土壌改良効果という利点がある有機肥料もよいでしょう。一方、追肥は植物を育てるあいだに、不足しがちな養分を補う目的で施す肥料です。即効性で早く効く液体肥料や化成肥料が向いています。
追肥は与えるタイミングによって、種類がわけられます。追肥は「追加で与える肥料」という意味のとおり、植物に不足している養分を補う役目を持つ肥料です。植物は生育状態で必要性のある養分や効果が異なります。肥料の種類とその利点を踏まえ、その時期に応じたものを選びましょう。
寒肥とは、12月~2月の寒い時期に施す肥料です。この時期の植物のほとんどは休眠期に入っており、生育が鈍く肥料の吸収量もほぼありません。休眠期が終わり、植物が目覚め始めたころに養分をたっぷりと補充できるように、土の栄養状態をよくするのが目的です。時間をかけて養分を吸収させる必要性があるため、緩効性有機質肥料が適しています。
芽出し肥は、新芽が生えだす2月下旬~3月上旬に与える追肥です。養分をしっかり吸収し、充実した芽を出させることは、植物を育てるために欠かせない要素といえます。肥料は窒素分を多めに含む速効性肥料がおすすめです。理由は窒素分が茎や葉の成長を促進する養分であること、新芽の成長は早いため、効果が早く表れる即効性肥料が好ましいことがあげられます。
礼肥は「お礼肥」とも呼ばれる追肥です。開花後の植物や、果実を収穫した後の野菜や果樹に施します。きれいな花やおいしい実をつけてくれたことへのお礼という意味で、「礼肥(お礼肥)」と名づけられました。植物は花や果実をつける際に大きなエネルギーを使うため、失った体力を早く回復させるのが礼肥の必要な理由です。弱った株を早く回復させる目的から、即効性化成肥料が使用されます。
追肥のやり方は鉢植え・プランター栽培と、畑や家庭菜園などの地植え栽培とで異なってきます。理由は栽培方法の違いから、肥料の量や効果が違ってくるからです。特に鉢植え・プランターは土の量が限られているうえに、水やりで肥料成分も鉢底から外へ流れ出していきます。植物をすこやかに育てるためには、栽培方法にあわせ、必要性の高い養分を適切に補うことが重要です。
鉢植え・プランター栽培の追肥のおもなやり方は「置き肥」と「液肥」です。置き肥は鉢植えの観葉植物やプランター栽培の草花、液肥は鉢植えや花壇の草花によく用いられています。置き肥も液肥も、有機質と無機質の2つのタイプがあり、それぞれの特徴と利点を把握し、株や土の状態によって使いわける必要性があります。
置き肥の意味は「株元に置く追肥」です。置き肥は、根に直接当たらないように株元から少し離れた位置に置きます。長時間ゆっくりと効かせるのが目的のため、固形の緩効性肥料の使用が一般的です。水やりによって少しずつ養分が土に溶け出す仕組みで、効果が長続きします。そのぶん追肥を施す回数が減らせるのも置き肥の利点です。
液肥(液体肥料)も追肥としてよく用いられている肥料です。液体肥料は規定量を水で希釈し、水やりのかわりに施します。液肥を与える頻度や希釈の倍率は、取扱説明書に従いましょう。液肥は即効性が高くやり方も簡単なところが利点です。鉢植えのほか、花壇の草花にもよく用いられています。
畑や花壇、家庭菜園などの地植え栽培でも、植物をすこやかに育てるために追肥は必要性が高いです。特に果実の収穫が必要な植物はエネルギーを多く消費するため、追肥による養分補給の必要性が通常の植物よりも大きいでしょう。地植え栽培の追肥のやり方は「穴肥」「溝施肥」です。どちらの方法も、根が肥料に直接触れて生育障害を起こさないように、株元から少し離した位置に施します。
穴肥(あなごえ)は文字どおり、穴を掘って肥料を施す方法です。株元から20cm~30cmほど離れた位置に穴を掘り、肥料を入れて埋め戻します。徐々に土に肥料成分を染みこませるため、長時間効果が持続するのが大きな特徴であり、利点です。果実を収穫する果菜類、生育期間が長い野菜の栽培に向いています。
溝施肥(みぞせひ)は畑向きの追肥です。やり方は株から20cn~30cmほど離れたところに溝を掘って肥料を入れ、埋め戻します。ナスやピーマンのように、育てる期間が長く根を深く張る果菜類や、キャベツやブロッコリーのように、株間を空けて栽培する葉菜類向けの施肥方法です。肥料の種類は長くゆっくりと効き、土壌改良効果も期待できる緩効性有機肥料がよいでしょう。
微粉ハイポネックス 500g
参考価格: 973円
「微粉ハイポネックス」は、株式会社ハイポネックスジャパンが販売する粉末タイプの即効性肥料です。栄養バランスと汎用性が高く、草花、鉢花、観葉植物のほか、多肉植物や水耕栽培にも使えます。無臭のため、室内栽培でも問題ありません。特に日照不足になりやすい梅雨時や、夏バテしやすい夏後の回復におすすめです。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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マイガーデン花・野菜用 700g
参考価格: 521円
「マイガーデン花・野菜用」は、住友化学園芸が販売している緩効性粒状肥料です。窒素・リン酸・カリなどの主要肥料成分のほか、土に活力を与えて栄養分の吸収率を高める働きを持つ腐植酸が配合されています。さらに土壌の温度変化や植物の生育状態にあわせて肥料成分の溶け出す量をコントロールする特殊コーティング技術により、最適なタイミングで効果が発揮されます。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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グリーンそだちEX IBのチカラ 500g
参考価格: 391円
「IBのチカラグリーンそだちEX」は、土・肥料メーカーの花ごころが販売している緩効性化成肥料です。IBとは「イソブチルアルデヒド縮合尿素(IBDU)」を意味しています。IBDUは世界中で効果が認められた肥料成分です。非常にゆっくりと水に溶け、肥料成分を無駄なく、優しく植物の根に吸収させる働きを持ちます。無臭なので室内栽培にもおすすめです。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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ハイポネックス原液 800ml
参考価格: 657円
「ハイポネックス原液」は、ハイポネックスジャパンが販売する液体肥料です。植物の成長に必要な15種類の栄養素をバランスよく配合し、効き目も早い特徴があります。汎用性が高く、草花、野菜、観葉植物、鉢花、花木、多肉植物、山野草と幅広く利用できる液体肥料です。水で薄めて使いますが、使用する植物の種類で希釈倍率が異なります。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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ベジフル液肥 480ml
参考価格: 546円
「ベジフル液肥」は、住友化学園芸が販売している野菜・果物特化型の液体肥料です。液体肥料は化成肥料が多いですが、この商品は植物由来の天然有機質を配合し、土壌改良効果を持たせています。このため植物の根の張りがよくなって栄養分の吸収率が上昇する結果、良質の野菜や果物が育つのです。液肥なので使いやすく、有機質特有のにおいも少ないため手軽に使えます。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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近年は環境保護や食品の安全性の観点から、肥料や農薬を使わない「自然栽培」が注目されています。自然栽培とは、自然農法とも呼ばれる農業方法です。肥料や農薬に頼らず、植物と土の力を最大限引き出すことで作物を育てます。やり方は作物の種類や実行する人によって違いますが、土作りを重視し、国が安全と定めている物でも、農薬、化学肥料、有機肥料は一切使わない点は共通しています。
自然栽培と並んで注目されている農法が有機栽培です。有機栽培の定義は、農薬、化学肥料、遺伝子組み換え技術を用いずに作物を育てる農法とされています。自然栽培と似ていますが、すべての農薬と肥料を使用禁止にしている自然栽培に対して、有機栽培が禁止しているのは、化学合成された農薬や肥料です。自然栽培と違い、すべての肥料や農薬を禁止していません。
出典:写真AC