豊後梅の品種と特徴
豊後梅(ブンゴウメ)はその昔、豊後と呼ばれた大分県に生を発する豊後という品種を親に持つ梅の木で、杏との交配種です。そのため、梅の特徴を持つ木と杏の特徴を持つ木があり、それぞれ違いが見られます。
豊後梅の特徴
豊後梅の特徴は枝や葉の形と、花に見られます。さらに豊後梅には「豊後系」と「杏系」という品種分類があり、この2つにも異なる特徴がみられます。共通する特徴としては花が大輪であることや、薄紅色から濃い紅色まで八重と一重があり、3月中旬から4月初旬ごろ開花する遅咲きであることです。
豊後系の品種
豊後系に見られる特徴としては枝が太く、樹勢も強いことです。丸みをおびた葉は大きく、表面には細かな毛が生えています。豊後系の品種には
- 楊貴妃
- 武蔵野
- 八重揚羽
- 滄瞑の月(そうめいのつき)
- 巻立山
- 桃園
杏系の品種
豊後梅(ブンゴウメ)の杏系の品種は豊後系よりも枝が細く、樹勢もそれほど強くないのが特徴です。小さめの葉の表面に毛も生えていません。杏系の品種には
- 一の谷
- 緋の袴
- きねん
- 江南所無
豊後梅の育て方
ブンゴウメと一言でいっても、その品種は多様です。豊後系と杏系で10品種あり、この豊後梅に限らず梅という植物は育て方に経験をそれほど必要としません。ですから、庭木として鉢植えでと育ててみてください。梅の実を収穫すれば梅干しや梅酒など用途も広く、茂った枝は夏の日差しを遮ってくれます。
豊後梅の育て方(土の選び方)
豊後梅は他の梅と同様に、それほど土質を選びません。ただし、水はけがよく、その上である程度の水もちもあったほうが元気に育ちます。基本として腐葉土・赤玉・川砂を用いて植えるようにしましょう。庭植えにする場合も水はけが悪いようであれば川砂と腐葉土を多めに加えます。
鉢植えの場合
豊後梅を鉢植えに植える育て方は、赤玉を7割に腐葉土を3割で植えてください。鉢の大きさは高さが50cmほどで、直径が30cm以上のものを用意します。それでも根詰まりを起こすので、2年か3年でひと回り大きな鉢に植え替えましょう。
豊後梅の育て方(苗植えの時期)
豊後梅は耐寒性が強く、冬の寒さにも耐えることができます。そのため日本の寒冷地でも栽培が可能で、東北地方などでよく見られる品種です。植える時期として最適なのは11月から2月まで、苗の根鉢を崩さないようにひと回り大きく掘った穴にそっと下ろしましょう。このとき植え穴には肥料は入れず、生育状態を見ながらぼかしなどの有機肥料を与えてください。
豊後梅の育て方で注意すること
豊後梅(ブンゴウメ)は自家不和合性という特性を持つので、他の種類の梅での受粉が必要となります。また、雄性不稔性(花粉を造らない特性)のため、他の梅の受粉樹ともなりません。豊後梅の実を収穫するには、開花時期を同じくする梅を選びます。また、枝が茂りすぎると病気や害虫が発生するので、混んだ枝を間引くのがよい育て方です。
ブンゴウメと相性が良い梅の品種
ブンゴウメは自家和合性が低いながらあります。ですが、確実に梅の実を収穫したい場合は、受粉用に違う豊後梅とは違う品種の梅の木を植えましょう。相性のよい品種には花香実や鶯宿(おうしゅく)、紅さし、小粒南高などが向いています。これらの品種の梅は開花時期が豊後梅と同じ3月ごろなので、受粉樹として最適です。
庭に植える場合
豊後梅と相性のよい品種を庭に植えるならば風通しや日あたりなどを考えて、4m程度は離してください。梅の木が2本あれば収穫量も増えるので、梅干しや梅ジャムなど用途も増えて楽しめます。
ブンゴウメにつく害虫と病気
豊後梅は丈夫な樹木ではありますが、病気にならないわけではありません。育て方で注意すべきなのがプラムポックスウィルスという病気です。近年マスコミでも取り上げられ、一度は耳にされたのではないでしょうか。このウィルスは人体に害はありませんが、梅の葉や実に斑紋の症状が現れ、収穫した実に商品価値がなくなるため農家に打撃を与えました。2009年に発生し予防や治療方法がないため、感染した場合は伐採して焼却処分するほかありません。このほか、黒星病には注意しましょう。
ブンゴウメに付く害虫
豊後梅の枝先にアブラムシは付きます。アブラムシは樹液を吸い取るぐらいと放って置くと、花つきが悪くなったり、すす病の原因となります。アブラムシを発見したらすぐに手で取り除くか、大量発生している場合は水で薄めた牛乳を噴射しましょう。牛乳のカルシウムでアムラムシの気門が塞がれ、退治することができます。牛乳がなければ片栗粉でも代用できます。(もちろん、化学農薬でも対策をすることはできます。)
豊後梅の収穫後の用途
豊後梅の実は大きいことが特徴で一粒が30gから40g、大きなものになると70gにもなります。梅の実の用途は多く梅ジャムや梅干、梅酒などを作ることができるので、ぜひ挑戦してみてください。ブンゴウメの収穫時期は用途によって異なりますので、最適な状態を見極めましょう。梅酒の場合は青い状態で収穫するので6月中に、梅ジャムや梅干は完熟した状態の実を収穫しますので7月中旬になります。
豊後梅(梅酒)の作り方
豊後梅(ブンゴウメ)は実が大きいため、梅酒にすると非常に存在感があります。 ガラスなどの保存容器は熱湯か35度以上のアルコールで消毒しておきます。梅酒の作り方は梅の実をよく水で洗い、なり口に残っている枝片を竹串などで取り除きます。容器に梅の実と氷砂糖を順に入れ、最後にホワイトリカーを加えます。3ヶ月経てば飲めますが、年数が経つごとに旨みが増します。
豊後梅(梅酒)の作り方 材料を替える
豊後梅で梅酒を作るとき材料となるのは
- 梅1キロ
- 氷砂糖1キロ
- ホワイトリカー1.8リットル
豊後梅(ジャム)の作り方
完熟した豊後梅の実を収穫したら、梅ジャムを作ってみてはいかがでしょうか。朝食のパンに付けたり炭酸水で割ったり、いろいろと工夫ができます。梅ジャムの材料は収穫した梅と砂糖だけです。ブンゴウメの場合、酸味が少し弱いので砂糖の分量を好みで加減してください。ビンに保存する場合は熱い状態で入れることが腐敗防止になります。
豊後梅(ジャム)の作り方 灰汁を抜く
豊後梅をジャムにする前に、灰汁(あく)を抜く作業をします。煮立てたお湯に収穫しきれいに洗った豊後梅の実を入れ、泡が出てきたところでお湯を捨てます。柔らかくなった実から種を取り除き、包丁で叩くか果実感を残したければそのまま、40%から80%の砂糖で煮詰めましょう。
豊後梅(ジャム)の作り方 鍋選び
豊後梅で梅ジャムを作るとき、鍋の選び方に注意してください。豊後梅は酸味が弱いとはいえ酸味があるので、アルミ製の鍋や鉄製では鍋が傷んでしまいます。梅ジャムの作り方で大切なのは、ステンレス製かホーロー製の鍋を使うようにしましょう!
豊後梅で作る梅干
豊後梅が収穫できたら、一度梅干に挑戦してみましょう。作り方を覚えてしまえば、難しいことはありません。カビが生えないように消毒と塩分さえ抑えれば、梅酒と同様に材料をビンや瓶に入れていくだけです。梅干の材料は
- 収穫した梅
- 塩 梅の重さの15%から20%
- 35度以上の焼酎(消毒用)
土用干しについて
土用のころに天日干しをすると皮が柔らかくなるのですが、これは抜かしても問題ありません。万一カビが発生した時は梅酢は鍋で煮沸しカビが触れていた梅は焼酎で洗い、ビンも熱湯消毒を行ってから梅を戻しましょう。
まとめ
豊後梅は開花時期が遅いので、早咲きの梅の後で花を愛でることができる品種です。育て方で気を付ける点は結実のためにもう1本違う品種を用意ことと、「桜切るばか、梅切らぬばか」と表現されるように伸びすぎて混んだ枝はバランスを考えながら間引くことです。梅の実は梅干・梅ジャム・梅酒とその用途は多様。このほかにも傷付いた実は梅エキスや梅雑巾などの用途もありますので、ぜひ実の収穫が出来た年はトライしてみてくださいね。