肥料とは?
化学肥料と化成肥料の指し示す意味がそれぞれ異なるんだよ。順を追って説明するね。
まず肥料とは何かを説明します。肥料は窒素(N)、リン(P)、カリ(K)が三大成分です。窒素は葉や根の健康な成長を促し(葉肥え)、リンは花や実の付きを良くし(実肥え)、カリは根の発育と張りを助ける(根肥え)ことが代表的な効能です。
植物に栄養を与えるものが肥料だね。堆肥は肥料と間違えやすいけど、土作りに使われる土壌改良剤であって肥料とは異なるよ。
肥料の使い方は土作りと栄養付与が目的
肥料の使い方は、
①植物を植える数日前から数週間前に土中に漉き込み、良質な土作りのために使う
②植えた植物を元気に育てるための栄養として、規定量を使う
という2つが主な使い方になります。化学肥料も化成肥料も同様の目的で使われます。
化成肥料と化学肥料のうち、化学肥料とは何なのか説明します。
化学肥料とは?
化学肥料はその名前から推測できる通り、原料を化学的なプロセスで作った植物用の栄養のことです。一般的に化学肥料(=イコール)無機(質)肥料と呼ばれることもありますが、有機質原料を含む化学肥料もあります。
化学肥料の種類
化学肥料の代表例にはアンモニアや尿素、熔リン酸、過リン酸石灰、硫酸カリなどがあります。土中の微生物によりゆっくり分解され、植物が体内に取り込める状態になる有機肥料とは異なり、一般的に即効性があるのが特徴です。
化学肥料の種類①アンモニア肥料
化学肥料の一例として、例えばアンモニアがあります。アンモニアは、約500℃の温度と200~300気圧の高圧力下で、触媒(化学反応を促進させる物質)を用いて空気中の窒素や酸素と、水に含まれる水素を合成して作られたもので、土作りや、植物に窒素分を補給する目的で使われます。
アンモニア肥料を開発したのはドイツの化学者であるハーバー博士とボッシュ博士。当時は「空気から食糧を作る」という触れ込みだったんだって。
化学肥料の種類②尿素
尿素は、アンモニアの製造プロセスで一貫生産されます。化学プラントで製造されたアンモニアと、副生する二酸化炭素を原料とし、互いを反応させることにより作られる有機肥料です。
化学肥料の種類③熔リン酸肥料
熔リン酸は、リン鉱石(リンと石灰)と、けい酸苦土含有鉱さいを原料とし、1,400℃の高温でドロドロに溶かしたうえ、急冷して作った肥料です。主成分はリン酸と苦土(マグネシウム)ですが、そのほか微量な成分を含んでいます。ゆっくりと効く緩効性で、リンの吸収を助ける働きがあります。
では次に化成肥料について説明します。
化成肥料とは?
化成肥料は化学的な方法を使い、複数の原料を合成して作った肥料です。化学肥料はほぼ単一成分の「単肥」であるのに対し、化成肥料は複数の肥料成分が使いやすいように合成されていて、効率的に施肥や土作りができます。化学肥料同士の化成肥料、または化学肥料と有機肥料の化成肥料もあります。
化成肥料に対して、化学的な方法を用いず、単に混ぜ合わせただけの肥料を「配合肥料」と呼ぶよ。
化成肥料の種類
化成肥料には、原料濃度が高い「高度化成肥料」と呼ばれるものと、原料濃度が低い「普通化成肥料」と呼ばれるものの2種類があります。どちらも園芸店などで購入することが可能で、用途によって使い方が分けられます。
化成肥料の種類①高度化成肥料
高度化成肥料は、窒素(N)・リン(P)・カリ(K)の三大成分の中のうち2つ以上の成分が含まれており、かつその割合が30%以上である肥料のことを言います。NPKの割合が14-14-14と書かれているものは、例えば20kg中に42%のNPKが含まれています。
高度化成肥料にはたくさんの肥料分が含まれているので、施肥が省力化できます。大規模栽培でよく使われます。
化成肥料の種類②普通化成肥料
普通化成肥料は、窒素(N)・リン(P)・カリ(K)の中のうち2成分以上が含有されているのは高度化成肥料と同じですが、その割合が15%以上、30%未満である肥料のことを言います。8-8-8と書かれている場合、NPKの割合が、例えば20kg中に24%以上含まれています。
化学肥料と化成肥料の位置づけ
なんだか頭がこんがらがって来ちゃった。結局、化学肥料と化成肥料って何が違うんだっけ?
じゃあ、いったん表を使って整理してみようか。
配合肥料 | 化成肥料 | |
---|---|---|
化学肥料(や、有機肥料)を単純に混ぜ合わせた肥料 |
高度化成肥料 | 普通化成肥料 |
化学的な工程を経て製造した、NPKのいずれか2成分を含み、NPKの合計が30%以上の肥料 | 化学的な工程を経て製造した、NPKのいずれか2成分を含み、NPKの合計が15%以上30%未満の肥料 |
窒素(N)質肥料の例 | リン酸(P)質肥料の例 | カリ質(K)肥料の例 |
---|---|---|
アンモニア肥料 (有機、化学肥料) |
骨粉 (有機、特殊肥料) |
草木灰 (有機、特殊肥料) |
尿素 (有機、化学肥料) |
過リン酸石灰 (無機、化学肥料) |
塩化カリ (無機、化学肥料) |
硫酸アンモニア (有機、化学肥料) |
重過リン酸石灰 (無機、化学肥料) |
硫酸カリ (無機、化学肥料) |
珪酸ソーダ (無機、化学肥料) |
熔成燐肥 (無機、化学肥料) |
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珪酸アンモニウム (無機、化学肥料) |
骨炭粉末 (有機、特殊肥料) |
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石灰窒素 (無機、化学肥料) |
リン酸アンモニウム (無機、化学肥料) |
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魚かす (有機肥料) |
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コーヒーかす (有機肥料) |
まとめると、「化学肥料」は化学合成で作られた単肥を指し、「化成肥料」は化学的に複数の原料を合成した肥料を指します。肥料の分類については、「肥料取締法」で決められています。
いくつかの化学肥料や有機肥料を化学的に合成したのが化成肥料ね!
化学肥料と化成肥料の使い方
では化学肥料と化成肥料はどのように使えば効果的なのでしょうか。肥料の役割や特徴に応じてチェックポイントを押さえて使い分け、植物の種類や状況に適した施肥や土作りができるようにしましょう。
使い方①化学肥料は即効性と目的の効能で使い分ける
化学肥料の使い方
- 化学肥料は即効性が期待できるので、元肥よりも追肥に適しています。
- 肥料の三大要素のうち植物に最も大事なのは窒素成分です。
- ただし葉の緑色の色素異常(窒素欠乏)や変色(カリ欠乏)、花や実がならない(リン欠乏)など、状況に応じて適切な肥料を選択することが大事です。
使い方②高度化成肥料は省力化/普通化成肥料は汎用性が高い
高度化成肥料と普通化成肥料の使い方
- 化成肥料は即効性の化学肥料と、緩効性の有機肥料が混ざったものも多くあるので、元肥にも追肥にも使用できます。
- 高度化成肥料は栄養分が多く、少量を大規模な面積に使用できるので省力化につながります。
- 家庭菜園規模に高度化成肥料を使う場合は、やりすぎやバランスに特に注意しましょう。
- 普通化成肥料は窒素・リン・カリをバランス良く含んでいるので幅広く使用できます。
使い方③おまけ・堆肥の使い方
おまけ・堆肥の使い方
- 堆肥とは、発酵して成熟した有機成分のことで、栄養分は肥料ほどには多く含まれません。
- 堆肥は微生物を豊富に含んでいるので、ふかふかの良い土作りに役立ちます。
まとめ
化学肥料は即効性や、必要な栄養分のピンポイントな供給が可能というメリットがあります。化成肥料は即効性と緩効性のバランス、また複数の栄養分の量やバランスに優れています。肥料にはいろいろな種類がありますが、特徴を押さえてより効果的な施肥ができるようにしたいですね。
化学肥料と化成肥料。どちらも似た言葉に聞こえるけど、同じものではないの?