クロウリハムシはハムシ科の昆虫です。日本では本州以南に分布し、人家周辺、畑、草原、林縁と、広い範囲で生息しています。活動時期は季節でいえば春~秋です。成虫の状態で越冬します。体長6mm~8mmと、大きさでいうと小型の昆虫です。おもな餌としてウリ科の植物などを好んで食害するため、農家やガーデニング愛好家からは害虫として嫌われています。
クロウリハムシの頭部はオレンジ色です。目と背中の羽、脚部の黒色とあいまって、鮮やかな印象を与えます。この目立つ体色のコントラストから、6mm前後と目立つ大きさではないにもかかわらず、見つけやすい昆虫です。触角の色は全体的に黒く、長さは体長の半分ほどになります。胸部と腹部も頭部と同じオレンジ色のため、羽を広げるとオレンジ色と黒色のコントラストがより鮮明に映ります。
クロウリハムシの幼虫の大きさは体長8mm~9mmと、成虫より少し大きめです。体色は全体的に黄白色で、頭部や附属肢など、一部が淡い褐色をしています。土中にいることが多いため、成虫よりも発見や駆除が難しいという困った特徴があります。
クロウリハムシは、幼虫も成虫も草食性で植物を食害するため、農業やガーデニングでは害虫とされていますが、大発生しない限りは危険視されません。特別変わった特徴がない、ありふれた昆虫です。そのため、見た目や特徴が似た虫が存在します。クロウリハムシに似た虫の特徴と見分け方を見ていきましょう。
体長 | 成虫は7mm~9mm、幼虫は約10mm |
活動時期 | 4月~10月 |
おもな食べ物 | 成虫は植物の葉(特にウリ科の植物を好む) 幼虫は植物の根 |
ウリハムシはハムシ科の昆虫の代表格です。ウリ科の植物を好んで餌とする特徴から「瓜葉虫(ウリハムシ)」と名づけられました。クロウリハムシの親戚であるため、幼虫は植物の根を餌とすることなど共通点は多いですが、違う点もあります。クロウリハムシの体が黒とオレンジのツートーンカラーに対して、ウリハムシは体全体がオレンジ色です。このため、外見で簡単に見分けられます。
体長 | 5mm |
活動時期 | 4月~11月 |
おもな食べ物 | 成虫は植物の葉(特にウリ科の植物を好む) 幼虫は植物の根 |
ヒメクロウリハムシは、名前が示すようにクロウリハムシと同属の昆虫です。体の色がよく似た虫ですが、大きさが違います。ヒメクロウリハムシのほうが小柄で体形も細いです。体色も似ているようで少し違います。クロウリハムシの触覚と脚部の色は黒ですが、ヒメクロウリハムシの触覚と脚部の色はオレンジです。
クロウリハムシとヒメクロウリハムシの違いは、ほかにもありますか?
分布地域が違います。クロウリハムシは本州~南西諸島と広く分布していますが、ヒメクロウリハムシは南西諸島のみに分布している昆虫です。
クロウリハムシは春~秋の間活動し、成虫の状態で集団越冬する昆虫です。クロウリハムシは夏が産卵時期ですが、卵からかえった幼虫がサナギとなるまでの期間が約1カ月と短いため、季節が冬へと変わるころには成虫となっています。11月に入ると幹のくぼみなど寒風を避けられる場所に集まって、寒い季節を過ごします。集団で越冬するのは、単独で越冬するよりも生存確率が高いからです。
クロウリハムシが食害した葉には、独特の跡が残ります。クロウリハムシはウリ科の植物の葉を食べる際、葉に円形の溝をつけ、その内部を食すという変わった行動をとるためです。この行動は「トレンチ行動」と呼ばれています。トレンチ(trench)は英語で「溝」という意味です。トレンチ行動の理由は、ウリ科の植物の性質にあります。
ウリ科の植物には、葉を食べられると「ククルビタシン」という粘着性のある苦味成分を、食べられている箇所に送り込む性質があります。粘り気と苦味を出して、食べにくくすることで食害を抑えるのです。しかし、葉に溝をつけられると、苦味成分を送り込む道が遮断されてしまいます。クロウリハムシのトレンチ行動は円形の溝で苦味成分を遮断し、おいしく食べられる箇所を確保するための行動です。
ハムシ科の昆虫のおもな食べ物は葉です。しかしクロウリハムシは葉だけではなく、花も果実も食い荒らしてしまいます。クロウリハムシが農家やガーデニング愛好家から害虫として嫌われているのは、この生態が原因です。ウリ科の植物だけではなく、ほかの植物の花や葉、果実も食害するため、大発生した場合は、目も当てられないほどの被害を与えてしまいます。
クロウリハムシは幼虫も成虫も草食性ですが、食性は少し違います。植物の花、葉、果実を食べ物とする成虫に対して、幼虫の食べ物は植物の根です。クロウリハムシの幼虫は土中に潜んで根を食べるため、成虫よりも発見が難しく、駆除するのが難しい害虫として警戒されています。大発生すると根どころか茎の内部まで食害する恐れがあるため注意が必要です。
クロウリハムシの産卵時期は5月~7月、季節でいえば夏です。地域や気候条件によっては、夏前に産卵します。クロウリハムシは1回で数十個と、大量の卵を産むため、その年の気候条件によっては大発生することも珍しくありません。クロウリハムシの幼虫は根を食害します。大発生すると植物を枯死させることも多いです。
クロウリハムシは、幼虫~サナギ~成虫の成長サイクルが1カ月ほどと短い特徴があります。早い時期に産卵すると、その卵からかえった幼虫が成長して産卵することも多いです。このため地域や気候条件によっては、ひと夏で2回~3回産卵します。しかも1回で数十個と大量の卵を産むため、大発生しやすい昆虫といえるでしょう。
クロウリハムシは多くの植物を食害しますが、特にウリ科の植物を好みます。ウリ科の植物にはキュウリやカボチャ、スイカなど夏野菜が多いです。しかもクロウリハムシは夏の季節に発生・活動するため、夏野菜を中心に育てている農家からは厄介な害虫として嫌われています。さらにクロウリハムシには、ウリ科の植物の近くで産卵する性質があります。これも害虫として忌避される原因です。
クロウリハムシは、ナデシコやカーネーションなどのナデシコ科の植物も食べます。クロウリハムシにとっては、葉だけではなく花びらや花粉も食べ物です。草花は食いつくされて悲惨な姿にされてしまいます。この結果から、クロウリハムシは農家からも、ガーデニングでいろいろな園芸植物を栽培している愛好家からも害虫として嫌われているのです。
キキョウもクロウリハムシによく食害される植物です。キキョウは6月~10月、季節でいえば夏~秋にかけて咲きます。ガーデニングでは夏~秋の花壇を彩る花として人気がありますが、クロウリハムシの活動時期と重なるため、食害されることが多いです。クロウリハムシはキキョウが花後につける実も食べるため、キキョウの株全体が食べ物であるといえるでしょう。
クロウリハムシはブルーベリーの葉も食害します。ブルーベリーは酸性土壌で育つため、ほかの果樹と比べて害虫による被害は少ないとされていますが、まったくないわけではありません。ただし好き嫌いがあるのか、ブルーベリーの種類によって、クロウリハムシによる食害に差があります。特によく被害が出るのは、ブルーベリーの種類のなかで「ハイブッシュ系」と呼ばれる品種です。
クロウリハムシの駆除は、数が少ないうちは捕殺が効果的です。手やテープ、ピンセットで捕殺できます。ただし、クロウリハムシの成虫は危険を察知すると飛び去ってしまいます。大発生すると捕殺では対処できません。少数のうちに発見・駆除できるように、普段からこまめに植物を観察しましょう。
クロウリハムシが大発生した場合は、農薬・殺虫剤による駆除が確実です。特にガーデニングでキキョウやナデシコなど、クロウリハムシが好む園芸植物を育てている場合は、駆除だけでなく、防除対策として定期的な薬剤散布を取り入れましょう。クロウリハムシに効果がある農薬・殺虫剤はマラソン乳剤、スミチオン乳剤、アファーム乳剤、ベニカなどがあります。用法・用量を守って使用しましょう。
クロウリハムシの食べ物となる植物は、キュウリやスイカなど人間の食べ物となるものが多いです。特に農家の場合は、農薬や殺虫剤を使わずに駆除できる方法が好ましいでしょう。特におすすめは、コンパニオンプランツとして、クロウリハムシが苦手な植物を近くに植栽し、近づかないようにする方法です。植える植物は、独特のにおいや苦味を嫌うといわれているネギやラディッシュがよいでしょう。
クロウリハムシは天敵がいないため、農薬や殺虫剤に頼らず駆除するのは難しい害虫です。無農薬で被害を食い止めたい場合は、植物に近づけないように対策します。クロウリハムシは明るい環境を嫌うため、防虫用のシルバーマルチで地面を覆うやり方が効果的です。防虫ネットで植物を覆うやり方も効果があります。用途や栽培環境に応じて選ぶとよいでしょう。
雑草の除去もクロウリハムシの防除に有効な手段です。クロウリハムシは周辺の草花や雑草から移動して、食べ物とする植物に到達する性質を持っています。雑草を除去することで、クロウリハムシの移動経路を遮断できるというわけです。また、雑草は土の養分を奪い、美観を損ねるガーデニングの天敵でもあります。特にクロウリハムシの活動が盛んな夏の季節は、雑草が繁殖する時期です。迅速に除去しましょう。
出典:写真AC