輪作とは
畑で作物を育てていると、なぜか昨年よりも出来が悪いということがまれに起こります。この場合、考えられる原因として連作障害を疑いましょう。この連作障害は、かなり古い時代から認識されていて、古代ローマ時代にはすでに、2つの畑で交互につくるということ(2圃式農業)が行われていました。連作障害にはいろいろな対策方法が考えられてきましたが、有効な対策方法に「輪作」があります。
輪作の意味
輪作とは、いろいろな作物とのローテーションを組んで、順序をきめて替わるがわる栽培していく方法です。例えば、今年じゃがいもを植えて収穫した土地に、次の年は大豆や枝豆などを植え、さらに次の年にはかぼちゃを育てる、などとして順番に数種類の作物を育てていきます。
連作障害の悪影響
同じ畑の同じ土壌で、同じ作物を続けて栽培していると様々な障害が生じます。これを連作障害といいます。「同じ作物」とは、全く同じ品種の作物のことだけではなくて、野菜の植物学的な分類で「同じ科に属する野菜」のことを意味します。連作障害の悪影響について、みていきましょう。
土壌病害虫の被害にあう
同じ科の作物を続けて作っていると、土の中で伝染する特定の病原体が増えてしまい、害虫が根を侵してしまいます。このことで生じる代表的な病害は、白菜、きゃべつなどに発生する「根こぶ病」、スイカやきゅうりなどに発生する「つる割れ病」、さらにはナスやトマトなどに発生する「青枯れ病」があります。いずれも、土の中の細菌によって発生し、土の中で進行する病気なので、気づいたら対策のしようがなかったということになりがちです。
土の栄養バランスが崩れる
植物は、何科に属するかによって土の中の肥料や養分の吸収に片寄りがあります。連作でその作物が必要とする栄養分ばかりが使われ、大きく減ってしまい、土の中の栄養バランスが偏ってしまいます。
自らの出す物質で自分が傷つく
作物の根には、ほかの植物の成長を防止するために、毒性物質を出す性質があります。連作でこの毒性物質が土壌中に必要以上に増えてしまい、やがて毒性物質を出した作物自身の成長に悪影響を与えだします。いわゆる植物の自家中毒を起こしてしまいます。
ボタニ子
連作を繰り返すと、土壌の状態をどんどん悪化させてしまうね。
ボタ爺
連作による障害を防止して、土壌を耕作に適した状態にする対策は、とても意味のあることなのじゃよ。
輪作栽培と連作栽培の違い
輪作で農業をやってみようと思ったとき、心掛けるべきことはなんでしょう。一方で、連作でも上手に栽培している畑はたくさん見かけますが、輪作という方法をとる以外に、どのような対策をとれば、連作障害を起こさなくてすむのでしょうか。
輪作で育てる場合
輪作を始める際には、どの作物がどの科に属するかを知らなければ意味がありません。また作物の種類によって連作障害の度合いも変わってきて、障害がでやすいものとそうでないものがあります。それによって、一度作付けしたら、どのくらい間をあける必要があるかも異なります。そうした作物の性質を知らなければ、せっかく輪作したのに、障害対策の意味がなくなってしまい、色々つくってみたけどやっぱりだめだった、ということになりかねません。
野菜の科の分類
科 | 主な野菜 |
ナス科 | トマト、ピーマン、じゃがいも、なす |
ウリ科 | スイカ、かぼちゃ、きゅうり |
アブラナ科 | こまつな、ブロッコリー、きゃべつ、白菜、大根 |
ユリ科 | にんにく、たまねぎ、ねぎ、にら |
アオイ科 | オクラ |
マメ科 | 枝豆、えんどう豆、いんげん豆 |
イネ科 | とうもろこし |
連作障害の出やすさ
連作障害の出やすさと必要な休栽期間 | 主な野菜 |
5~6年 | スイカ、ゴボウ、えんどう豆、なす |
3~4年 | トマト、ピーマン |
2年 | 白菜、いんげん豆、枝豆、大根、じゃがいも、きゅうり |
連作障害が出にくい | にんじん、かぼちゃ、にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、オクラ |
輪作で防止できること
農業を始めて害虫の集中攻撃にあったり、作物の元気がなくなると、どうしても肥料をやって解決しようとしてしまいがちです。しかし、肥料のやりすぎは逆に野菜を弱らせてしまい、逆効果になることが多くあります。輪作をおこなうと、野菜を育てながら土壌のバランスをとることができるので、肥料に頼りすぎず、作物を元気な状態で育てていくことができます。
狭い土地でも輪作してみよう
耕す土地が狭いから、輪作なんてとても無理だ、とあきらめてしまうこともあるでしょう。しかし場合によっては、食べきれないほどの同じ種類の野菜を作るより、事前によく考えられた作付け計画にしたがって輪作をおこなってみたほうが、作る量もほどほどになりますし、土地の栄養分が偏ったり害虫が増えたりするリスクも少なくなります。ぜひ輪作に挑戦してみましょう。
連作で育てる場合
連作し続けるといつかうまく育たなくなるかもしれない、と分かってはいても、種や苗を使いきれなかったり、同じ作物をぜひ作りたかったり、このまま同じ作物を作り続けたいと思うときもあるかもしれません。連作を続けながらさまざまな障害の対策をとる方法があるか、みてみましょう。
混植する
連作障害で起きてしまう土の中の病害虫の対策には、その病害虫に強い野菜を一緒に植えるというやり方があります。これを混植と呼びます。例えば、ねぎやにらの根からは抗菌物質が分泌します。この抗菌物質は、スイカやきゅうりに発生するつる割れ病の原因となるカビ菌の発生や、連作障害を起こしやすいナス科の野菜の病気や害虫の発生も、防止してくれることが分かっています。
参考文献
図解でよくわかる農業のきほん: 栽培の基礎から新技術、流通、就農まで (すぐわかるすごくわかる!)
参考価格: 1,760円
プランターで育てる
家庭菜園で野菜作りを始めるとき、手ごろなプランターで始める人も多いのではないでしょうか。プランターであれば、土の交換が可能なので、同じ作物を連作することもできます。昨年使った土はしばらく休ませ、土のローテーションをおこなって、作物は同じものを植え付けるというやり方です。ただし、プランター栽培であっても、決して輪作ができないと決まったわけではありません。プランター栽培での輪作については、「おすすめの輪作例④」で後述します。
出典:写真AC