カメリアとは
「カメリア」とはなんなのか
カメリア(学名Camellia)とはツバキ科ツバキ属の花木で、東南アジアの椿がヨーロッパに渡ってカメリアと呼ばれるようになったものです。カメリアに近い花では、同じツバキ科のサザンカ、チャノキ、ナツツバキ、ヒメシャラがあげられます。カメリアは日本、朝鮮半島が原産国で18世紀にヨーロッパにわたり、世界的に広く知られるようになりました。
「カメリア」と「椿」は違う?
上記の通り、日本で椿と呼ばれるものが、ヨーロッパでは「カメリア」と呼ばれているわけなので、「カメリア」=「椿」であり、同じ「ツバキ科ツバキ属の花木」です。地域によって呼び名が異なるわけですね。なお、椿の英名(英語)は「Camellia(カメリア)」です。
貴族の間では「日本の薔薇」と認知された
カメリアは、ヨーロッパでビロードのような花びらをもつ花として人気を博しました。特に貴族のあいだで「日本の薔薇」としてもてはやされました。そして品種改良によって、大輪で八重咲きの豪華な花が多く生み出されました。カメリアは花の姿が薔薇にも似ていますが、薔薇と違って匂いがないことを好む人もいました。女性達の間では、花を楽しむだけでなくコサージュのように身につけることも流行しました。
カメリアという名前の由来
ヨーロッパには、18世紀にイエズス会の宣教師で植物学者のゲオルク・ヨーゼフ・カメルによってもたらされました。ヨーロッパに渡った椿は、彼の名前「カメル」から、カメリアと名づけられたのです。
女王マリア・テレジアとカメリア
カメルと椿(カメリア)については、次のような逸話も残っています。カメルが白椿を女王マリア・テレジアに献上すると、女王マリアは、その白椿をうつ病の夫に渡しました。するとどうしたことでしょう、夫は心の平安を取り戻したそうです。白椿の西洋の花言葉に「愛慕」があるのは、このような逸話からきたものかもしれません。
オペラ〈椿姫(La Dame aux camélias)〉
デュマの小説「椿姫」では、カメリア(椿)を愛した女性が描かれています。その物語をベルディがオペラとして作曲し、19世紀に初演されました。150年以上たった今もオペラやバレエで上演されています。物語の舞台は華やかなパリの社交界。カメリアをいつも身につけている高級娼婦ヴィオレッタと貴族の青年アルフレードの悲恋の物語です。その中で、カメリアの花は、主人公の美貌をさらにひきたてる魅力的な花として登場します。
カメリアの特徴
花の特徴
花の色や形は?
カメリアは日本をはじめ東南アジアの椿がもととなり、ヨーロッパで作り出された園芸品種です。花は立体的で花びらには厚みがあり、花色は赤、白、ピンク、赤に白の斑入りの品種などもあります。一重咲きやから八重咲き、千重咲きなどさまざまな花があります。
花の大きさや香りは?
花径は3~15センチほどですが、それよりもさらに大きな巨大輪の花もあります。花の香りは鼻を近づけたらかすかに香るぐらいです。最近は「匂い椿」と呼ばれる種類のものが出ていますが、薔薇の香りに匹敵するようなものはありません。
開花時期は?
開花期は3月から5月で、「椿」の名前の通り、春の花です。
木の特徴
木は常緑性の高木で5~6メートルほどに成長しますが、なかには15メートルほどの高さに及ぶものもあります。ただし成長は遅く、大きくなるには年月がかかります。椿は鳥媒花で、メジロなどの鳥が花心にある密を吸いにきて受粉を助けます。実(み)はピンポン球ほどの大きさになり、椿油の原料となります。
カメリアの品種
華やかな品種が多い
品種改良によってヨーロッパ人好みの豪華な花が作り出されました。千重咲きや八重咲き、唐子咲き、獅子咲きなどの華やかな大輪の品種が人気です。なかには牡丹の花に匹敵するほどの巨大輪のカメリアも生み出されました。
カメリアの花言葉
カメリアの花言葉といっても、日本では「椿」で浸透していますので、①日本における「椿」と、②西洋における「カメリア」の花言葉をご紹介します。
日本の花言葉
椿の花言葉
椿全体を表す花言葉は「誇り」「控えめな優しさ」です。鮮やかで大きめのしっかりした花を咲かせることや、肉厚の緑の葉陰に美しい花を咲かせていることから感じさせる花言葉です。
赤椿の花言葉
「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」「謙虚な美徳」です。日本のヤブツバキのイメージからくるものでしょう。まだ花が少ない早春に花を咲かせる椿の花は可憐で近寄って眺めたくなります。
白椿の花言葉
「完全なる美しさ」「申し分のない魅力」「至上の愛らしさ」です。白い花というのは光によって濃淡ができ、花びらの形そのもの美しさが感じられます。椿の立体的で幾何学的な造形美が引き出されるのが、白い色だと言えます。
ピンクの椿の花言葉
「控えめな美」「控えめな愛」「慎み深い」です。ピンクという色から少女を思い描きます。「乙女椿」というピンクの椿もあります。赤い色よりさらに可愛らしい少女のような花です。
西洋の花言葉
赤いカメリアの花言葉
「You’re a flame in my heart(あなたは私の胸の中で炎のように輝く)」
白いカメリアの花言葉
「adoration(愛慕、崇拝)」「loveliness(愛らしい)」
ピンクのカメリアの花言葉
「longing(恋しく思う)」
日本の花言葉とはずいぶん違いますが、ヨーロッパに渡った椿は「日本の薔薇」と呼ばれるほど、熱狂的な人気を誇りました。赤いカメリアは「椿姫」の情熱的な恋愛を、白いカメリアは女王マリア・テレジアの夫への愛情を感じさせます。
カメリアが「怖い」といわれる裏花言葉?!
面白いことに?カメリアにも「怖い」と言われてしまう裏の花言葉みたいなものがあります。二つほどまつわるエピソードのご紹介です。
①花の落ち方が「斬首」を思わせる?
椿は花びらが元のところでくっついているので、散るときに花びら一枚一枚散るのでなく、花全体がポトッと落ちます。ただ、江戸時代はそれが斬首を思わせるため武士の家では嫌われていたということです。
②死が恋人を引きさく悲恋のイメージ
オペラ「椿姫」の主人公ヴィオレッタが最後に死んでしまい、恋が叶うことがなかったため、不吉に思う人もいます。
出典:写真AC