培養土とは、野菜や園芸植物の生育を助けるために作成された園芸用土のことです。用土とは、ガーデニング、家庭菜園、野菜・果物畑など特定の用途で使う土を指します。用土には用途に応じた種類があり、種類によって性質や栄養成分に違いがあるのが大きな特徴です。用途と特徴から、用土の種類は「基本用土」と「補助用土」の2つに大別されています。
基本用土とは、野菜や園芸植物を育てる土作りの下地となる用土を指します。培養土を作る際の基本用土の割合は、用途によって違いますが、半分以上を使うことが多いです。基本用土の種類は複数あり、土作りの際には1種類を用いる場合もあれば、複数の種類を配合する場合もあります。
基本用土の種類 | 基本用土の特徴 |
赤玉土 | ・通気性、排水性、保水性、保肥性が高い ・小粒・中粒・大粒と種類が多く用途で選べる |
鹿沼土 | ・黄色い軽石質で、通気性と排水性が高い ・酸性土壌で育つ植物向き |
日向土 | ・弱酸性、排水性と保肥性が高い ・繰り返し使用できる |
黒土 | ・豊富な有機質、特に保水性と保肥性が高い ・通気性と排水性がやや低い |
軽石 | ・通気性と排水性が特に高い ・鉢底石、山野草やラン栽培に利用される |
水苔 | ・保水性と通気性が特に高い ・鉢植えや盆栽の植え込み材に利用される |
天然砂 | ・排水性が高い ・水はけのよい土壌を好む植物向き |
補助用土は、基本用土に不足している栄養成分や性質を補助し、育てる野菜や園芸植物にとって理想的な培養土を作り上げる役割を担います。補助用土の種類は有機質と人工物の2種です。有機質の補助用土は、土壌改良効果に加えて、土を肥やしてふかふかにする効果もついてきます。
補助用土の種類 | 補助用土の特徴 |
腐葉土 | ・水はけのよい土に改良する ・痩せた土を再生させる |
堆肥 | ・土中の微生物を活発化 ・通気性や排水性をよくする |
パーライト | ・多孔質で水よりも軽い ・通気性と排水性が高い |
バーミキュライト | ・通気性と保水性に優れる ・無菌なので挿し木用用土や水耕栽培に使う |
ピートモス | ・強酸性、無菌で保水性が高い ・室内園芸に利用されることが多い |
培養土は種類によって性質や栄養成分が違うため、育てたい野菜や園芸植物にあった物を選んで使用します。基本的な使い方は、花壇や畑、鉢・プランターにそのまま使うだけです。特別な入れ方や処理など、面倒な作業は必要ありません。しかし、野菜や園芸植物をすこやかに栽培していくには、培養土だけでは足りません。ほかにも必要な資材があります。
野菜や園芸植物が育っていくと同時に、培養土の栄養成分が失われ、土も痩せていきます。硬くなって水を吸わないなど、土の質も劣化していくでしょう。追肥や土壌改良剤など、対策を講じる必要があります。また、野菜や園芸植物の栽培には、病気や害虫がつきものです。農薬散布による予防・駆除も組み込みます。追肥の入れ方、農薬の使い方などの細かい作業は、用途によって異なるため注意しましょう。
培養土の選び方は、基本的には栽培したい野菜や園芸植物の性質に準じます。植物は種類によって「根が水を吸わないので、水はけがよい土壌が向いている」「栄養成分たっぷりな土を好む」など、好ましい土壌の状態が異なるからです。また、野菜畑、家庭菜園、鉢植え、地域の気候など、栽培する場所や環境で選ぶ場合もあります。用途をしっかりと決めてから、培養土を選びましょう。
培養土には市販品と、自分で基本用土と補助用土を配合して作る自作品の2種類があります。市販品は育てたい植物にあわせた物が、さまざまなメーカーから販売されています。購入してすぐに使えるのが市販品のメリットです。園芸初心者や簡単にすませたい方は、市販品がよいでしょう。
自作品のメリットは、自分で土の配合や量をコントロールできることです。手間はかかりますが、栄養成分や有機質の割合、全体的な土の量を欲しいぶんだけ作れます。土の質にこだわりたい方や、畑や広い庭など大量の用土が必要な方の場合は、自作品がおすすめです。
市販されている野菜向けの培養土には、野菜の健全な生育に必要な栄養成分や有機質、肥料成分が含まれています。味のよい果実をたくさん実らせるためには、栄養となる肥料が欠かせないからです。畑など大量の土が必要な場合は、培養土を自作するとよいでしょう。追肥は適宜、用法・用量を守って与えます。
花が美しい園芸植物には、通気性・排水性・保水性をバランスよく、高いレベルで備えた培養土がおすすめです。寄せ植えにする場合は、株同士の密度が高くなって蒸れやすくなるため、水はけのよい用土がよいでしょう。また、花をつける植物はエネルギーを多く使ううえに、害虫がつきやすい種類が多いです。追肥を適宜施し、農薬散布で病気や害虫を駆除しましょう。
観葉植物には、においが少なく有機質も控えめな培養土がおすすめです。観葉植物は室内で栽培することが多いため、においがあって有機質が多い培養土を使っていると、カビや害虫が発生しやすくなってしまいます。追肥として与える肥料も、緩効性化成肥料がおすすめです。観葉植物は専用の土と肥料が市販されています。手軽にすませたいなら、市販品がよいでしょう。
グリーンインテリアとして人気が高い多肉植物は、通気性と排水性を高めた培養土が向いています。多肉植物はほかの植物と比べると、乾燥に強く過湿が苦手です。このため、水の乾きが早い土壌が向いています。専用の培養土が市販されているほどです。自分で作る場合は、赤玉土に通気性と排水性に優れる腐葉土を混ぜた用土がよいでしょう。
バラやランのように豪華な大輪花を咲かせる植物は、専用の培養土が多数のメーカーから販売されています。より美しく豪華な花を咲かせるために、厳選された成分が配合されている培養土が多いです。種類によっては、元肥となる肥料が配合されている市販品もあります。比較的高価なものが多いですが、肥料の入れ方や成分配合などの手間がかからず、そのまま使えて便利です。
鉢植えやプランターに向いているのは、軽量の培養土です。鉢植えやプランターは置き場所を移動させたり、ハンギングのように吊り下げたりすることがあるため、動かすときに負担が少ない軽量の培養土が適しています。培養土の入れ方は、鉢の八分目まで入れるだけと簡単です。軽量の用土は排水性が高い特徴を持つものが多く、水はけのよい土壌を好む植物にも向いています。
室内栽培に向いている培養土は、加熱殺菌処理が施されているものです。室内栽培は湿気がこもりやすいため、花壇や畑など屋外での栽培に比べるとカビや雑菌が発生しやすいという弱点があります。加熱殺菌処理されると無菌状態になり、においや雑菌の発生を抑えられるというわけです。さらに有機肥料成分を含まないものを選べば、有機物をエサとする虫の発生も抑えられます。
挿し木や種まき用の培養土は、粒子が細かいものがおすすめです。粒子が大きいものは保水性が弱いため、発芽した種や挿し木が根を伸ばすのに必要な水分が不足してしまいます。根が水を吸わないことも、種まきや挿し木が失敗する原因です。病気の発生を防ぐため、ピートモスやバーミキュライトのような無菌の用土を使うと、さらに成功率が上がります。
花と野菜の培養土 W効果 40L
参考価格: 2,017円
「花と野菜の培養土W効果」は、肥料メーカーの自然応用化学が販売している培養土です。良質な熟成堆肥と天然の有機リン酸肥料を豊富に含み、花つきと実つきをよくします。元肥は特殊コーティング加工で、ゆっくりと効くのに根を傷めません。野菜、草花、花木と用途の幅が広い万能型です。鉢への入れ方は8分目ほど、花壇への入れ方は、3割~5割を花壇の土に混ぜ込みます。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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ゴールデン粒状培養土 観葉植物用 5L
参考価格: 498円
「ゴールデン粒状培養土観葉植物用」は、アイリスオーヤマが販売している観葉植物用培養土です。ゴールデン粒状培養土は保水性、排水性に富んだ団粒構造が特徴で、花と野菜用もあります。観葉植物用は通気性をよくするため、花と野菜用よりも粒が大きい粒状培養土を採用し、軽石とパーライトを加えました。加熱処理されているので雑草や雑菌も発生しにくく、室内栽培も安心です。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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プロトリーフ 京成バラ園の土 12L
参考価格: 1,256円
「京成バラ園の土」は園芸用土メーカーのプロトリーフが、日本最大級のバラナーセリー京成バラ園と共同開発したバラ専用培養土です。「生育初期に根をしっかり育てる」という育成方法に基づき、バラの初期育成を重視した配合が特徴です。ハイブリッドティー、フロリバンダ、つるバラ、ミニバラ、オールドローズと、バラの種類に幅広く対応している点も魅力的といえます。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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培養土を自作する場合、まずは育てたい植物の性質を知ることです。肥沃な土壌を好むもの、水を吸わない乾き気味の土壌を好むものなど、種類によって好む土壌が違います。植物の性質を把握したら、それにあった基本用土と補助用土を配合していきましょう。
基本用土と補助用土の配合には「黄金比」と呼ばれる組み合わせがあります。赤玉土7割:腐葉土3割です。シンプルな配合ですが通気性、排水性、保水性、保肥性のバランスが取れており、汎用性が高いので、初心者でも安心して使えます。慣れてきたら植物の性質だけではなく、鉢植えや花壇、畑や家庭菜園などの環境を把握して、用途にあう配合にチャレンジしてみましょう。
培養土と腐葉土は園芸用土の一種であるため、混同されやすいですが、使い方がまったく違います。培養土は各種植物、種まきや挿し木など、さまざまな用途にあわせて作られた土です。特別な入れ方や処理など面倒な作業をせず、即座に利用できます。一方、腐葉土は基本用土や、庭や畑の土に混ぜることで、土壌改良効果を発揮する補助用土です。腐葉土単体では、植物は育ちません。
枯れ葉や枝を発酵させて作る腐葉土は、植物由来の肥料といえます。一般的な肥料との違いは、腐葉土に含まれている肥料成分が少なく、植物の生育に必要な栄養を補えるほどの力はないことです。しかし、腐葉土には肥料とは違う役割があります。土の通気性や排水性や保肥性などを高める土壌改良効果です。保肥性が高まることで、施す肥料の効果も高まるというメリットもあります。
出典:写真AC