園芸部類 | ラン |
形態 | 常緑多年草 |
樹高・草丈 | 60cm |
開花時期 | 通年で不定期 |
開花日数 | 5~7日間 |
花径 | 10cm |
葉長 | 10~25cm |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 | 湿度と冷涼な気候を好む 栽培は難しい |
栽培難易度 | ★★★★★ |
モンキーオーキッドは、南米エクアドル~コロンビアが原産の着生ランです。南米アンデス山脈に隣接する標高1700~2700mほどの高地に広がる、高い湿度の雲霧林に自生しています。
ドラクラ属は花色が褐色系で形状が猿の顔のように見えることから、「モンキーオーキッド」という別名がつけられました。猿の顔面に見えるのは発達したがく片、目に見えるのは側花弁の先端が膨らんで色づいた箇所、口に見えるのは唇弁です。
モンキーオーキッドは樹上に着生している植物で、花は垂れ下がって下向きに開きます。開花の時期は通年にわたって不定期です。猿の口に見える唇弁はきのこの裏面にも類似していることから、きのこに集まるハエ類に花粉媒介されると考えられています。
モンキーオーキットの属名ドラクラとは「小さな竜」を意味しています。3つのがく片の先端が異常に長くなる特徴を捉えて名づけられました。ドラクラ属の花は、正三角形から二等辺三角形の形状になっています。ドラクラ属はもとはマスデバリア属から独立した属です。マスデバリア属と同じようにバルブがなく、薄手で幅の広い葉を根出状につけています。
モンキーオーキッドの「高地の雲霧林」という生育環境は、日本の家庭での栽培を困難にしています。温度と湿度の管理が非常にむずかしく、水槽やワインクーラー、冷蔵庫などを用いながら育てても夏越しがむずかしい品種です。植物園などでは温室で徹底的な温度管理のもと育てられています。栽培の難しさと花色が地味なことから、洋ランとして一般的に普及されてはいませんが、植物園では人気の品種です。
珍しいサル顔の花をコレクションしたくて苗を購入してみたけど、夏越しできなかったな。
ボタニ子
そういう人がたくさんいるみたいですよ。高山の雲霧林の環境を整えるのは難しいから、簡単には育てられないのかもね…
ボタ爺
でも、中には工夫を重ねて自宅で育てている強者もおるのじゃよ!
ドラクラ・ギガスは薄い赤紫のがく片が三角形に開き、猿の毛のように見えるすじ模様が入っています。「ギガス」は大きいという意味です。
ドラクラ・ロタックスは、褐色系の色が多いモンキーオーキッドのなかでも明るいクリーム色が目立ちます。花の中心に目と鼻と口のような模様がはっきりと表れて、サルの笑い顔のように見えるのが特徴です。ドラクラ属のなかでは比較的暑さにも強く、人気の品種です。
ドラクラ・ベラはドラクラ属のなかでも大きく存在感があります。薄紫色のがく片は二等辺三角形のように開きます。目が小さいサル顔のような花です。
ドラクラ・バンパイアは、深い紫黒色と中心の黄色がサルというよりゴリラの威厳を感じさせるような顔に見えるのが特徴です。モンキーオーキットはどちらかというとファニーフェイスな花が多いなか、バンパイアはクールでかっこいい佇まいが印象的です。
ドラクラ・コルドバエはがく片の丸みがなくほぼ直線形で、美しい二等辺三角形を成しています。赤紫色の縁取りに白いサル顔が特徴的です。
温度管理が難しく露地植えやプランターなどでは育てられないため、苗で購入したらそのままの状態で育てるのがよいでしょう。花は通年にわたって不定期に咲きます。一年中、適切な温度管理と髙い湿度を保つことが開花につながります。
モンキーオーキッドの開花は不定期で、通年にわたって咲きます。そのため、肥料も非常に薄めた液体肥料を定期的に与えます。
温度管理がしやすいように、鉢で栽培します。鉢の底からも花芽が伸びることがあるため、高い所から吊るしておきましょう。露地植えはできません。
ボタニ子
非常に栽培環境が難しいため、庭植えはできません。鉢植えで移動できるようにして栽培しましょう。
冷涼な土地では戸外の日陰でも育ちますが、夏の気温が28℃以上になる地域ではエアコンを効かせた室内がよいでしょう。春~夏は日陰で風通しのよい場所を選びましょう。暑さに大変弱いので、エアコンの効いた室内でカーテン越しの光が当たる程度で育つ場合もあります。ただ難易度が高く、枯れてしまうケースが多いのも事実です。秋~冬は室内で明るい窓辺などがよいでしょう。
高山の雲霧林という栽培環境を再現するために、ワインクーラーや保冷庫、水槽などに保冷剤を用いるなどして栽培する方法もあります。
用土はミズゴケを基本にして、用意できればココチップを混ぜて使いましょう。ココチップとは、ヤシの実の外皮をカットしたヤシ繊維で、圧縮して梱包されています。ヤシ繊維は土の乾燥や凍結を防ぎ、水分と温度の保持に有効な用土です。
モンキーオーキッドは高湿度を好みます。ミズゴケはいつでも水を含んでいる状態を保ちましょう。霧の環境を再現するために噴霧器を用いて、春~夏は1日に数回、秋~冬は朝晩に各1回程度水分を与えます。
肥料はラン用の液体肥料を5000~6000倍くらいに薄めて、2週間に1回与えましょう。春~夏は固形肥料を施すと成長が促されます。
モンキーオーキッドは種子も販売されていますが、苗を購入するのが一般的です。しかしなかなか市販されない品種のため、ラン展などの会場販売やネット販売で手に入れることが多い品種です。もし苗を見て選べるなら、葉が黄変していたり病変があったりするようなものは避け、生き生きと張りのある葉の苗を選びましょう。購入するときは店舗の人に、用土や栽培環境について聞いておくと安心ですね。
モンキーオーキッドは大変夏越しが難しい品種です。最高気温28℃以下で風通しのよい環境を保つために、室内でエアコンをつけたままにしたり、ワインクーラーや保冷庫などを利用したりして乗り切る方法もあります。ラン販売店などにお願いをして山上げができると夏越しも可能になるでしょう。
山上げとはなんですか?
標高1000mほどの山地に苗を移動させ、遮光しながら暑さをしのいで夏越しさせることです。暑さに弱い品種の体力を保ったり、開花を促進したりする目的で行われています。
冬はなるべく10℃以上を保ち、明るい室内で湿度を保って管理しましょう。耐寒性はありますが霜にあたると弱ってしまいます。そのため最低でも2℃以上の温度が必要とされています。
出典:写真AC