雪椿(ユキツバキ)とは
雪椿(ユキツバキ)は、東北の奥羽地方から山陰地方の日本海側に自生する椿の1種です。学名Camellia rusticanaのツバキ科ツバキ属の常緑低木で、別名にオクツバキ、サルイワツバキ、ハイツバキがあります。豪雪地帯でたくましく生きる雪椿の姿が、新潟県の県民性を表しているとし、昭和41年に「県の木」に指定されました。同県加茂市、阿賀町や長野県の飯山飯山市の花にも指定されています。
雪椿の開花時期
雪椿の開花時期は、雪が解け始めた春4月から6月の間です。濃いピンク色に近い紅色の花が平たく咲くのが特徴で、雄しべの黄色との対比が絵になる美しくも馴染みのある花姿です。日本の庭木でよく植えられている椿(ヤブツバキ)との見分け方の1つである一重咲きの花弁は原種の特徴で、八重咲きで開花する雪椿も存在します。
雪椿の名前の由来
雪椿は、太平洋側の山地に分布するヤブツバキが、日本海側の寒冷な気候に対応して変化、進化したとされています。そのため、本来冬の寒さに勝てないはずの椿が、豪雪の厳しさに耐え変化を遂げ、春には美しい椿の花を咲かせたことが由来で、「雪椿」と呼ばれるようになりました。
雪椿の花の特徴
雪深い山地に分布する雪椿の花は、ピンク色に似た紅色の一重咲で、花糸は黄色、雄しべは筒状ではなく散開しているのが特徴です。しかし、新潟県内でも庭木に見られる雪椿は、この原種の紅一重咲きから花色や花姿まで変化したものが多く植えられています。なので、開花した雪椿の花弁だけではヤブツバキとの違いを見付けるのは難しいかもしれません。
雄しべの花糸にも注目!
花弁では見分けられない場合は、雄しべの花糸に注目してみましょう。花糸とは、雄しべの葯(やく)を支えている糸状の柄を指します。そして、雪椿の花糸は黄色で散開していますが、ヤブツバキの花糸は白色で筒状になっています。
椿(ヤブツバキ)との違い・見分け方は?
ヤブツバキとの見分け方は、葉の違いを見ても調べることができます。雪椿の葉もヤブツバキの葉もとてもよく似ていますが、雪椿の方がより薄い葉をしていて光に透かすと葉脈が明瞭で、さらにギザギザの鋸歯がより鋭いのが特徴です。また、葉柄は短く両側に毛が生えています。この見分け方が分かれば、開花時期に関係なく雪椿を見付け出すことができます。
中間種がある!
実は、雪椿とヤブツバキの中間種である「ユキバタツバキ」という中間の地域で自然に交配された品種も存在します。中間種ということもあり、花弁、雄しべ、葉ともに中間の特徴を持ち、花色は白色と紅色のまだら、ピンク色、朱色、濃い紅色から「黒椿」と呼ばれるほどの暗い紅色まであります。このユキバタツバキは、岐阜県上郡市大和町の群落に自生し、大切に保護されています。
樹高の秘密!その①
雪椿の樹高には、豪雪地帯で生き抜く秘密が隠されています。それは、ヤブツバキとは違い雪椿の樹形が株元から枝分かれた低木で、根元に近い枝は匍匐するようにしなって伸びていることです。そのため、大量の雪が積もっても簡単に折れない丈夫な柔軟さを兼ね備えているのです。
樹高の秘密!その②
環境が合えば樹高が高く伸びるヤブツバキと違い、雪椿は雪の重さに耐える必要があるため、その地域で積もる雪よりも高く伸びることはないと言われています。そのため、その地域の雪椿の樹高を見れば、積雪量の目安になるとされているほどです。
雪椿のように!
厳しい寒さや積もり積もる雪にも負けない健気でたくましくも美しい姿を誇り、県木や市の花になるほど、雪椿は雪国の人達に愛され大切にされてきました。また、その姿を見習って丹精込めて造られた日本酒や雪椿を擬人化して母の生き様を歌った小林幸子氏の唄をご紹介します。
日本酒「雪椿」
創業1806年から200年以上の歴史を誇る蔵元である新潟県の「雪椿酒造」の純米酒です。雪国の厳しい冬の寒さを乗り越え花開く雪椿の姿を酒造りに対する姿勢に活かそうとする思いを込めて名付けられました。昔ながらの手造り製法にこだわり、発酵のバランス管理に従事して「飽きのこない旨みある純米酒」を造り、過去10年間で6回新酒鑑評会金賞を受賞した蔵元の日本酒「雪椿」です。
小林幸子氏の唄「雪椿」
やさしさと かいしょのなさが
裏と表に ついている
そんな男に 惚れたのだから
私がその分 がんばりますと
背をかがめて 微笑み返す
花は越後の花は越後の 雪椿
夢にみた 乙女の頃の
玉の輿には 遠いけど
まるで苦労を 楽しむように
寝顔を誰にも見せないあなた
雪の谷間に 紅さす母の
愛は越後の愛は越後の 雪椿
つらくても がまんをすれば
きっと来ますよ 春の日が
命なげすて 育ててくれた
あなたの口癖 あなたの涙
子供ごころに 香りを残す
花は越後の花は越後の 雪椿
雪椿の育て方
雪椿の育て方は、ヤブツバキと特に変わらず土壌の質も選ばないので育てやすいです。日当たりが良すぎる場所よりは、半日陰から日陰での栽培の方が葉の色、艶ともによく育ちます。育て方は難しくありませんが、4月と7月頃にチャドクガという害虫の被害を受けやすいので、消毒や剪定などの手入れが必要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本の定番の庭木としても、着物や浴衣などの古典柄としても椿の花は親しまれていますが、雪椿という雪国で生き抜いた固有の椿はさらに興味深く、趣があります。育て方も容易なので、是非栽培してその花の美しさを身近で味わってみてはいかがでしょう。
出典:写真AC