はじめに
鮮やかな緑色と食感が爽やかな絹さや。特に旬の時期には、みずみずしい季節感と共に味わうことができます。でも、絹さやには実がほとんどありません。一方で、スナップエンドウのように形は似ていても実がしっかりと入っているものもあります。これらはどんな関係なのでしょうか。絹さやを軸に解説していきます。
絹さやの概要
絹さやは、エンドウを若いさやの状態で収穫した時の呼び名です。今は季節を問わず1年中店頭に並んでいますが、本来の旬の時期は4月~6月頃です。「絹さや」という名称は、若いさやが擦れあう時に衣擦れのような音を立てるので名付けられたとのこと。また、一般的な絹さやのほかに「大型絹さや」という品種があり、さやが10cm以上の大きさになります。
さやの食用化の歴史
エンドウの若いさやを食用にするようになったのは、13世紀のフランスが始まりで、それまでは成熟した実(豆)を食用としていたとのことです。日本では江戸時代にさやごと食べる習慣が始まりましたが、広く普及したのは明治時代になってから。欧米から優れた品種が輸入され、全国的に広まっていきました。
エンドウとは?
絹さやはエンドウの若い状態のものを指すわけですが、では、エンドウそのものはどんな特徴を持っているのでしょうか。もともとは、古代オリエント地方で土壌の肥沃化などに利用されていたという原種が、品種改良を重ねて食用化してきたと言われています。
エンドウの基本情報
学名 | Pisum sativum L. |
和名 | 豌豆 |
科名 | マメ科 |
属名 | エンドウ属 |
原産地 | 中央アジア、中近東、地中海沿岸地域 |
性状 | つる性の1年草 |
エンドウの種類
エンドウは大きく2種類に分けられます。さやの柔らかい軟莢種(なんきょうしゅ)と、硬い硬莢種(こうきょうしゅ)で、それによって利用のしかたや品種が異なってきました。それぞれについて解説しましょう。
さやごと食べる「軟莢種」
軟莢種はさやが柔らかく、さやごと食べられる種類です。絹さやもこの軟莢種に分類されます。他に代表的な品種としては、さやえんどう、スナップえんどう、うすいえんどう、砂糖えんどうなどが挙げられます。また、軟莢種に分類されていますが豆だけを食べる「みえんどう」という種類があり、その代表がグリーンピースです。
実だけを食べる「硬莢種」
硬莢種はさやが硬い種類で、完熟した実(豆)だけを食用にする種類です。通常、さやも実も乾燥した状態になってから収穫します。総称はえんどう豆で、日本で利用されている代表的な品種は、青えんどうと赤えんどうです。他にも白えんどうやウィンターピーといった品種もあります。
花の特徴
エンドウの花には白花種と紅花種の2種類があり、軟莢種は白花が多く、硬莢種は紅花です。5枚の花弁のうち最も大きい花弁が、蝶が翅を広げたような形をしているところから蝶形花と呼ばれています。これはマメ科の花に共通する形状です。
栽培に適した季節
エンドウは涼しい気候を好むため、10月中旬~11月上旬の秋まきが一般的です。ただし、北海道や東北北部などの寒冷地では、春まきが行われています。発芽の地温は20℃前後で、生育の適温は15~20℃。酸性土壌や湿度が高い土壌に弱い性質を持っています。また、連作を嫌うため、一度栽培した場所には3~4年はエンドウの植え付けを避けなければなりません。
収穫時期
4~5月に開花し、4月中旬~6月上旬が収穫時期になります。花の季節には目にした方も多いのではないでしょうか。種まきから約180日が収穫時期の目安です。さやを食用とする場合は開花から10~15日、実を食用とする場合は開花から1ヵ月前後が収穫の適期とされています。
絹さやとさやえんどうの違い
さまざまな品種があるエンドウですが、ここからはそれぞれの.違いについて見ていきましょう。まずは絹さやとさやえんどうです。絹さやは「キヌサヤエンドウ」とも呼ばれ、さやえんどうと同じものです。つまり、エンドウをさやごと食べる場合の総称が「さやえんどう」で、「絹さや」は主に関東で、「さやえんどう」は主に関西で使われることが多い呼び名と言われています。
甘みの強い砂糖えんどう
一般的なさやえんどうよりも甘味が強い品種として人気があるのが「砂糖えんどう」です。その味から砂糖えんどうとの名前がついたと言われ、砂糖さや、サトウサヤエンドウとも呼ばれています。絹さやよりも豆が大きく、全体にさやがふっくらとしているのが特徴です。
絹さやとスナップエンドウの違い
スナップエンドウは絹さやと同じさやえんどうの一種ですが、豆が成熟して大きくなってもさやが硬くならないのが特徴です。豆もさやも食用にできるため、グリーンピースのような性質も兼ね備えています。また、「スナックエンドウ」という名前で売られていることもありますが、スナップエンドウと同じものです。
絹さやとグリーンピースの違い
グリーンピースはさやえんどうの豆が完熟前の状態で収穫したもので、豆だけを食べます。このように、完熟前の豆を食用にする場合を「みえんどう」と呼びます。絹さやがエンドウの最も若い状態で、グリーンピースは成長が進んだみえんどうの段階です。みえんどうには、豆に糖質が多い「糖質型」、でんぷんが多い「でんぷん型」、その中間の「中間型」があります。
グリーンピースの改良種・うすいえんどう
グリーンピースを改良した品種として、うすいえんどうがあります。グリーンピース特有の青臭さを抑え、大粒でホクホクとした食感や上品な甘さが特徴です。うすいえんどうの名称は、皮が薄いため「薄い豌豆」と思われがちですが、産地に由来する「碓井豌豆」が正解。グリーンピースの青臭さが苦手という人にも親しみやすい品種です。
絹さやとえんどう豆の違い
えんどう豆は、エンドウの豆が完熟した状態を指します。豆は乾燥させて利用し、主な種類としては豆が緑色の青えんどうと、赤褐色の赤えんどうがあります。日本では古くからさまざまな用途に使われてきましたが、さやえんどうが野菜として使われているのに対し、えんどう豆は加工食品としての利用が多くなっています。
えんどう豆の利用法
えんどう豆がどんな食品に加工されているのかをご紹介しましょう。青えんどうはうぐいす餡、煮豆、甘納豆などの甘味系やスナック菓子などに。赤えんどうはみつ豆や豆大福に入っている豆といえばわかりやすいでしょう。意外なところでは、第三のビールや大豆アレルギー用の代替醤油の原料としても利用されています。
絹さやとさやいんげんの違い
絹さやと同じくらいポピュラーな豆の品種にさやいんげんがあります。これはインゲンマメの若いさやの状態を指し、軟莢種に分類されます。さやえんどうと同様、さやごと食べるのでさやいんげんの名前がつきました。エンドウとは別の種類ですが、やはり収穫時期によって呼び名や利用方法が異なるものです。
成熟するといんげん豆に
さやいんげんの実が成熟したものがいんげん豆です。えんどう豆と同じように乾燥させ、加工食品として餡や煮豆、また煮込み料理などに利用されています。一方、エンドウとインゲンマメの大きな違いは、インゲンマメには毒性があり、生や加熱が不十分な状態で食べると中毒症状を引き起こす点にあるでしょう。
まとめ
エンドウは収穫時期によって絹さややグリーンピース、えんどう豆など呼び名が変わるということ、おわかりいただけたでしょうか。また、エンドウの中でさやごと食べる品種はすべて「さやえんどう」で、スナップエンドウや砂糖えんどうもさやえんどうなのです。いずれにしても、食卓に彩りを添えてくれるさまざまなエンドウの品種を楽しみたいですね。
出典:写真AC