軟腐病は、伝染すると作物全体が腐敗する病気です。伝染する作物の種類も多く、家庭菜園で栽培する野菜であれば、ほぼすべての野菜に軟腐病伝染のリスクがあります。さらに、伝染すると治療が難しい病気なので、発生しやすい環境と初期症状の特徴を知ることが重要です。
軟腐病の症状は、葉だけでなく茎にもあらわれます。葉の症状は軟腐病の代表的な症状で、水に浸かってどろどろとした状態で腐敗するのが特徴です。茎の場合は、内部に暗褐色の病斑があらわれ、病斑が大きくなるにつれて茎の表面も病斑で変色し腐敗します。
軟腐病を発症すると、腐敗するだけでなく強烈な悪臭も症状としておこります。さらに原因菌に感染した作物は収穫後も症状が進行するため、冷蔵庫で保存していた野菜が軟腐病が原因で腐ることも多いです。また悪臭は腐敗した部分だけでなく、腐敗によって染み出た液体にもおこります。
軟腐病は、25~30℃の環境下で大量繁殖する細菌です。軟腐病の原因細菌は、主に作物の葉から伝染します。菌は繁殖にともないながら組織の内部に達し、茎や根の内側から作物全体を腐敗させます。さらに高温多湿の環境は腐敗の進行を早めるため、栽培環境も病気が発生する原因の1つです。
軟腐病は特定の作物にみられる病気ではなく、さまざまな作物や植物に等しく発生のリスクがあります。また軟腐病の原因菌は、カビ菌ではなく細菌です。そのため軟腐病の原因細菌に伝染すると、症状の進行が早く重症化しやすい傾向があります。
軟腐病の原因細菌は、高温多湿の環境を好みます。原因細菌は土中に潜んでいるため、細菌に汚染された土壌からの伝染が多いです。さらに害虫の食害で傷ついた部分からも細菌は侵入するため、食害を受けやすい作物の場合は、害虫の発生時期と病気の発生時期が重なります。
軟腐病は、アブラナ科の作物におこりやすい病気です。特に被害が目立つのはハクサイ・キャベツ・ネギですが、ナス科の作物の中にも軟腐病にかかりやすい種類があります。さらに野菜だけでなく、キク科の花卉類も軟腐病にかかりやすいです。
軟腐病は発症すると治療が難しい病気です。特定の作物におこる病気ではなく、ガーデニングや家庭菜園で人気の野菜や植物は、ほとんどの種類で軟腐病にかかる可能性があります。そのため栽培者にとって軟腐病は厄介な病気といわれ、中でもアブラナ科の葉野菜とネギは、発症しやすく被害も大きいです。
ハクサイは、アブラナ科の中でも特に軟腐病がおこりやすいです。幼苗期に発症することは少ないですが、生育中期~収穫期は病気が発生しやすく、短期間で伝染範囲が拡大します。病気の原因細菌は土中に潜むため、土に触れる外葉や中心部(芯)に初期症状が出やすいです。
ハクサイ軟腐病の初期症状は、原因細菌が潜む土中または地面に接している部分に現れるのが特徴です。初期症状の段階で治療すれば被害は少ないですが、放置すれば症状は作物の上部まで達します。さらに症状が進行すると、葉の表面だけでなく茎も伝染し、軟化腐敗するため注意が必要です。
アブラナ科のキャベツも、軟腐病にかかりやすい作物です。キャベツ軟腐病が発生する理由は、ハクサイの発生原因と基本的に変わりません。ただしキャベツの葉は害虫に食べられやすいため、食害で傷ついた部分から伝染することも多いです。
キャベツはハクサイよりも葉が硬いため、軟腐病の初期症状は、葉よりも茎の根元に多いのが特徴です。茎の内部の初期症状は表面からでは確認できないため、病気が進行するまで気がつかないこともあります。ただし軟腐病は初期症状でも異臭をともなうので、臭いから病気を発見することは可能です。
ネギの軟腐病の初期症状は、葉・茎・根のすべてに現れます。そのため症状を発見した時点で治療を始めても、治療の効果を確認する前にすべてが腐ってしまうことも多いです。また、ネギ科の植物はいずれも軟腐病にかかりやすいため、タマネギも軟腐病が発生しやすい作物に含まれます。
ネギ軟腐病の初期症状は、葉の変色です。病気による変色は、症状の進行によって「黄褐色→灰白色→淡褐色」となります。淡褐色に変色する頃には、軟腐病の原因細菌がりん茎部に達している可能性が高いです。ネギのりん茎部が細菌に伝染すると、全体が一気に腐敗します。
軟腐病は症状が現れてから治療しても、完治が難しい病気です。伝染すると作物が腐敗するだけでなく、異様な悪臭も発生します。そんな軟腐病の対策には、病気の予防が効果的です。農薬を使って予防する方法もありますが、栽培や管理を工夫する予防法もあります。
軟腐病の病原菌は土中に潜んでいるため、雨や水やりによる泥はねを防ぐと予防に効果があります。梅雨~夏の降水量が少ない地域では、土の表面が乾燥するのを防ぐ敷き藁を使うと、水やりによる泥はねを予防できるためおすすめです。ただし降水量が多い地域では、ビニール製のマルチングシートのほうが予防に適しています。
軟腐病は原因細菌に汚染された土壌を殺菌消毒しても、完全に殺菌できないことが多いです。そのため軟腐病が発生した作物の連作を避けることは、軟腐病の予防に効果があります。特にアブラナ科とナス科は軟腐病をおこしやすいため、同じ科目の作物は連作しないようにしましょう。
軟腐病の原因菌は、害虫の食害によってできた傷口からも伝染します。そのため害虫の食害がおこりやすい野菜は、害虫対策をすることで病気の予防が可能です。害虫対策には農薬を使う方法もありますが、防虫ネットやマルチングなども害虫対策に効果があります。
軟腐病は、繁殖力の強い細菌に伝染することが理由で発生する病気です。初期症状の段階であれば、発症した株を引き抜き処分する方法も効果があります。ただし複数の作物に症状がみられた場合は、病気の原因細菌によって土壌が汚染されている可能性があります。この場合は薬剤を使う治療法がおすすめです。
ヤシマストマイ液剤20
参考価格: 947円
ヤシマストマイ液剤20は、抗生物質であるストレプトマイシンが主成分です。抗生物質は軟腐病のような細菌の治療に効果がありますし、収穫の2週間前まで使用できます。薄めて散布するため経済的ですし、散布しても汚れが付きにくいです。
主な作物 | ハクサイ |
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タイプ | 液剤 |
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主成分 | ストレプトマイシン |
カッパーシン
参考価格: 522円
カッパーシンは、軟腐病の治療に効果のあるカスガマイシンを有効成分としている薬剤です。さらに主成分には細菌性の病気の予防に効果がある、塩基性塩化銅を含みます。そのため治療だけでなく、予防にも適用可能です。
主な作物 | キャベツ、タマネギ、ブロッコリー、ダイコン |
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タイプ | 水和剤 |
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主成分 | カスガマイシン、塩基性塩化 |
バリダシン液剤5
参考価格: 1,767円
バリダシン液剤5は、バリダマイシンが主成分の液剤タイプ薬剤です。イネ科の病気の治療薬として有名ですが、軟腐病の原因細菌の繁殖を抑制する効果があるため、近年は軟腐病の治療薬としても注目されています。ハクサイやタマネギへの散布は、収穫3日前まで可能です。
主な作物 | ハクサイ、タマネギ |
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タイプ | 液剤 |
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主成分 | バリダマイシン |
ジーファイン水和剤
参考価格: 1,867円
ジーファイン水和剤は、レタスやパセリの軟腐病におすすめの薬剤です。治療としての効果が高い炭酸水素ナトリウムと、予防に効果のある無水硫酸銅が主成分のため、治療と同時に予防ができます。
主な作物 | レタス、パセリ |
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タイプ | 水和剤 |
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主成分 | 炭酸水素ナトリウム、無水硫酸銅 |
商品 | ||||
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商品名 | ヤシマストマイ液剤20 | カッパーシン | バリダシン液剤5 | ジーファイン水和剤 |
価格 | 947円 | 522円 | 1,767円 | 1,867円 |
商品リンク |
気温が下がったのに軟腐病にかかった場合の原因は?
気温が低くても、雨が多い場合は軟腐病が発生します。特にハクサイは9月後半~10月にかけての長雨や台風には要注意です。
農薬を使わないおすすめの予防法は?
軟腐病は土壌汚染によって伝染することが多いため、植え付け時は新鮮な土を使うと予防対策になります。また通気性のよい用土を使うことも、軟腐病の原因菌の発生を抑制するのに効果的です。