晴れた昼間には葉がしおれ、朝や夕方、曇りや雨の日には元に戻るのが青枯病の症状です。しおれたり復活したりを約1週間繰り返し、その後下葉から徐々に枯れ始めます。前日まで元気だったにもかかわらず、突然青々とした状態のまましおれるのが特徴です。株全体が青いままのことから気が付きにくく、進行が早いため枯れるまで気が付かないことも多いです。
青枯病の初期症状は、茎や葉の先端部分が水分を失ったようにしなびたようになることです。ほかの原因や病気との見分け方は、症状の発生が一時的なものなのかどうかです。昼間に限定的にしおれるのが青枯病の特徴のため、一日を通してしおれたままの状態であれば、ほかの原因を考えましょう。
青枯病は早期発見が大事ですが、見た目が青いままであることから、見分けがとてもつきにくいです。朝夕と昼間で葉の状態が違うのもポイントのひとつですが、分かりにくければ茎をカットしてみましょう。茎を切ると暗褐色をしており、切り口を水に浸けると白色の汁が確認できます。
青枯病の原因は、Ralstonia solanacearum(ラルストニアソラナセラム)と呼ばれる細菌にあります。茎や根の傷部分から、水分を媒介して細菌が植物内部に入り込むことによって起こります。20℃以上で発病し始め、発病適温は25℃~30℃、生育適温は約35℃です。また、病原菌の発病に適した土壌酸性度はpH6.6です。
青枯病は、水やりや雨水による泥はねなど水の移動とともに病原菌が付着するのが一般的ですが、実はそれ以外にも感染ルートがあります。剪定や芽かき、収穫時など、管理の際に何らかの形で茎に傷をつけると、そこから菌が入り込む可能性が高いです。「土壌を整えておけば安心」と思われている方も多いようですが、地上部からも感染することを覚えておきましょう。
青枯病は、夏の始まりである6月~残暑が残る9月が発生時期でありピーク期であるとされています。その理由は病原菌が活発に動くのが「高温期」だからです。ただし、近年では施設栽培で連作して作られることも増えてきたこともあり、暖かな4月~寒くなる前の11月ごろまで、発生期間が長くなってきています。
青枯病が発生しやすいのは、ナス科やウリ科の植物が多いです。病原性はトマトに対して強く見られますが、ナスやキュウリもかかりやすいです。そのほかに青枯病が発生しやすい植物としては、ミニトマト、パプリカ、ピーマン、ジャガイモ、ダイコン、カブ、ゴマ、タバコ、イチゴ、ショウガなどが挙げられます。
ボタ爺
トマトは、幼苗時~収穫時期まで、どのタイミングでも青枯病になる可能性があります。水やりや肥料をきちんと施しているにもかかわらず、葉や茎の先がしおれてきたら青枯病の初期症状の可能性が高いです。トマトは青枯病の典型的な症状が現れやすい植物です。晴れた日の昼間にしおれ、それ以外のときは元気かどうかで見分けましょう。
ボタニ子
トマトは萎凋病やモザイク病、黄化葉巻病など、青枯病に初期症状の似た病気にもかかりやすいよ!じっくり観察して見分けてね!
ナスの青枯病は、最初に先端の葉が水分を失ってしおれます。日中しおれ朝夕は回復する状態が2日~3日続き、その後徐々に回復しなくなり株全体がしおれていきます。青枯病は土壌感染が主ですが、ナスは剪定や収穫時に使用するハサミから感染することも多いです。その場合は株全体ではなく部分的に症状が現れることもあります。
キュウリが青枯病に感染すると、枝や葉の先がしおれていきます。キュウリに土壌感染が多い理由は、センチュウやコガネムシの幼虫などの害虫が発生しやすい点にあります。根を食害した際に傷をつけ、そこが感染源になるわけです。株に元気がないときは株元を掘ってみて、害虫の有無を確認するのも見分けるポイントのひとつです。
ショウガの青枯病の初期症状は、まず下葉に現れます。下葉が黄化し、しおれるとすぐに上位葉に進み、やがて株全体が枯死します。塊茎(かいけい)は変色し、切断してみると維管束部分に褐色や黒色の変色が見られるため、掘り起こしてみると症状が分かりやすいです。症状が進むと茎の根元部分が軟化腐敗し、やがて株全体が倒れてしまいます。
じゃがいもの青枯病の症状は、まず頂部あたりに現れます。頂部の葉が黄色く変色するか、もしくは水分を失ったようにしおれるのが特徴です。株元部分が黒く変色することもあるため、青枯病のような症状が見られたときは、頂部と株元を確認しましょう。地下で実がなっている場合は、症状が進むと実まで黒く変色する場合があります。
ボタニ子
実がなっている場合は、青枯病の症状が見られたらすぐに収穫してね!症状が進むと食べられなくなっちゃうかも!
青枯病は発症すると完治しない病気なので、病気予防が大事です。苗を選ぶ段階からすでに対策できるため、特にウリ科やナス科の野菜を育てる際は事前に予防方法を確認しておきましょう。
青枯病にならないためには、ウイルス耐性の強い苗を選ぶのが大事です。苗の葉や根の様子を観察して元気なものを選ぶのはもちろんですが、自根苗ではなく「接ぎ木苗」を選びましょう。理由は「丈夫だから」です。接ぎ木苗は病害虫に強く作られているため、病気にかかりにくいといわれています。
青枯病の病原菌は暖かい環境で活発に動くため、地温を上げないことが病気予防につながります。マルチングをする際は、熱がこもりやすいビニールは避け、ワラや草など通気性のよいものを使いましょう。
青枯病は水を媒介してかかるため、多湿状態を作らないことも大切です。水の与え過ぎに気をつけましょう。植木鉢やプランターなら風通しのよい場所に置き、畑や庭植えなら畝を作るなどして湿気対策をとってください。
青枯病の病原菌は土の中で冬を越せるため、植物を植える前に土を消毒するのも予防に効果的です。7月~8月の暑い時期に、土に水をまき黒ビニールで覆い、太陽光で消毒しましょう。地温40℃の状態で10日ほど置くと、土壌の病原菌が死滅します。薬剤を使うのも効果的です。土壌を清潔に保つ観点からも、連作は避けたほうが無難です。
ボタ爺
青枯病は連作障害の代表的病気ともいわれておるんじゃ。連作しないのも病気対策につながるぞ!
青枯病対策におすすめなのが、コンパニオンプランツを植えることです。コンパニオンプランツには、ネギやニンニクなどネギ科の植物を選びましょう。ネギ科の植物の根に共生する「拮抗菌(きっこうきん)」には、青枯病や立枯病の病原菌を抑制する効果があります。農薬などの薬剤を使わずに育てたい方にはピッタリの方法です。
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菌の黒汁は、連作障害予防や植物の生育促進に効果的な光合成細菌を含む土壌改良薬剤です。菌の黒汁に使われている光合成細菌は浄化効果のある善玉菌を培養して作られており、土壌散布後急速に増殖し、有害菌の発生を抑制します。さまざまな病原菌の発生を抑制する農薬としてだけでなく、良好な生育環境をつくり、成長促進効果も期待できます。
内容量 | 500mL |
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対象 | 野菜、花、樹木など |
青枯病は直接効果のある農薬もなく、土壌感染によって発症すると基本的には回復しません。周りに広がらないためにも、発症した株は根ごと引き抜き処分しましょう。青枯病の原因菌は乾燥に弱い性質を持っているため、引き抜いた株は日干しにするか燃やしてください。使用した器具や手袋は、使用後すぐに薬剤などを使って消毒しましょう。
茎や葉を剪定した切り口から青枯病の原因菌が入った場合は、かなり早い段階で気がつければ防げる場合があります。病原菌の入口となった部分を中心に、広範囲をばっさりと切り落としましょう。その後は多湿状態にならないように、水の与え過ぎに気をつけ環境づくりに努めてください。
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レンテミン液剤は、シイタケ菌糸培養物から抽出した抗ウイルス薬剤です。植物に直接散布して感染対策として使えるだけでなく、株分けや剪定作業中に器具や手指の消毒にも使えて便利です。有機JAS規格認定で、オーガニック栽培にも使えます。
内容量 | 100mL |
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有効成分 | シイタケ菌糸体抽出物 |
ボタニ子
青枯病を根本から治療する農薬はないの。茎や葉から感染した場合のみ、切り落とすことが治療の代わりになるよ!
ボタ爺
切り落とすときは、使用前も後も器具をしっかりと消毒するんじゃ!アルコールや薬剤を使うのが簡単でおすすめじゃよ!
青枯病にかかった株から採れた作物は食べても大丈夫ですか?
青枯病にかかった株から採れた作物からは、細菌感染することはほぼなく、収穫して食べても構いません。ただし病状がひどい場合には、毒素が実に回っている可能性もゼロではないため、気になる場合は食べずに破棄しましょう。
青枯病と似た症状の病気はありますか?
青枯病と似た症状の病気には、根腐れ萎凋病や立ち枯れ病が挙げられます。見た目で判断するのは難しいため、茎を切り取って水に浸けて判断してください。切り口から白い液体が出て水が白濁するようであれば、青枯れ病だと思いましょう。
キキョウやキク、ダリアなどの花も青枯病になることがあるんじゃが、数は少ないようじゃ。主に野菜に発生する病気じゃな。