疫病とは、さまざまな植物の葉や果実、茎、根などに発生する植物の代表的な病気です。疫病は「伝染病」の意味をもち、1つの株が病気にかかると周りの株にも伝染し、大きな被害となることがあります。その昔、ヨーロッパでは数年にわたり疫病が大発生し、食糧飢饉(しょくりょうききん)をおこした記録があるほどです。春〜秋にかけて多湿が続くと発生しやすく、特に梅雨や秋雨の時期は注意が必要な病気です。
疫病にかかった葉に見られるのが、灰緑色で不整形の水が染みたような斑点です。その症状がだんだんと拡大し、大きな暗褐色の病斑ができます。湿度が高いとうっすら白いカビが生え、湿度が低いと病斑部分が乾燥し茶色く枯れたようになります。
疫病が茎に発生するときは地際が多く、暗緑色のやや凹んだ大型の病斑が現れ、株全体が萎れます。根の疫病は水はけの悪い土壌で発生しやすく、茶褐色〜黒色に変色してとけるように腐るのが特徴です。上部に水分が送れなくなるため、しだいに株が枯れてしまいます。
比較的若い実で疫病が発生しやすく、大型で不整形の暗い色の病斑がシミ状に広がり、腐敗します。
疫病の初期症状は下葉から現れます。そこから上の葉に移っていくことが多く、水が染みたような灰緑色の斑点ができるのが特徴です。また、疫病は症状の広がりが早いのも特徴で、何も対策しないでいると10日もあればあっという間に蔓延し大きな被害となります。
トマト疫病 pic.twitter.com/zRb0cW68n9
— 橘朱頂蘭 (@klu_sophi) December 20, 2014
疫病は、水分を好む疫病菌(カビ)が原因で発生する病気です。この菌は土壌中に生息し、泥はねとともに植物の葉や茎、果実に付着し病気を引き起こします。また、土壌中の窒素が多いと病気に感染しやすくなります。同じ土壌での連作(同じ場所に同じ科の植物植える)が原因で発生することもあるため注意しましょう。
疫病菌は水分を好むため、雨の時期に多く発生します。降雨が続く梅雨や秋雨の時期には特に注意が必要です。また、水はけが悪い土壌で滞水、冠水した場合には病気が一度に大量発生することもあります。
病原菌は10℃を超えると活動が始まり、18~20℃で発病の最適温度となります。20〜25℃で伝染しやすくなり、さらに降雨などによる多湿が重なることで急激に蔓延します。梅雨、秋雨の時期はよく植物を観察しましょう。蔓延を防ぐには早期発見が重要です。
疫病はほとんどの植物に発生する可能性がありますが、ラン類や果樹、野菜がかかりやすいことが知られています。特に野菜は注意が必要で、ナス科のジャガイモ、トマト、ナス、ピーマンや、ウリ科のキュウリ、カボチャなどは気をつけて栽培しましょう。
家庭菜園のじゃがいも( ; ; )
— ゆゆゆ@ (@yuki_field_snow) July 25, 2020
疫病でシヌ pic.twitter.com/paQfYiATzg
ジャガイモの場合、初めは下葉に灰緑色のぬれたような斑点ができます。しだいに上の葉にも病気が移り、暗褐色の大きな病斑になるのが特徴です。葉の裏面に霜のような白いカビが発生することもあり、降雨が続くと2〜5日程度で畑全体に症状が広がります。さらに悪化するとじゃがいもにも病気が進み、表面は暗色、内部は褐色に腐敗します。
これがトマトの疫病っていう病気
— たてゆり/ほかほたて (@Fritillaria_D) November 14, 2018
感染力が強く、葉っぱ、実共に爛れたようになって枯れていく。 pic.twitter.com/UYdp9PC5qA
トマトの初期症状は下葉に現れることが多く、灰緑色の水が浸みたような斑点ができるのが特徴です。斑点はしだいに拡大し、暗褐色の大きな病斑になります。多湿の場合は白いカビが発生し、実に移るとやや凹んだ暗褐色の不整形な病斑がシミ状に広がり、腐敗します。
【悲報】疫病のため、よつファームのきゅうりは、近い将来、枯死ほぼ決定。今季の収穫はわずか2本でした。 (ToT) #yotsufarm pic.twitter.com/izDiU4BD9I
— よつ (@yotsu_1205) June 21, 2014
キュウリの初期症状では、下葉に灰緑色の斑点がみられ、しだいに水浸状の大型病斑になります。湿度が高いと、霜状の白いカビが現れるのが特徴です。茎に移ると暗緑色の病斑がみられ、地際が侵されると地上部は萎れ、立枯れ状になります。果実には暗緑色で水浸状の病斑ができ、表面には白色綿毛状のカビが生じて腐敗します。
以前疫病が発生した、または水はけの問題などで疫病の発生が心配される場所は、土壌消毒をするか新しい土に入れ替えましょう。家庭菜園で手軽にできる消毒方法は太陽熱消毒で、夏の気温が高い時期に行います。土壌の温度が60℃に達するとほとんどの病害虫が死滅するため、疫病菌にも有効です。
疫病は、窒素過多も病気発生の原因の一つです。植え付け時に土壌分析をし、それぞれの土壌に合う施肥量を把握することで予防します。化成肥料でも有機肥料でも肥料を与え過ぎはよくありませんが、有機肥料のほうがゆっくり植物に吸収されていくため初心者でも使いやすいでしょう。
疫病は土壌の水はけが悪いと蔓延する恐れがあるため、畝を高くしたり、腐葉土、パーライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入したりして対策しましょう。水はけのよい土づくりで疫病を予防できます。
連作による疫病を防ぐには、一定の時間をあけて作付けする「輪作」を実践することが大切です。特に連作障害の出やすいナス科やウリ科の野菜は3〜4年は作付け間隔をあけましょう。間にマメ科やイネ科の作物を挟むと疫病予防に効果的です。
泥はねによる疫病対策には、マルチ用のビニールで畝を覆ったり、苗の周りにワラやバークを敷き詰めたりすると効果的です。水やりは植物の頭からかけるのではなく、根元にやさしく与えると、泥はねが軽減できます。また、雨に弱い植物には雨よけの屋根をつけると予防効果が上がります。
疫病を予防するには、風通しにも気を配りましょう。植え付け時の密植を避け、傷んだ葉や古い葉、不要なわき芽はこまめに取り除き、葉が密集しないように剪定することが大切です。蒸れを防ぎ、疫病を防除できます。
全ての植物にあるわけではありませんが、疫病に抵抗性をもつ品種の苗や接木苗があります。疫病がたびたび発生する土壌では上記の対策とあわせて、抵抗性品種を導入すると予防効果が上がるでしょう。
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「Tダニコール1000」は、野菜・果樹・観葉植物にも使える総合殺菌剤で、カビが原因で起こるさまざまな病気を予防できます。薬剤の持続性が高く、病原菌による抵抗性もつきにくいため、常備しておくと重宝します。
★★★☆ |
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有効成分 | TNP |
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適用病害 | 疫病、黒星病、斑点病、うどんこ病など |
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天然成分の塩基性塩化銅が主成分の、安心安全な薬剤です。細菌による病気とカビによる病気の両方に予防効果があります。近年注目されている、オーガニック栽培でも使用できます。
★★★☆☆ |
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有効成分 | 塩基性塩化銅 |
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適用病害 | 疫病、べと病、斑点細菌病、もち病など |
今日の収穫
— 越後湯沢のMr.コンドロイチン(たかゆき) (@asataro315) August 2, 2020
昨日、梅雨明けが公式発表されましたが、どんより曇り空😵
トマト疫病は畝全体に広まり
チョッとダメかなって感じ😭
実にも感染してました😱#家庭菜園#市民農園 pic.twitter.com/Sxexkeiz2U
植物疫病を早期発見したときは、病気にかかった葉や実を全て取り除きます。除いた病変部分はそのまま放置せず、ゴミとして捨てることが大切です。病気の進行が止まらなければその株は諦め、周囲の土ごと取り除いて処分します。根が残らないよう注意してください。ただし、疫病は進行が早いので、周りの株にも感染がみられる場合は農薬を使うほうがよいでしょう。
【住友化学園芸】GFワイドヒッター
GFワイドヒッター
参考価格: 806円
「GFワイドヒッター」は、疫病やべと病に対して優れた予防・治療効果があり、作用性の異なる2種類の殺菌成分で病気をしっかり防除します。有効成分が降雨に流されにくく、効果が長く持続する優秀な薬剤です。発病部分を除いて散布しましょう。
★★★☆☆ |
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有効成分 | TPN、ベンチアバリカルブイソプロピル |
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適応病害 | 疫病べと病、うどんこ病など |
なぜ疫病は繰り返し発生するの?
疫病が繰り返して発生するのは、疫病菌が活動と休眠を繰り返していることが理由です。疫病菌は土壌中または疫病にかかった植物残渣中に潜み夏や冬を越え、活動適温期となると活発に動き出して繰り返し発生します。ジャガイモでは種芋の中に疫病菌が潜み、疫病が発生する場合も多くみられます。
疫病の人体への影響は?
疫病は、植物の病気であるため人体には影響ありません。病変部分に素手で触れても人に移ることはなく、病変の出ていない実なら食べてもよいでしょう。ただし、実に病変が見られなくても株が大きくダメージを受けている場合は、食味に変化が起きることもあります。