土壌消毒とは?
長年、同じ場所で農作物を育て続けていると、その土壌で摂れる農作物の気質や環境が連鎖して循環していきます。それはメリットだけではなくデメリットも引き起こす原因になるのです。そのため周期や時期を見て、土壌を安全な状態に保つ必要があります。今回は土壌を改善する「土壌消毒」に注目しながら、その効率的な実施方法などについてご紹介しましょう。
土壌消毒の大きなメリット
農作物の生産現場では、同じ野菜や果物を植え続けていくと「連作障害」が起こってしまうリスクが高まります。この連作障害とは、特定な農作物ばかりを連続して作付けすることで、その土壌に適している病害虫がはびこってしまう現象です。その原因である病害虫の殺菌に有力な方法として土壌消毒があります。
連鎖障害を防げる
農作物を育てる土壌の中には、カビを主体に病原菌が生息しています。植物の根を傷つける「センチュウ」といった害虫もいるため、それらがさまざまな害を引き起こす原因です。特に同じ土壌で同じ作物を続けて栽培すると、病原体そのものも環境に慣れていくため増殖し続けてしまいます。土壌消毒を行う理由は、土壌の中の病原体を減らしクリーンな状態に戻すためです。
その他のメリット
土壌に根付いてしまった病害虫などをそのまま放置していると、ますます繁殖して有害な土地になってしまいます。そこで土壌消毒を行ってリセットするのですが、実はその目的は、定期的に病原体を抑制し殺菌する効果だけではありません。他にも土壌消毒によって、以下のような効果が期待できるとされています。
雑草駆除
畑の手入れを怠ってしまうと余計な雑草がはびこってしまうことがあります。農薬などを散布して駆除することもできますが、できればナチュラルで健全な状態にするほうがベストです。そこで土壌消毒を事前にしておくことで、雑草の種子を元から死滅させられます。
土質の向上化
土壌消毒をあらかじめ行っておくと、土壌の中の微生物を活性化できます。土壌の「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」が推進されていき、土の状態を柔らかくをふかふかな状態にするからです。この団粒構造とは、小さい土の粒が安定しだし、大小に団子状の塊になることを指します。団粒構造ができ上がると保水性、排水性、通気性に優れた土壌になり、植物の成長に有効的です。
土壌消毒の方法
同じ畑で同じ作物を生産し続けることは、その土地を完全に慣らして効率よい収穫が得られるというメリットもありつつ、それを覚えた病害虫が住み着きやすくなる弊害も出てきます。そこで時期を見て土壌消毒による殺菌が必要です。ここでは、土壌消毒にはどのような種類があるのかをご紹介します。
太陽熱消毒
太陽熱消毒とは、その文字通りに太陽の放射熱により土壌の温度を上昇させ、病害虫を死滅させます。透明なビニールシートなどを利用し熱を集める方法です。この場合、土壌内部の温度上昇をどれくらいまでできるかによります。連作障害を起こす病害虫のほとんどは60℃の温度で死滅するとされています。そこでいかに土壌の内部にいたるまで60℃に到達させるかが成功のカギとなります。
土壌還元消毒法
土壌還元消毒法とは、米ぬかなど分解されやすい有機物を利用し、さらに太陽熱で加熱を促しながら消毒します。土壌に混入した有機物をエサに微生物を活発化させ、酸素を消費して病原菌を窒息させる方式です。太陽熱消毒よりも低温でできるので、日照の少ない地域で活かされます。ただし悪臭が出るデメリットも考えなくてはなりません。
蒸気・熱水消毒
土壌に蒸気や熱水を注入することで温度を上昇させ消毒します。太陽熱と同様に、土壌の内部の温度を60℃以上に上昇させることがポイントです。お湯や蒸気を作るボイラーが必要で、均一に注入できる設備投資が必須になります。このため、それに消費燃料の費用も考えなくてはならず、個人導入となるとデメリットも想定しなくてはなりません。この方法は組合や地域で共同利用する場合に向いています。