こぶ病(別名:腫瘍病)は樹木がかかる病気です。こぶ病をそのまま放置しておくと、樹木の樹形を乱して観賞価値を下げたり、成育阻害を起こしたりといった問題が引き起こされます。
こぶ病の症状は、病名があらわすとおり、こぶの出現です。最初は小さな豆粒のようなこぶでも、時間とともに大きくなり、人の手のこぶしほどの大きさになることもめずらしくありません。こぶの中は空洞になることもあり、枝が折れやすくなったり、こぶの重みで枝が落ちたりと長い時間をかけて樹木の健康を脅かします。
こぶだらけのコナラ…虫こぶかな?とおもったけど、癌腫病(こぶ病)で出来たようです。 pic.twitter.com/LGKIum90ED
— いまさき ひろし (@imasaki_hiroshi) February 5, 2016
こぶ病の初期症状は、豆粒のような小さなこぶの出現です。小さなこぶは年単位で徐々に肥大を続け、やがて大きなこぶとなります。
こぶ病は樹木にできた小さな傷口などから病原体が侵入し、樹木の細胞の異常増殖を引き起こします。病原体になりうる菌の種類は多く、あらゆる細菌や糸状菌(カビの一種)が原因です。感染する病原体や樹木の種類によってサクラコブ病、ヤマモモコブ病、フジコブ病など区別して呼ばれます。
さまざまな細菌や糸状菌が病原体となるこぶ病は、昆虫によって媒介されて起こることもめずらしくありません。発生したこぶから胞子が飛び出し、近くの樹木に伝播されることもあります。
こぶ病は1年を通じて発生する病気ですが、とくに梅雨は発生のピークにあたります。理由は、梅雨は湿度が高く、細菌やカビが増殖しやすい条件のためです。
こぶ病が発生しやすい樹木はサクラ、フジ、ヤマモモ、シラカバ、ナラ、マツ、スギなどです。マツやブナは糸状菌(カビの一種)が原因ですが、原因となる菌はマツとブナ科の間を行き来し、両者に感染することが知られています。フジ、サクラ、ヤマモモなどの病原体は細菌が原因です。
シラカシ樹幹こぶ病
— まっきー@植物 (@plant_macky) August 30, 2018
シラカシの幹にできた丸い物体
病気でできたもので、木工の材料にしたりする人もいるそう
特に樹勢に影響のあるものではないので、ナイフ等で切り取ってトップジン等を塗っておけば問題はありません。 pic.twitter.com/IGrgVddYvm
シラカバに発生するこぶ病の病原体わかっていません。しかし、初期症状の特徴などはほかの樹木と同様に、豆粒のようなこぶの発生です。
ボタニ子
ブクブク…。杉こぶ病。こんなの手塚治虫の漫画に出てくる気がします。 飯塚 pic.twitter.com/5auzyLZl
— 東京チェンソーズ公式“LIFE” (@tokyochainsaws) December 28, 2012
常緑樹であるスギは、枝にできた初期症状を見落としやすい樹木です。枝の先端や節々に小さなこぶが初期症状となってあらわれ、やがて大きなこぶになります。スギのこぶ病の原因は糸状菌の一種です。湿度の高い杉林のような場所で発生しやすい傾向があります。
こぶ病 江東区
— Glasses bridge. (@Thefool75723910) October 11, 2019
イチョウでも罹るらしい。菌に侵されて、根元で膨らんでいる。全体を見ても弱っているのが分かる。樹種によって様々な菌が素因となるらしい。 pic.twitter.com/PVCEA8U1j8
大きく成長することで知られているイチョウもこぶ病にかかりやすく、初期症状はほかと同じく、小さなこぶの出現です。樹齢が長いイチョウの幹を観察すれば大きなこぶを見つけることも多々あるでしょう。
ボタニ子
イチョウは樹齢1000年を超えながら、こぶに負けずたくましく育っているものも多くあります。巨木に関する記事はこちらです。
庭のアカマツにこぶ病が出てたよ。さび菌の一種Cronartium quercuumによってマツの枝が肥大し、こぶ状になったところがバシッと割れて中からオレンジ色の胞子を出す。胞子は中間宿主のコナラに感染し、葉に毛さび病を起こす。#珍菌 pic.twitter.com/5FLdwc8v4A
— TAKAHASHI S. Yukiko (@kabitsukai) May 2, 2015
マツのこぶ病も、最初の初期症状は小さなこぶの出現です。マツのこぶ病の病原体はカビの一種(さび菌:Cronartium quercuumと)で、こぶがわれると、中で増殖していた胞子があたり一面に漂い、感染を広げます。マツは木肌がごつごつとしているので、初期症状を見落としやすく、こぶ病の出現は松枯れを起こす原因のひとつです。
【キャベツ栽培】
— まちゃおみ農園@絶賛栽培中! (@Machaomi_Farm) June 15, 2018
“根こぶ病”が一部発生してしまいました。
これは土壌に潜伏しているカビ菌が原因とされています。
主に5~11月の雨が多い時期に見られる病気で、根っこがコブ状になり、土壌か水分や養分を吸い上げられずに枯れていきます。
病気の株は早目に処分し拡がるのを食い止めるしかないです pic.twitter.com/GqhsEEKGsX
こぶ病と名前も症状もよく似た病気として、根こぶ病があります。根こぶ病はキャベツやハクサイといったアブラナ科の野菜に発生する病気です。こぶ病と同じように、根にこぶが出現し、成育を阻害します。根こぶ病はかびの一種が引き起こす病気です。こぶ病のように樹木には発生しません。
ボタニ子
こぶ病は樹木、根こぶ病は野菜ということですね。根こぶ病について解説した記事はこちらからどうぞ。
こぶ病の予防方法は、すでに発生したこぶを取り除き、病原体が広まらないようにすることです。傷口から病原体が侵入しないように不要な剪定を控えたり、風で枝葉がこすれて傷つかないようにしたりすることも有効な対策でしょう。こぶ病が発生した樹木の周りの樹木には、専用の農薬を散布して感染防止対策します。
Zボルドー
Zボルドー
参考価格: 1,322円
Zボルドーは細菌、糸状菌両方に効果のある薬剤なのでこぶ病の予防に適しています。水で規定量に薄めて散布して使用しますが、予防と治療の両方に使用可能です。こぶ病以外の細菌、糸状菌が原因となる病気対策にも使用できるのでひとつあると重宝するでしょう。雨が降った後、樹木に散布すると効果的です。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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有効成分 | 塩基性硫酸 |
こぶ病が発生した場合、とれる治療法は「こぶを切り落として薬剤を塗る」です。こぶは一度切り落としてもふたたび発生しやすく、こぶの発生個所が多く、切り落としきれない場合は樹木を引き抜いて処分します。
トップジンMペースト
トップジンMペースト
参考価格: 999円
トップジンMペーストは植物からこぶや病気箇所を取り除いたあと、新たな病原体が侵入しないように傷口に塗る農薬です。こぶ病のこぶを切り落としたあとにトップジンMペーストを塗りこみます。こぶ病以外にも大きな枝を剪定したあとにも使用可能です。
おすすめ度 | ★★★★☆ |
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有効成分 | チオファネートメチル |
こぶ病の病原体がマツとブナ科を行き来する理由は?
マツのこぶ病はさび菌が引き起こしますが、このさび菌は自身の成育段階によって宿主を変えます。成長にあわせて、快適な環境を求めるので行き来するのです。胞子時代にはマツに感染し、成長するとマツのこぶから飛び出してブナ科の植物に感染します。ブナ科の植物に感染しているときの病態は「毛さび病」です。
ほかにこぶを作る病気はある?
こぶ病のほかに、根こぶ病や根頭(こんとう)がんしゅ病などがあります。根こぶ病や根頭がんしゅ病は土壌中の細菌が原因です。根こぶ病は主にアブラナ科の野菜の根にできますが、根頭がんしゅ病は樹木の幹などに発生します。根頭がんしゅ病はこぶ病と同じように樹木に発生しますが、こぶができる場所が異なり、発生場所は土壌近くの幹です。
シラカバは木肌が白く、リゾート感あふれる雰囲気が魅力です。シラカバについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。