カシスは、ブルーベリーやラズベリーといった「ベリー類」に分類される植物です。日本ではクロスグリ(またはクロフサスグリ)、英語ではブラックカラントと呼ばれており、名前のとおり、黒い実を房状につけます。一般に定着しているであろう呼び名「カシス」は仏名です。
園芸部類 | 果樹 |
形態 | 落葉樹 |
樹高 | 低木 |
花の色 | 薄黄緑色~白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
耐陰性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
カシスの果実は生で食べると強い酸味とえぐみを感じられます。そのため、生食には向きません。しかしジャムやシロップに加工すれば、おいしく味わえます。人気のカクテル「カシスオレンジ」に用いられるリキュール「クレーム・ド・カシス」は、カシスが原材料です。
ヨーロッパで、カシスが食べられることが知られたのは、16~17世紀のことです。カシスは壊血病や目の病気の予防に効くとされていました。カシスにはビタミンCとアントシアニンが豊富に含まれているため、効果があるとされたのでしょう。
植え付け時期 | 12~2月頃 |
花が咲く時期 | 4~5月頃 |
剪定する時期 | 12~2月頃 |
実がなる時期 | 5~7月頃 |
収穫時期 | 6~7月頃 |
カシスは、寒さや乾燥には強いですが夏の暑さは苦手です。そのため、植え付けや植え替えは苗に力がある冬~春先に行うのがよいでしょう。霜が降りるような寒冷地で庭植えを考えている場合は、冬は避けて春先に行います。
カシスは比較的強い植物ですので、庭植え(地植え)でも鉢植え(プランター栽培)でも管理できます。
カシスは屋外での栽培は可能です。また、プランターや鉢を使用すれば、室内でも栽培できます。ただし、カイガラムシやうどん粉病などの病害虫が発生するおそれがあるので、室内よりはベランダなどで栽培するほうが管理しやすいでしょう。
カシスは暑さに弱い植物です。そのため、一日中ずっと強い日差しが降り注ぐような場所は避けましょう。午前中、やわらかな日差しがあたり、午後は半日陰になるような場所が好ましいです。
カシスは連作障害の心配はありません。ただし、土壌pHや肥料のバランスは毎年気にしたほうがよいでしょう。
カシスは、農業として大規模に栽培する場合を除き、地植えや家の庭で楽しむ分には畝やマルチングなどは必要ありません。
カシスはある程度の乾燥には耐えますが、干ばつのような乾燥は嫌います。そのため、水はけ・水もちのよい用土が必要です。用土の割合としては、赤玉土小粒7~8:ピートモス(酸度未調整)3~2の配合土がよいでしょう。ベリー類用の専用の土を使用しても構いません。
植え付ける際は、日当たりを考えて場所を選びます。株より一~二回り大きく深い穴を掘り、そこに新しい用土をいれてから植え付けます。植え付けた直後は、土に入り込んだ空気を抜くためにも一度たっぷりと水を与えましょう。
植え付け時、用土に有機質肥料か速効性化成肥料を混ぜ込み、それを元肥とします。
庭植えや地植えの場合は毎日の水やりは不要です。夏に雨が降らず、日照りの強い日が続いた場合にはたっぷりと水やりします。鉢植え、プランター栽培の場合は、土の表面が乾いてきたら、鉢底から水が出てくるまでたっぷりと水を与えましょう。根腐れを防ぐために、皿にたまった水はその都度捨てます。
カシスは果樹で、つるなども持たないため、支柱はほとんど必要ありません。ただし、苗がまだ若く、風などで倒れてしまいそうなときは支柱をするとよいでしょう。
12~2月の植え付け時に元肥を施しますが、そのときと同じものを10月ごろに追肥します。鉢植えの場合は、地植えより少ない土で管理するため、定期的な追肥が必要です。2月のほかに、7月と10月に追肥しましょう。
カシスの剪定の適した時期は晩秋~冬です。風通しをよくするための小さな剪定はこまめにします。その年伸びた枝に、次の年の花と実を付けるので、古い枝をすべて切ってしまうと実がつかなくなることもあります。
カシスは落葉樹なので、古い葉から順に黄色くなり枯れて落ちていきます。上の枝からは新しい葉が出てきて、どれも健康な緑色をしているのであれば心配ありません。また冬を前に紅葉し、落葉します。しかし、上のほうの葉が黄色くなってきている場合は問題があります。水不足、肥料やけ、高温による枯れなどが考えられます。
カシスは高温や暑さに弱いため、日に当たりすぎは望ましくありません。しかし、実をつけるためにはある程度の日差しも必要です。長く日陰になるような場所では実の付きが悪くなることがあります。また、前の年に出た枝にその年の実がつくため、剪定のタイミングが間違っていると実がならないことがあります。
鉢植えやプランター栽培の場合は、根詰まりを起こしていると実の付きが悪くなります。2年に1回程度は大きな鉢への植え替えが必要です。
カシスは自家受粉できるため、1本植えるだけで結実します。ただし、実をつけるためには受粉が必要です。外に植えていれば自然に蜂などの虫が訪れ、受粉を手伝ってくれます。室内に入れて育てていると受粉成功の確率が減ってしまうこともあります。
うどん粉病は、白カビの仲間が発生し、うどん粉をうったように葉を白くしてしまう病気のことです。植物が栄養を合成することを妨げるので、枯れる原因になることもあります。果実の味をおとすだけではなく、開花自体を妨げ、実の付きを悪くします。うどん粉病は野菜や果樹問わず、すべての植物がかかりうるやっかいな病気です。
うどん粉病は、涼しく乾燥している環境で発生しやすいです。雨がなく乾燥が続いているようなときは葉水を与えるのも効果的です。剪定で風通しをよくするのも有効です。また、窒素過多な土壌では植物が軟弱化し、うどん粉病にかかりやすくなります。これらの対策をとっても改善されない場合は、適切に薬剤の散布をします。
斑点病は、うどん粉病と同じくカビが原因となる病気です。葉に褐色の小さな斑点が生じるところから始まり、次第にその範囲を拡大しながら植物を枯らしてしまいます。
斑点病の対策も、風通しをよくすることが有効です。水はけの悪いじめじめした環境では発生しやすいので、植え付けの際は場所選びに注意が必要でしょう。
カシスがかかりやすい病気 | |
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うどん粉病 | 葉が白い粉に覆われ、粉をまぶしたようになります。 |
斑点病 | 葉に褐色の直径数ミリの斑点がでます。放置しておくと斑点は葉の全体へ広がっていきます。 |
カイガラムシは直径数mmの小さな虫です。白くてふわふわした姿をするものから、甲殻類のように硬い殻に覆われているものなど種類も多岐にわたります。カイガラムシは植物の樹液を吸い取り、弱らせてしまいます。またカビなどの病原菌を運び、広めてしまうこともあるのです。
カイガラムシは風通しの悪い場所を好みます。薬剤が効きにくく、数が増えやすい厄介な虫で、初期発生を抑えるのが効果的な手段です。まめに剪定して、風通しのよい状態を保ちましょう。
カシスは、大きくなるまでに時間がかかりますが、種まきでも増やせます。カシスの実が地面に落ち、自然にそのまま芽がでてくることもあります。種を発芽させるには寒さにあてることが必要です。温暖な地域で、種まきから育てる場合は冷蔵庫に種をいれて寒さにあてることも1つの方法です。
カシスの増やし方は、挿し木が一般的です。前年に伸びた若い枝を切り取り、葉2~3枚を残しほかの葉は取り除きます。枝の根本を斜めにカットし、水揚げをした後、用土に挿し木しましょう。乾燥に気を付けながら適宜水やりをして、根が出るのを待ちます。