黒腐病(くろぐされびょう)は、主にアブラナ科の作物におこる病気です。伝染方法は、種子伝染と土壌伝染の2種類です。黒腐病は治療後も二次感染がおこりやすい病気なので、病気の発生理由や症状の特徴を知り予防対策をすることが重要です。
幼苗に発症した場合は、葉の端の一部が変色し、乾燥してから枯れるのが一般的な初期症状です。土壌伝染した場合は、水孔から葉脈に病原菌が侵入します。そのため変色は本葉の葉脈に沿っておこり、葉全体に初期症状が広がるのも早いです。
黒腐病の原因菌は、土の中に生息します。そのため種子伝染の原因は、病原菌に汚染された用土を使うことが最大の理由です。二次感染につながる土壌伝染は、作物の水孔や傷口に付着した原因菌が雨水に交じって土に落ちることが原因でおこります。
黒腐病に関する研究は早くから進められていたため、発生しやすい時期やかかりやすい作物に共通する特徴は判明しています。特に黒腐病は治療よりも予防が効果を発揮する病気です。そのため被害を最小限に抑えるには、黒腐病の特徴を知ることが重要です。
黒腐病は、雨が多い時期に発生しやすいです。しかも集中豪雨や強風が理由で葉や茎などが傷つくと、傷口から病原菌が侵入するため一気に蔓延する傾向があります。そのため雨が続く時期はもちろんですが、台風が多い春と秋も注意が必要です。
黒腐病はアブラナ科に多く発生する病気です。中でも特に被害が出やすい作物はキャベツ、ハクサイ、チンゲンサイなどの葉野菜です。葉野菜のほかにもダイコンやカブなどの根菜類も発症しやすいですが、葉野菜と根菜類の病原菌は種類が違います。
黒腐病の発症率が高いのは、アブラナ科の野菜です。黒腐病は初期症状での治療が重要ですが、治療をせずに放置すると二次感染で被害が拡大します。ただし初期症状はアブラナ科でも種類によって違うため、それぞれの特徴を知ることが重要です。
キャベツ黒腐病はキサントモナス・カンペストリスが病気の原因菌で、雨によって葉や茎などが傷つくと発症しやすいです。キャベツ黒腐病に発症すると、葉だけでなく茎や根にも症状があらわれますし、処置が遅れると二次感染で被害が拡大します。
キャベツ黒腐病の場合は、葉の裏側の変色が初期症状です。色は「暗緑→黄色→茶色」の順で変色し、進行すると葉の表面や全体も変色します。病気が進行しても、腐敗はしません。変色した部分が乾燥によって破れていくため、葉全体が枯死します。
ダイコン黒腐病の病原菌は、シュードモナス・シリンゲ・マキュリコラとシュードモナス・カスビナ・アリサレンシスです。病原菌のは25~27℃で活動が活発になりますが、寒さに強く0℃でも死滅しません。湿度が高いと発生しやすく、トンネル栽培は要注意です。
初期症状は、葉の裏側の暗緑斑点です。斑点が増加すると暗緑から黄色に変色し、葉の表面にも症状が現れます。変色は葉の根元にも表れるのが、ダイコン黒腐病の特徴です。そのため葉の根元を切ると、切断面に暗緑の病斑がはっきりと確認できます。
白菜黒腐病の病原菌は、キサントモナス・カンペストリスです。気温の変化が激しい環境が苦手なので、雨の多い春と秋に多く発生します。ほかの黒腐病と同じく水孔からの土壌感染もおこるため、秋は特に台風後が発生しやすく注意が必要です。
白菜黒腐病の初期症状も、葉がメインです。土壌のから伝染するため、葉の頂部よりも下葉のほうが症状は目立ちます。当初は黄色の斑点ですが、斑点の数が増えると黒褐色に変色します。ただし当初から黒い斑点が見られる場合は、白菜黒斑細菌病の可能性が高いです。
ブロッコリー黒腐病は、病原菌がキサントモナス・カンペストリスです。雨が多い時期に発生しやすいですが、主な伝染方法は強風や集中的な大雨による土壌伝染です。そのためブロッコリー黒腐病の発生は、春よりも台風が集中する秋に多いです。
ブロッコリー黒腐病は、幼苗期~収穫期まで発生します。幼苗の子葉の初期症状は、頂部から黄色に変色します。本葉は土に近い根元から、V字型病斑が現れるのが特徴です。最初は黄褐色ですが、黒褐色に変わる頃には全体的に変色や枯死が見られます。
黒腐病の症状がアブラナ科の作物に現れたら、速やかな処置が重要です。ただし黒腐病が発生しやすい時期や病原菌が判明しているため、病気の予防を徹底したほうが効果的です。さらに効果的な予防法には、農薬や消毒剤を使わない方法もあります。
黒腐病の病原菌は土の中に潜んでいるため、黒腐病が発生した土で同じ作物を連作すると再発しやすいです。しかも別のアブラナ科を栽培しても、連作と同じ状況がおこります。そのためアブラナ科の作物は、種類が違っても連作しないのがポイントです。
土の中に潜む黒腐病の病原菌は、雨や水やりによる泥はねでも感染するため、敷き藁やマルチングなどによる泥はね防止は有効です。例年並みの降水量であれば通気性のよい敷き藁がおすすめですが、例年以上に雨が多い場合はマルチングシートが効果的です。
黒腐病は、伝染しないように予防することが最も簡単な対策法です。ただし発症した場合は、二次感染を防ぐためにも早急に治療をする必要があります。おすすめの治療法は栽培方法によっても違いますが、中には農薬を使わない治療法もあります。
株ごと処分する方法は、プランター栽培におすすめの処置方法です。黒腐病の病原菌は土の中にいるため、土壌伝染がおこります。ところがプランター栽培は用土がプランターで隔離されているため、発症した株を引き抜き処分すれば治療完了です。
露地栽培では、発症した株を引き抜いて処分しただけではほとんど効果がありません。病原菌に汚染された土壌は、降雨によって汚染範囲が拡大し、畑全体に病気が蔓延する危険が高いです。このような場合は、黒腐病に効果が期待できる薬剤の使用がおすすめです。
黒腐病の初期症状は土壌に近い葉に現れるため、水に溶かした薬剤は直接散布します。ところが葉の裏側は薬剤が付着しにくいため、展着材とセットで使うのがおすすめです。展着剤を使うと薬剤がしっかりと付着するため、効果も持続しやすいです。
黒腐病は栽培する作物の種類によっても、症状の現れ方や効果のある薬剤の種類が違います。ただし二次感染を抑えるには、薬剤など即効性のある治療が有効です。黒腐病の薬剤は予防剤としても転用できるため、治療と予防のために利用するとよいでしょう。
オリゼメートオンコル粒剤
参考価格: 2,380円
オリゼンメートオンコル粒剤は、育苗期の黒腐病治療におすすめです。少量で病気の原因菌を死滅させるので、幼苗期に黒腐病がおこりやすい作物には、病気の予防効果も期待できます。
おすすめ度 | ★★ |
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タイプ | 粒剤 |
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Zボルドー
参考価格: 946円
Zボルドーは、塩基性硫酸銅を主成分とする薬剤です。黒腐病に限らず、糸状菌性や細菌性の病気の治療にも転用できます。ウリ類やアブラナ科の一部を除けば、発育期の使用も可能です。
おすすめ度 | ★★★★ |
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タイプ | 水和剤 |
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カッパーシン
参考価格: 522円
カッパーシンは、塩基性塩化銅とカスガマイシン塩酸塩を主成分とした薬剤です。対雨性と効果の持続性が高いので、雨が多い時期に発生しやすい黒腐病の治療に適しています。
おすすめ度 | ★★★★ |
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タイプ | 水和剤 |
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商品 | |||
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商品名 | オリゼメートオンコル粒剤 | Zボルドー | カッパーシン |
価格 | 2,380円 | 946円 | 522円 |
タイプ | 粒剤 | 水和剤 | 水和剤 |
商品リンク |
薬剤を散布する際のポイントは?
黒腐病は、台風後に発生しやすいです。そのため台風が過ぎた後は、特に念入りに散布するのがポイントです。
農薬を使わず黒腐病を予防する方法は?
連作を避けることが、黒腐病予防に効果的です。アブラナ科の作物は種類に関係なく黒腐病にかかりやすいので、アブラナ科の連作は避けましょう。