ズッキーニの結実には人工受粉がおすすめ
ズッキーニは、アメリカ南部やメキシコ北部が原産の、ウリ科の野菜です。まだ熟していない果実や、開花する前のズッキーニの花が食用にされます。ズッキーニは、かぼちゃやきゅうりなどのウリ科の野菜と異なり、ツルが伸びず、横に広がらない特徴をもっています。そのため、家庭菜園での栽培場所が比較的小スペースですみ、ベランダ栽培でも人気です。
ボタニ子
人工受粉とは
人工受粉とは、人間の手により雄花の花粉を雌花につけることです。虫や風邪が媒介する自然による受粉は、失敗しやすいのがデメリットです。特に虫が訪れづらいマンションなどの高い場所での栽培や、栽培する苗が少ないと、自然受粉は失敗する確率が高まります。また、畑など広い場所で栽培しても、雄花がない株が多く育つこともあります。家庭菜園では、人工受粉で結実させるのがおすすめです。
人の手で受粉をしなくても実はできる
ズッキーニは、受粉しなくても結実します。ただし、ズッキーニに人工授粉をした場合としなかった場合を比較すると、味はそこまで変わらないものの、受粉しなかった実は小さいです。味のよい実を収穫するためには、人工受粉は必須といえるでしょう。
ボタニ子
きゅうりも、受粉しなくても結実するの。これを「単為結果」というよ。
ボタ爺
ズッキーニと違って、味も大きさも受粉したきゅうりと変わらんぞ!
ズッキーニの人工受粉の方法
手順①雄花の摘み取りと処理
雄花を摘み取った後、雄花の花粉を雌花につけやすくするために雄花の花びらをすべて切り取り、雄しべをむき出しにします。雄しべの先の黄色い部分に、花粉が集まっています。成長しきっていない雄しべを人工受粉に使っても、うまくいきません。まずは雄しべに指先で触れてみて、黄色い花粉が付着するか確認してください。
雄花と雌花の見分け方
ズッキーニは雌雄同株であるため、同じ株に雌花と雄花が開花します。雌雄の花を見分ける方法は、花のつけ根をみることです。雄花は花のつけ根が膨らんでいませんが、雌花は花のつけ根が膨らんでいます。
手順②雌花への花粉の擦り付け
花びらをすべて切り取った雄花を、雌花の柱頭に近づけて、やさしく花粉を置いてください。成功すれば、受粉後から数日たつと収穫可能なサイズになります。手で力ずくでもぐのではなくナイフなどを使って収穫すると、株へのダメージが少なくなり、次の果実の育成につながります。
ボタニ子
綿棒や細い筆で雄花から花粉を取り、それを雌花につけるのもおすすめだよ!
ズッキーニの人工受粉のコツ
コツ①タイミングは午前中
雌花が咲くのは、早朝の短い時間です。人工授粉のベストタイミングは、午前中です。晴れている日の10時ごろまでを目安に、同日に開花した新鮮な雄花と雌花を選びましょう。素早くかつ丁寧に作業してください。人工受粉のタイミングは限られているため、前日からチェックしておくと安心です。
コツ➁ほかのウリ科の花粉を使う
育てているズッキーニの株に、雄花がつかないケースがあります。もし家庭菜園で、ズッキーニ以外にもウリ科の仲間を育てていたら、その仲間の花粉を代用する方法を試しましょう。実が似ていないカボチャの花粉でも問題ありません。綿棒や細い筆で仲間の花から花粉を採取し、ズッキーニの雌花に擦り付けるだけです。
ズッキーニの受粉後のトラブル
続けて収穫できなくなった
ズッキーニは、熟していない果実を次々に収穫することから、肥料が不足しやすい特徴があります。そのため、はじめのころは順調に収穫できても、時間が経つにつれて果実がうまくつかなってしまう可能性が高いです。実が充実しなくなった場合は、肥料切れを疑いましょう。収穫が始まったら、2週間に1回程度で追肥をしてください。
追肥する肥料は、「ぼかし肥」がおすすめです。ぼかし肥とは、有機肥料(油かすや米ぬかなど)に土やモミガラなどを混ぜて作る肥料であり、土に肥料分を混ぜてぼかす(薄める)ことが由来です。また、有機質を混ぜるだけでなく微生物による分解も含まれるため、一般的な肥料と比べると効果が長続きします。
マイガーデンベジフル
マイガーデン ベジフル
参考価格: 546円
配合肥料であれば、バランスのとれた配合肥料を使いましょう。例えば「マイガーデンベジフル」は有機質がブレンドされており、作物に栄養分を効率よく、ゆっくりと吸収させます。また、土壌の保水性など、土に活力を与える作用がある腐植酸も混ぜられているため、使いやすくておすすめです。
実が腐ってきた
人工受粉後に、実が腐る場合もあります。受粉自体は失敗していなくても、栽培場所が適していないと実は腐ってしまいます。原因は、水はけです。ズッキーニは水はけのよい場所を好むため、栽培環境を見直してください。プランター栽培なら土質や高温多湿になっていないか、畑なら畝が低すぎないかを確認してみましょう。
病気にも注意!
高温多湿の環境で起こりやすいのが「うどん粉病」です。うどん粉病の初期症状は、薄っすらと白色の綿のようなカビがポツポツと発生して、病気が進行すると白いカビが葉の表面全体を覆うように生えます。この病気を放置すると、ズッキーニの実が肥大しないだけでなく、家庭菜園で育てている作物に伝染し、全滅させてしまうかもしれません。異常が出た葉はすぐに切り取って処分しましょう。
ズッキーニのおすすめの品種
ズッキーニにはたくさんの栽培品種があります。どれも基本的な育て方、人の手による受粉の方法は変わりません。好みの色や形の品種を育ててみましょう。
ダイナー(タキイ種苗)
ダイナー
参考価格: 316円
「ダイナー」の果実は、濃緑の果皮に霜降り状の斑点がはいります。本品種は受粉後、4~6日が収穫のタイミングです。果径4cm、長さ20cmくらいを目安にしましょう。本品種の特徴は、たくさんの雌花が開くため収量が多く、また栽培面積をとらないことから家庭菜園にも最適という点です。
ゴールディー・ボー(神田育成農場)
ゴールディ・ボー
参考価格: 440円
「ゴールディー・ボー」の果実は、緑色ではなく、つややかな黄金色です。繊細な印象を与えますが、病気に強い点が特徴です。料理で見栄えがする事柄注目を集めています。受粉後、20cmくらいに成長したら収穫してください。
パリーノ・ネロ(トキタ種苗)
パリーノ・ネロ
参考価格: 363円
「パリーノ・ネロ」の果実は、一般的な長細い形ではなく、濃い緑色の丸形です。受粉後、4日ほどたつと、直径およそ7cmのころんとした丸い実がなります。その大きさのタイミングで収穫してください。パリーノネロは雌花、雄花が同じくらい開花するため、たくさんの果実の収穫が可能です。
グリーンボート1号(カネコ種苗)
グリーンボート1号
参考価格: 330円
「グリーンボート1号」の果実は、円筒形で濃い緑色です。なじみのある実の形でしょう。受粉後、およそ15〜20cmの長さで収穫できます。一般的なズッキーニは寒さに弱いですが、本品種は寒さに強いため、低温時期から栽培可能です。また、雌花が安定的に開花するため、たくさんの実の収穫が可能です。モザイクウイルスやうどんこ病など、植物の病気に対して耐性があることも魅力といえるでしょう。
人工受粉を成功させてズッキーニを食べよう!
ズッキーニは、栽培の場所をそれほど取らないため、家庭菜園向きの野菜です。一方で、確実に大きな実をつけるためには、人工受粉の手間が必要です。人工受粉は難しくはありません。ぜひチャレンジして、大きく育った実を食卓で味わってみましょう。
料理でも使い勝手がいいことも、家庭菜園で人気の理由のひとつだよ!