ザゼンソウは、日本を含む北半球に分布しているサトイモ科の植物です。日本では北海道や本州北部、長野県や滋賀県の高山地帯など寒い地域にしか生息していません。海外ではロシアや北アメリカなどに生息していて、強烈なにおいを放つことから「スカンクキャベツ」とも呼ばれています。
園芸部類 | 草花 |
形態 | 宿根草(多年草) |
樹高・草丈 | 10~30cm |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 | 発熱する、腐敗臭がする |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
ザゼンソウという呼び名は、仏炎苞(ぶつえんほう)の形が仏像の光背(こうはい)に似ていることと、光背の前で座禅を組む僧侶に似ていることが由来です。また、花でもある肉穂花序(にくすいかじょ)の形がダルマにも見えることから、ダルマソウという別名がつけられました。海外で呼ばれているスカンクキャベツは、ザゼンソウのにおいが腐ったキャベツに例えられているためです。
ザゼンソウは褐色の仏炎苞に、肉穂花序が包まれている姿が特徴的です。ザゼンソウは植物の中では珍しく、自然発熱する特徴を持っています。その温度は20℃前後といわれていますが、発熱するメカニズムは解明されていません。
ザゼンソウは発熱と同時に、悪臭を放ちます。昆虫の少ない時期ににおいで虫を引き寄せることで、花粉を媒介させるためです。においはニラやニンニクに似ているといわれており、人によっては不快に感じられるでしょう。
日本においてザゼンソウは、野ネズミの食害から絶滅の危機があるとしてレッドリストに指定されています。高原公園などで自生する姿を見ても、持ち帰るのはやめましょう。ザゼンソウの苗を手に入れたい場合は、園芸を専門に扱う実店舗やネット通販を活用してください。
ヒメザゼンソウは本州に生息しているザゼンソウです。ザゼンソウの中でも小さく、夏ごろに開花します。山や林の湿ったところに生息していることが多く見つけやすいですが、レッドリストに指定されているため、発見しても持ち帰るのはやめましょう。
アオザゼンソウは、ザゼンソウの色素が突然変異により抜けたものです。仏炎苞がやや白っぽい緑色なのが特徴的です。アオザゼンソウは、関東より北の寒冷地や、長野県などの山岳地帯に生息しています。
植え付け時期 | 3~6月、9~11月 |
肥料の時期 | 3~9月 |
株分けの時期 | 3~6月 |
花が咲く時期/開花時期 | 1~3月頃 |
ザゼンソウの植え付け時期は?
ザゼンソウは夏~秋にかけて休眠期を迎えます。また、暑さにも弱いため、植え付けは3~6月または9~11月ごろに行うのがベストです。
ザゼンソウの開花時期は?
ザゼンソウの開花時期は、1月下旬または2月ごろからです。地域によって若干のずれがありますが、3月下旬ごろに花が枯れて、その後、葉が成長しはじめます。
ザゼンソウの植え付けや植え替えは3~6月または9~11月頃にかけてがおすすめです。ザゼンソウは夏が休眠期であり、暑さにも弱いことから、7月以降は極力移植しないように管理してください。また、ザゼンソウは寒さに強いものの、根が凍結すると枯れます。とくに寒冷地では、気をつけて栽培を楽しみましょう。
ザゼンソウは、鉢植え・庭植えどちらでも栽培できる植物です。しかし、ネズミやモグラが多く出る地域では、庭植えは根を食べられしまう可能性があるため、鉢植えがおすすめです。ザゼンソウは深く根を張る性質があり、鉢植えの場合は、6号以上の深型の植木鉢を用意してください。
ザゼンソウは冷涼な環境を好むため、屋外の半日陰で管理してください。夏に枯れてしまうことがあります。低地では本格的に暑くなる前に室内へ取り込みましょう。室内では、冷房を使うなどして室温が30℃以上にならないように管理してください。高地や寒冷地は、そのまま屋外で管理しても大丈夫です。
冬の室内はザゼンソウにとっては暑いため、冬の間は屋外で管理します。外と同じような温度であれば、室内で管理してもかまいません。冬の間は凍結防止のためにも、植木鉢の受け皿に水がたまらないように気をつけてください。
ザゼンソウは、水はけと水持ちがよい土質を好みます。ザゼンソウを栽培する用土は、赤玉土と腐葉土を7:3程度に混ぜ合わせてください。水はけをよくするために、桐生砂や炭を1割ほど混ぜるのも効果的です。市販の山野草用の培養土を活用するのもおすすめですよ。
ザゼンソウは、水切れに注意して栽培します。常に根が水に浸かっている状態が好ましいため、腰水を取り入れるのもよいですね。腰水は水温が上がらないように気をつけて、2~3日に1回交換してください。夏は、朝と夕方の涼しい時間帯に水やりをしましょう。
ザゼンソウには、油かすや緩効性の有機質肥料を2カ月に1回のペースで与えます。しかし、夏場は休眠期に入るため、この間は根を休めるためにも肥料は与えないでください。涼しくなってきたら、再び肥料を与えましょう。
ザゼンソウは害虫被害がほとんどない植物ですが、特徴的なにおいによってハエが寄ってきやすいです。ハエによる直接的な被害はないため、安心してください。しかし、ネズミに食べられることがあります。栽培環境には注意が必要です。
ザゼンソウは病気に強いですが、用土の水はけが悪いと根腐れを起こします。霜や凍結によっても枯れるため、気をつけましょう。
花後は、人力で葉を少し開きましょう。葉が巻いている状態では根が育たないためです。うまく葉が開いている場合は、花後の管理はとくに必要ありません。
ザゼンソウは、種からの栽培も可能です。種は市販では入手が難しいため、花後のザゼンソウから採種して挑戦してみましょう。種は湿らせた状態でまくのがポイントです。開花するまで数年かかりますが、乾燥しないように管理してください。
苗は株元がしっかりしていて、葉に張りがあるものを選びましょう。日陰で管理されていたか、土は湿っているかもチェックして苗を購入してください。日当たりのよいところに置かれていたザゼンソウは、葉が傷んでいる可能性があります。
ザゼンソウは2~3年に1回、植え付けと同じ用土を用意して、3~6月または9~11月の涼しい時期に植え替えてください。植え替えたあとは必ず半日陰に置いて、水切れしないように管理しましょう。
ザゼンソウは花後は溶けるように枯れるため、剪定は必要ありません。
ザゼンソウは暑さに弱いため、外気温が30℃以上になる場合は、できるだけ涼しい場所に移動させてください。腰水を行うのであれば、定期的に水を交換して土の中の温度が上がらない工夫をしましょう。ザゼンソウの夏越しは難しいため、一年草のように扱うのもおすすめですよ。
ザゼンソウは比較的寒さに強いですが、霜や凍結により根が凍ると枯れます。軒下や、室内の涼しい場所に取り込みましょう。
ザゼンソウは種まき、または株分けで増やせます。種まきは花後に採種した種を、用土にまいてみましょう。芽が出るまで、涼しいところで管理してくださいね。
株分けは、植え替えと同時に行うのがおすすめです。分けた株に根がつくように気をつけて、清潔なハサミを使ってください。ハサミを使って切り分けたら、用土に植え付けて新しい根が出るのを待ちましょう。細い根が伸びていて、新芽が出ていたら株分け成功ですよ。
出典:写真AC