サヤエンドウの種類と「絹さや」
「サヤエンドウ」とは
エンドウのうち、サヤを食べるものを総称して「サヤエンドウ」と呼び、「絹さや」のほか「スナップエンドウ」「オランダエンドウ」「砂糖エンドウ」などがあります。
「絹さや」と「サヤエンドウ」
同じサヤエンドウでも各々に特徴があり、「絹さや」は豆が大きくなる前のサヤを食べるのに適した品種です。絹さやを成長させてもスナップエンドウはできませんし、同様に、スナップエンドウを早採りしても絹さやにはなりません。「絹さや」の栽培には「白花絹さや」「絹小町」など絹さやの品種を選びます。
「つるあり絹さや」と「つるなし絹さや」の違い
「つるあり」が草丈2m近くまで成長するのに対して、「つるなし」は草丈50~100cmほどのこじんまりとした株となります。株の大きさに着目、家庭菜園の大きさなどの栽培事情に合わせて選択すればよいでしょう。プランターで栽培でしたら、「つるなし」がおすすめですよね。
絹さやの育て方① 植え方・土作り
絹さやは、秋に種をまく「秋まき」が最も一般的な栽培法です。直播きでも育苗で定植してもどちらもで栽培できますが、種からの育苗は少し難易度が高いので、初心者であれば、市販の苗から育てる方が失敗も少なく安心です。
種まき・苗の植え付け時期
秋が深まった10月中旬から11月上旬に種まきし、本葉が3~4枚以下の小さな苗を11月下旬から12月に植え付けます。植え付け時期に苗が大きすぎても小さすぎても冷害を受け易く、枯れる原因になります。植え付け間隔は、地植えで30cm程度、プランターで15~20cmです。
用土
絹さやは酸性土壌を嫌うので、苦土石灰(1㎡あたり苦土石灰150g)で中和し、元肥をすき込み1週間程寝かせます。元肥はゆっくり長く効く堆肥と緩効性化成肥料を1㎡あたり堆肥2kg、化成肥料100g程度与えます。また、植え付けの注意点として、絹さやは、連作障害があるので4~5年栽培間隔を取る必要があります。
プランターの場合は?
プランターの場合は、野菜用培養土が初心者には失敗もなく便利です。自分で配合場合は赤玉土(小粒):腐葉土:バーミキュライト=6:3:1が目安です。
絹さやの育て方② 種まき
育苗ポットの場合
種を一晩水に浸けてから1つのポットに数個、等間隔に2cmほどの深さに埋め、水を充分与えます。日陰で土が乾かないよう管理すると1週間ほどで発芽します。本葉が3~4枚まで育て一番調子のよい苗を残し間引いてから定植します。
直まきの場合
数個ずつ等間隔に点まきするか、4~5cm間隔の筋まきで3cm程度の深さに埋め、水を充分与えます。種まき後は、発芽するまでは土が乾かないよう管理します。苗が育ったら間引いて株の間隔を整えます。種は冷暗所保管で2~3年は使えますので、使い切る必要はありません。
絹さやの育て方③ 苗の植え付け
絹さやの苗を植え付ける時は、大きめの穴を掘り、根鉢を崩さないよう丁寧にポットから苗を取り出し植え付け、周りの土を少し根元に寄せ、タップリと水を与えます。乾燥を好むので地植えでは、高さ10cm程度の畝(ウネ)を作って植えます。
「春まき」の種まき、苗の植え付け
つるなし品種は収穫までの期間が比較的短いので、極寒期を避け2月ごろに種まきをして3~4月に苗を植える「春まき」の育て方もあります。秋に種まきしたものよりは若干収穫が遅れますが、夏前には収穫できます。時期になると春まき用の種や苗が流通しますので、それを選びます。ちなみに、温暖な地域では夏に種をまいて寒くなる前に収穫する「夏まき」も行われています。
絹さやの育て方④ 冬の手入れ
冬の時期はほとんど手入れは不要で、敷き藁程度の簡便な保温で容易に越冬できます。地上には大きな変化は見られませんが、地中では春に向け根が張っていきます。
防寒・霜対策
寒さには強い植物ですが、霜に当たると枯れることがあります。苗を敷き藁やもみ殻で覆って防寒します。霜柱が立ち根が浮いたままにすると春に立ち枯れ病(春先に黄変して枯れる)になることがあります。寒い朝に霜柱が立っていたら根本を軽く押さえて霜柱を潰します。
プランターの場合は?
プランターの場合は、北風が避けられる日だまりに移動します。移動が難しければ寒冷紗などで霜よけすると安心です。敷き藁を敷くのも有効です。
水やり・施肥
湿潤を嫌うので乾燥気味に育てるのが基本です。冬の間は、直植えであれば水やりを控えます。プランターの場合は表面が完全に乾いたら暖かい昼間に充分水を与え、後は控えます。冬の間は追肥も不要ですので、ほとんど手入れなしで冬を越すことができます。
次のページでは春以降の手入れを紹介するよ!
絹さやの育て方⑤ 春以降の管理
寒さが和らぎ、暖かい日が現れだす時期になると苗は急速に成長し始めるので、水やりや支柱立てといった収穫に向けた手入れを始めます。3月下旬には赤や白の可愛い花が咲き始めます。収穫も間近です。
水やり・施肥
花が咲く前の2~3月に1回目の追肥を、花が咲いたら2回目の追肥をします。追肥はこの2回で充分です。ゆっくり長く効く緩効性化成肥料を株と株の間に1ヶ所5g程度をまき、少し土と混ぜ根元に寄せてやります。枝葉が増え、花が咲き、サヤが付くと水の消費が増えてくるので、水やりを始め徐々に頻度を増やしていきます。
支柱・栽培ネットの立て方
立て方にきまりはありませんが、成長が進むと重量も増え風の影響も受けるので頑丈に作ります。支柱は草丈ほどの高さで30cm間隔を目安にしっかり打ち込んで横木添え補強します。支柱のみでは充分に誘引できないので栽培ネットを取り付けます。栽培ネットは100均にもありますので利用するとよいでしょう。絹さやは絡みつく力が弱いので支柱や栽培ネットに紐で軽く結び付けます。
絹さやの育て方⑥ 収穫
開花後2週間位で収穫が始まり、次つぎと初夏まで収穫できます。サヤの大きさ5〜6cm、豆が膨らむ前が採り時です。大きくすると味も悪くなりますし、株の生育も急激に衰えますので、こまめに収穫します。引きちぎったりせず、サヤの根元付近からハサミで切りとります。濡れた脱脂綿と密封袋に入れ冷蔵庫で保管すれば数日は鮮度がたもてますし、サッと茹で冷凍すれば長く保存できます。
絹さやの育て方⑦ 病虫害対策
絹さやは涼しい季節に栽培するので、夏の作物と比較して病虫害が少なく、初心者にも育てやすい作物です。
病害
サヤエンドウの代表的な病害に「ウドンコ病」があります。予防は風通をよくすることが一番ですが、窒素分の多い肥料を控えることも有効です。もともとマメ科の植物は空気中の窒素を取り込むことができ、根粒菌持っていますので、窒素分の多い肥料は避けます。春先に急に黄変して枯れる「立ち枯れ病」がありますが、多くは連作障害です。
虫害
ハモグリバエの幼虫、ウラナミシジミの幼虫、ヨトウムシ(ヨトウガの幼虫)などのイモムシの他、アブラムシが発生することがあります。家庭菜園で無農薬栽培を目指すのであれば捕殺します。捕殺の難しいアブラムシも薄めた牛乳の散布である程度駆除できることは良く知られていますが、被害が拡大するようなら、野菜にも使用できる殺虫剤もありますので早目に駆除します。
まとめ
絹さやは、花も実も春の到来を実感させてくれる家庭菜園で作りたい野菜の代表格ではないでしょうか。苗の植え時と、過湿にさえ注意すれば、初心者でも上手く栽培できます。秋に種をまき、支柱の立て方なども独自に工夫して、翌春の花や収穫までじっくり育てるのも楽しいものですし、春まき絹さやの苗をプランター栽培で、手軽に収穫を楽しむのも一つのやり方です。好みに合わせて絹さやを栽培してみませんか。
出典:筆者撮影