ナツツバキとは
ナツツバキ(夏椿)は福島県・新潟県より南の本州、四国地方や九州地方など暖かい地域に自生するツバキ科の落葉樹です。6月~7月にツバキのような花を咲かせます。昔から寺社の庭に「シャラノキ」として植えられてきましたので、見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。
名前 | ナツツバキ(夏椿) |
別名 | シャラノキ(娑羅の木) |
園芸分類 | 庭木・花木 |
形態 | 高木 |
原産地 | 日本(北海道以外) |
開花の時期 | 6月~7月 |
花の色 | 白色 |
暑さ / 寒さ | 普通 / 普通 |
特徴 | 落葉性、一日花 |
ナツツバキの特徴
名前の由来
「ナツツバキ」という名前は花の形がツバキにとてもよく似ていることと、開花の時期が夏という特徴からつけられました。別名の「シャラノキ(沙羅の木)」は、仏教の聖樹である沙羅双樹(サラソウジュ)と間違えたことにちなんでいるとされています。
ボタニ子
ちなみに幹がつるつるしているしているためサルスベリと呼ぶ地域もあるけど、本来のサルスベリはミソハギ科で、まったく別の植物なんだよ。
シンボルツリーにも人気
シンボルツリーとは玄関先や庭の目立つところに配置して、家庭の印象を演出する植物のことです。ナツツバキは清楚な雰囲気の花や新緑・紅葉の見応えがある葉などから、シンボルツリーとしてもとても人気があります。涼しげな花をつけるナツツバキに迎えられると、気持ちが豊かになりそうですよね。
落葉性の一日花
ナツツバキはツバキ科の植物です。ツバキは冬でも緑色の葉をつけていますが、ナツツバキは落葉性なので秋には紅葉があり、冬は葉が落ちます。これはツバキ科の中でもめずらしい特徴です。また「一日花(いちにちばな)」という、開花から1日で花の形のままポトリと落ちるという性質もあります。
ボタ爺
ただし紅葉は環境によって色が変わったり、少ししか色付かなかったりするから、紅葉を見る目的で植えるのはあまりおすすめしないぞ。
ナツツバキの花言葉
ナツツバキの花言葉は「はかない美しさ」「愛らしさ」「哀愁」です。ナツツバキは前述のとおり一日花という性質を持っているので、咲いたと思ったその日のうちに花を落としてしまいます。そうしたところからはかなさや哀愁がイメージされ、このような花言葉がついたのでしょう。
ナツツバキとヒメシャラ
ナツツバキとよく似た花に、ヒメシャラという品種があります。「シャラ」という名前がついている通り、ナツツバキと同じツバキ科に属する落葉樹です。それではヒメシャラの基本情報と、ナツツバキとの見分け方についてご紹介します。
ヒメシャラとは
ツバキによく似た白い花を咲かせる、ナツツバキ属の植物です。樹皮が赤褐色でとても美しいことから、シラカバ・アオギリと並ぶ「三大美幹木」としても人気があります。庭木として好んで植えられる点も、ナツツバキと似ている点ですね。
名前 | ヒメシャラ(姫沙羅) |
園芸分類 | 庭木・花木 |
形態 | 高木 |
原産地 | 日本(北海道・東北・沖縄以外) |
開花の時期 | 6月~7月 |
花の色 | 白色 |
暑さ / 寒さ | 普通 / やや弱い |
特徴 | 落葉性、一日花 |
見分け方のポイント
ナツツバキとヒメシャラの見分け方は、大きく分けて3つあります。見分けるためのポイントと、それぞれの違いについて見ていきましょう。
花の大きさ
まず違うのは、花の大きさです。ナツツバキはツバキと同じく5cmくらいの大ぶりの花を咲かせますが、ヒメシャラの花はその半分くらいの大きさです。名前に「姫」がついているのも、シャラ(ナツツバキ)よりも花が小さいことに由来しています。
幹の樹皮
ヒメシャラは幹がつるつるとしていて、色もあざやかな赤褐色がきれいです。一方のナツツバキの樹皮は中途半端にはがれて、まだら模様のようになっているのが特徴的です。
白い毛がある
また、ヒメシャラには枝葉や花の外面に絹糸のような細く白い毛があることも区別するポイントです。触れてみてふわふわとした感触があれば、ヒメシャラであると判断できますよ。
ボタニ子
続いて、ナツツバキの育て方を紹介
ナツツバキの育て方
ナツツバキは宮城県より西の本州と四国地方、中国地方に自生している植物なので、これらの地域であれば庭木として育てることが可能です。日当たりや肥料、病害虫など、くわしい育て方についてご紹介します。
ナツツバキの育て方①日当たり
ナツツバキが好きなのは日当たりと風通しのよい場所です。明るくて、さわやかな風の通る場所を栽培場所に選びましょう。西日や直射日光が当たったり、乾燥が強かったりする場所は苦手ですので注意してくださいね。
ナツツバキの育て方②水やり
庭植えの場合も鉢植えの場合も、水切れには注意が必要です。乾燥してしまうと葉がそり返ったり枯れてしまったりします。土が乾いたと感じたら、たっぷり水をやるようにしてください。特に夏場は乾燥しやすいです。ナツツバキは根が浅いため、乾燥・水切れを起こしやすいという特徴があります。株元にマルチングを行うのもよいでしょう。
マルチング:植えた植物の株元を、ビニールや紙などでおおうこと。乾燥・防虫・雑草を防ぐ効果がある。
ナツツバキの育て方③肥料
ナツツバキは肥えた土で育てることが重要で、肥料が少ないと成長が滞ってしまいます。寒肥として有機質の肥料を与えたり、開花した後に油かすを少量与えたりするとよく育ちます。鉢植えは、2月ごろと10月ごろに肥料をやるとよいでしょう。
ナツツバキの育て方④植え付け・植え替え
ナツツバキは移植をとても苦手とする植物なので、一旦苗木を植え付けたら移動はできないと思った方がよいでしょう。直射日光や西日、風通しに注意して植え付け場所を選んでください。鉢植えは2年に1回程度の頻度で植え替えを行います。ひと回り大きな鉢に植え替えて、のびのび成長できるようにサポートしましょう。
ナツツバキの育て方⑤病気・害虫
病気
さび病や灰色かび病に注意が必要です。どちらもカビ菌が原因で、進行すると葉が落ちてしまいます。ひどい被害になることは多くありません。枝葉の剪定を行い、よく日が当たるようにしましょう。
害虫
チャドクガやアオドウガネに注意しましょう。どちらも食害を起こす害虫です。特にアオドウガネは夜行性なので、夜間にもときどき見回りをするように心がけると被害が防げますよ。
ナツツバキの剪定
ナツツバキは大きいものでは10mまで成長します。枝を整えなくても自然とバランスの取れた形に成長するため、頻繁な剪定も必要ありません。むしろあまり剪定に強い品種ではありませんので、実施するときは慎重に行いましょう。
剪定のタイミング
暑い時期に剪定をすると、体力を奪われて枯れてしまうことがあります。夏場の剪定は控えましょう。実施のタイミングとしては、落葉期である秋や、休眠中の冬が適期です。
剪定の手順
混み合って蒸れている部分の枝や、枯れた枝を切る程度でよいでしょう。太い枝はダメージが大きく、細菌感染のリスクも高まりますので、なるべく切らないようにします。枝の途中で切ると芽吹きが悪くなる可能性があるため、枝分かれしている部分の根元を切ってくださいね。
まとめ
蒸し暑い初夏の時期に、清涼感のある白い花で目を楽しませてくれるのがナツツバキです。比較的丈夫で、栽培の難易度も低いので、お庭に1本あると素敵ですよ。
出典:写真AC