世界の殿堂入りをしているバラがある
バラは、古くから品種改良されてきました。近年では3万種とも10万種ともいわれ、もはや数えきれないほど品種が豊富です。そんなたくさんの品種の中には、世界バラ会議で選出された「殿堂入りのバラ」があります。
世界バラ会議とは?
世界バラ会議は3年に一度開かれます。開催しているのは、世界37カ国(2021年現在)が加盟している世界バラ会連合です。世界バラ会議が開催されるのは、バラと縁が深い国です。日本でも2006年に大阪市で開催され、また2025年には広島県の福山市で開催されます。これまでに1976年第3回世界バラ会議選出の「ピース」から2018年の「ノックアウト」まで17種のバラが殿堂入りしています。
殿堂入りのバラの選出基準は?
殿堂入りのバラは、「世界中のどの環境でも育てやすい」「多くの国で長く愛されている」「人類普遍の美意識」により選出されます。簡単にいうと、「育てやすくて、みんなから愛されて、だれもが美しいと思うバラ」です。
ボタニ子
選出されるバラに強健種が多いのは、選考基準にあるからなんだね!
殿堂入りのバラ一覧
2018年までの世界バラ会議で選出された「殿堂入りのバラ」の一覧表です。第1回と第2回の世界バラ会議では、殿堂入りのバラの選出はありません。第3回から第18回までに17品種のバラが選出されています。(第14回大阪大会のみ2品種の選出)
殿堂入りの年 | 世界バラ会議開催地 | 品種名 |
---|---|---|
第3回1976年 | オックスフォード大会(イギリス) | ピース |
第4回1979年 | プレトリア大会(南アフリカ) | クイーン エリザベス |
第5回1981年 | エルサレム大会(イスラエル) | ドゥフトボルケ |
第6回1983年 | バーデンバーデン大会(ドイツ) | アイスバーグ |
第7回1985年 | トロント大会(カナダ) | ダブル デライト |
第8回1988年 | シドニー大会(オーストラリア) | パパ メイアン |
第9回1991年 | ベルファースト大会(イギリス) | パスカリ |
第10回1994年 | クライストチャーチ大会(ニュージーランド) | ジャスト・ジョーイ |
第11回1997年 | べネルクス3国大会 | ニュードーン |
第12回2000年 | ヒューストン大会(アメリカ合衆国) | イングリッド・バーグマン |
第13回2003年 | グラスゴー大会(イギリス) | ボニカ’82 |
第14回2006年 | 大阪大会(日本) | ピエール ドゥ ロンサール エリナ |
第15回2009年 | バンクーバー大会(カナダ) | グラハム・トーマス |
第16回2012年 | ヨハネスブルク大会(南アフリカ) | サリーホームズ |
第17回2015年 | リヨン大会(フランス) | カクテル |
第18回2018年 | コペンハーゲン大会(デンマーク) | ノックアウト |
ボタニ子
一覧を見てみると、イギリスで開催されていることが多いのね。
ボタ爺
世界バラ会連合は、本拠地がイギリスのロンドンじゃ。本拠地だから多いのかもしれんのう。
殿堂入りのバラの品種【①~⑤】
①ピース
品種名 | ピース(Peace) |
系統 | HT(ハイブリッド・ティー) |
作出国 | フランス |
作出者 | F・mailand |
発表年 | 1945年 |
花色 | 黄色に桃の覆輪 |
花形 | 半剣弁高芯咲、大輪(13~16cm) |
樹高 | 1.2m |
樹形 | 横張り性 |
芳香 | 微香 |
開花性 | 四季咲き |
ピースは世界一有名なバラ
世界バラ会議で最初の殿堂入りのバラとして選出された「ピース」は、第二次世界大戦中にフランスのフランシス・メイアン氏が作出したバラです。1945年にアメリカの種苗会社よりベルリン陥落を記念して「ピース」という名前で発売されました。ピースは花付きがよいうえに強健で育てやすく、しかも巨大輪のため評価の高い品種です。品種改良の交配親としてもよく利用され多くの品種を生み出し、「ピースファミリー」と呼ばれています。
ボタニ子
ピースの子どもには「ラブ&ピース」や「プリンセス・ドゥ・モナコ」などがあるの。どれも有名なバラだよ。
②クイーン エリザベス
品種名 | クイーンエリザベス(Queen Elizabeth) |
系統 | Gr(グランデフローラ) |
作出国 | アメリカ |
作出者 | Dr. Walter Lammerts |
作出年 | 1954年 |
花色 | 明るいピンク |
花形 | 丸弁の平咲き、大輪(12cm) |
樹高 | 1.5~1.8m |
樹形 | 半直立性 |
芳香 | 中香 |
開花性 | 四季咲き |
手間のかからない強健種のバラ
「クイーンエリザベス」は、イギリスの現エリザベス女王の戴冠にちなんで命名された大輪のバラです。丈夫で育てやすく強健種で有名です。耐暑性、耐寒性、耐病性があり樹勢も強く、初心者向けのバラでもあります。花付きがよく房咲きのため、たくさんの花が楽しめます。
③ドゥフトボルケ
品種名 | ドゥフトボルケ(Duftwolke) |
系統 | HT(ハイブリッド・ティー) |
作出国 | ドイツ |
作出者 | Mathias Tantau |
作出年 | 1963年 |
花色 | 濃朱色 |
花形 | 半剣弁高芯咲き(10cm) |
樹高 | 1m~1.3m |
樹形 | 半直立性 |
芳香 | 強香 |
開花性 | 四季咲き |
ドゥフトボルケは香りの銘花
ドゥフトボルケは、別名「フレグランドクラウド」と呼ばれるほどフルーティーな強い香りが特徴です。花は咲き進むにつれて赤色が濃くなります。花付き・花持ちがよく、コンパクトにまとまるので鉢植えにも最適です。
④アイスバーグ
品種名 | アイスバーグ(Iceberg) |
系統 | FL(フロリバンダ) |
作出国 | ドイツ |
作出者 | R.Kordes |
作出年 | 1958年 |
花色 | 白色 |
花形 | 半八重咲(8cm) |
樹高 | 1.0m前後 |
樹形 | 半横張り性 |
芳香 | 微香 |
開花性 | 四季咲き |
アイスバーグは純白のブーケ
アイスバーグとは氷山という意味です。「シュネービッチェン(白雪姫)」という別名があります。純白の美しい花は、房咲きでたくさんの花を咲かせ、一枝でブーケのようになります。耐陰性・耐寒性・耐暑性・耐病性があり大変育てやすい強健種です。春から初冬まで繰り返し咲き続けます。
⑤ダブル デライト
品種名 | ダブル デライト Double Delight |
系統 | HT(ハイブリッド・ティー) |
作出国 | アメリカ |
作出者 | Swim,H.C&Ellis,A.E |
作出年 | 1977年 |
花色 | クリーム色に紅色の覆輪 |
花形 | 丸弁高芯咲き(12cm) |
樹高 | 1.5m |
樹形 | 横張り性 |
芳香 | 強香 |
開花性 | 四季咲き |
2つの喜びは色と香り
「ダブル デライト」とは「二重の喜び」という意味です。一つは美しい花色、もう一つは強い香りです。クリーム色に赤の覆輪の美しさ、フルーティーな強い香りを兼ね備えて注目を集めています。強健種で、育てやすい大輪のバラです。
出典:筆者撮影