八重咲き椿の種類10選
種類①沖の浪(おきのなみ)
沖の浪は蓮華咲きといわれる花形です。蓮華咲きは八重咲きの一種で、花びらと花びらの間があいており花びらが樋状に中折れし、ゆるく反り返って立体感があります。人気の花形で3~4月に咲く色柄が美しい中~大輪の椿です。
少しフリルのある古典椿
大ぶりで少しフリルのある沖の浪は江戸時代の元禄、文化・文政頃の古典椿の江戸椿です。あわい桃色地に紅色の縦~小絞り(たての小さい線の絞り)と白覆輪(花びらの周辺に白のふちどり)の模様が入る粋な花姿が印象的です。
種類②式部(しきぶ)
花の中心部が小花のような美しさ
式部は唐子咲きという希少な花形で、花の中心部が小花のように美しくまとまった形をしています。おしべ全体、あるいは葯の部分が花びらに変化したものです。式部は中心部の唐子のふちが白色を帯びた絞りで、紅色のコントラストがきれいな椿です。4~7cmの小輪で1~4月ごろに咲きます。
種類③光源氏(ひかるげんじ)
あでやかな光源氏は牡丹咲きの大輪の椿で、淡い紅色地に縦絞りや白覆輪の模様が入っています。洋風な椿に見えますが、日本の古い品種の江戸椿です。3~4月が開花時期です。
牡丹咲きは欧米で大人気の花形
牡丹咲きは、八重咲きの中心部が乱れておしべがいくつかに分割しています。うさぎの耳のように立ち上がり中折れ状になるものや、おしべの一部が立ち上がり小花のような形状のものがあります。欧米で大人気の花形の一つです。
種類④紅荒獅子(べにあらじし)
紅荒獅子は、中~大輪の獅子咲きというめずらしい椿で9~4月に咲きます。特殊な花形ですが、新品種ではなく古くからある江戸椿です。花の中心部は花びらのように大小盛り上がり、不規則な花びらのような中におしべが散在して見え隠れしています。
インパクト抜群の椿
紅荒獅子は勇ましい名前ですが、一見カーネーションにも見える個性的なかわいらしい花形です。赤い鮮烈な紅色がインパクトの品種です。
種類⑤薩摩(さつま)
大輪で豪華なレースのような花びらが魅力的
白い椿の薩摩は、花びらの重なりが美しい千重(せんえ)咲きと呼ばれる花形です。古典品種の江戸椿ですが、名前のとおり鹿児島出身の椿で1973年に発表されました。原木は鹿児島市にあります。大輪で花期は2~4月です。豪華でレースのような花びらが魅力的な薩摩は、大輪のため重量感があり下向きに咲くことも多いようです。
種類⑥崑崙黒(こんろんこく)
崑崙黒は赤い色でも暗紅色で、魅惑的な色とつやがあり高貴な感じも漂います。花期は3~4月で、7~10cmの中輪の大きさの椿です。まれに白班が入ることもあるようです。
中心部が咲き進むと変化
崑崙黒は、中心部が玉のようになる宝珠咲きという咲き方をします。独特の咲き方で、花びらが互いに固く抱き合うように閉じた状態です。咲き進むとだんだんと中心部の玉の部分がほどけて八重咲きのようになります。
種類⑦紫椿(むらさきつばき)
まるでバラのようなレアな花形
まるでバラのような花びらが美しい紫椿は、重ねの少ない千重~列弁咲きです。列弁咲きとは千重咲きのひとつの種類で、花びらの重なりが6つの放射状であったりらせん状の配列になったりするものです。配列がくずれると千重咲きになります。中輪サイズの非常にレアな椿で、4月ごろに咲きます。
種類⑧緋縮緬(ひぢりめん)
関東では八重咲き紅色椿の代表花
緋縮緬は、関東では八重咲き紅色椿の代表花とされています。八重咲きでありながら抱え咲きで日本の古い江戸椿です。凛々しく気品もあり、日本的な美しさも感じさせます。3~4月が花期で中輪の大きさです。中輪の筒しべも印象的でしょう。抱え咲きはとても人気ですが、抱え咲き品種は意外に少なくめずらしい品種です。
種類⑨吹上絞(ふきあげしぼり)
吹上絞は九州の久留米地方の古典椿で、江戸時代からある品種です。白地に濃い紅色の縦~小絞りで、紅白の柄模様は目をひく派手さがあります。大輪の八重咲きで2~4月ごろが花期です。八重咲きは花びらが9枚以上、中心のおしべが正常にあり、さらに整った筒しべであるものがよいとされています。
ひとつの木に突然違う花色が出現しやすい品種
吹上絞は成木になると「枝変わり」といって、ひとつ木のにまったく違う色柄の花が出ることがあります。理由は突然変異によるもので、木の性質の一部が変わるためです。吹上絞に限らず椿全体にもいえることですが、比較的吹上絞は「枝変わり」が出現しやすい品種です。
種類➉雪灯籠(ゆきどうろう)
雪灯籠は、ユキツバキ系にはあまりない早咲きの秋咲き品種(10~4月ごろ)の椿です。小~中輪の大きさで二段咲きの椿です。二段咲き品種は希少品種であり、種類もあまり多くはありません。二段咲きとは中心部が花びら化して立ち上がり、花の中にさらに花があるように盛り上がった咲き方です。
灯籠から洩れる灯火を連想した風情ある椿
真っ白い雪灯籠の中心はわずかにクリーム色で上品な美しさがあります。雪の中、灯籠からぼんやり洩れてくる灯火を連想して付けられた風情あるすてきな名前の椿です。
椿と似ている花との見分け方
山茶花(サザンカ)との見分け方
〈椿と山茶花との見分け方〉
椿 | 山茶花 | |
花形 | 多くが筒状 | 多くが平開状 |
おしべ | 多くが長い筒状 | 筒状にならず短く下まで裂けている |
めしべ | 子房は無毛 | 子房は有毛 |
果実 | 大きい・無毛 | 小さい・有毛 |
葉 | 大きい・無毛・つやがある | 小さい・主脈、葉柄は有毛・つやがない |
若枝 | 太い・無毛 | 細い・有毛 |
香り | ほとんどなし | あり |
開花の時期 | おおよそ春型 | おおよそ秋型 |
花の散りかた | 花首から落花 | 花びらが1枚ずつ落花 |
※子房とは、受粉して肥大すると果実になるところです。
ボタニ子
細かく見てみると、つばきとサザンカには違いがあるのよ。
椿と山茶花は同じ「ツバキ科/ツバキ属(カメリア属)」であり、非常に似ていて見た目がよく似ています。見分け方は2つあります。ひとつは開花の時期です。山茶花は11月ごろから花を咲かせます。一方、椿は3月ごろから花を咲かせます。もうひとつの違いは花が終わったときの姿です。山茶花ははらはらと1枚ずつ散っていくのに対し、椿は1輪丸ごとボテッと落ちることで区別がつきます。
ボタ爺
中には早咲き品種の椿やほかにも「散り椿」といって、椿でも山茶花のように1枚ずつ散っていくものも例外的にあるからの、注意が必要じゃ。
寒椿との見分け方
寒椿とは
- ①寒い季節に咲く椿
- ②サザンカの品種で、ツバキ科/ツバキ属/カンツバキ系
ボタ爺
学術的には定義されてはおらんが②の区分「カンツバキ系」のことを指すことが多いんじゃ。名前は椿じゃが、早い話がサザンカの仲間じゃの。
「カンツバキ系」とは「獅子頭」という品種の、後の時代の獅子頭一群の品種のことです。開花の時期が遅く、冬咲きの八重咲きが多いとされています。関東地方では「獅子頭」のことを寒椿と呼びます。
ボタニ子
寒椿ってむずかしいのね。関東地方では1933年以降に「獅子頭」のことを寒椿って呼ぶようになったんだって。
寒椿と椿の見分け方はサザンカと同じ
寒椿は交配種も多いため、サザンカとの区別は明確にはできないとされています。したがって、見分け方はサザンカと同じです。花の時期が寒椿のほうが早く秋ごろ、椿が春ごろと開花の時期に違いがあります。花の終わりは椿が1輪そのまま落ちるのに対し、寒椿は、はらはらと花びらが1枚ずつ落花します。
椿の種類は多種多様!
椿の品種は実に数が多く、植物図鑑の品種一覧を見て驚く人もいるでしょう。新品種も日々誕生していますが、江戸椿などの古典品種がいまだ高い人気を誇ります。一見新品種とまちがえそうな希少品種もあるため、探してみるのも楽しいですね。椿は桜と違い一気に満開になることはありません。ゆっくり椿を愛でるのも風流ではないでしょうか。
ボタニ子
つばきの品種を一覧で見たけど、ほんと多種多様なのね。わたしも植物園へつばきをさがしに出かけてみようかしら。
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出典:テイクムーヴ