コチョウランは鉢花の女王とも称される、ラン科の着生植物です。花持ちがよく姿も美しいことから、ギフトでの人気もありますが、小型のコチョウランの花色が増え、カジュアルなインテリアフラワーとしても注目されています。
園芸部類 | 洋ラン、鉢花 |
形態 | 常緑性多年草、着生植物 |
樹高 | 10cm〜1m |
花の色 | 白、黄色、ピンク、オレンジ、赤、紫、褐色 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
コチョウランは栄養を蓄えるバルブと呼ばれる、茎を持たない着生ランです。長く肉厚な葉に水分と栄養を貯めるのがコチョウランの特徴で、自生地では他の植物に根付いて成長します。葉と葉の間から花芽を伸ばし、その先に並列もしくはまとまっていくつもの花を咲かせます。
学名のファレノプシスは、ギリシャ語の「蛾のような」という言葉に由来します。和名の胡蝶蘭の由来は、白い蝶が舞っている姿を花に例えたといわれています。
アマビリスはフィリピンなどが原産の、やや小型の原種です。白花コチョウランの交配親として使われている、丈夫で育てやすい品種です。
世界らん展でブルーリボン賞を受賞した品種がサクラコです。白をベースに中央がピンク系になるグラデーションが特徴です。花色が豊富なコチョウランですが、ブルーやパープルなどに色付けした品種も出回っています。
小ぶりなミディコチョウランの中でも、鮮やかな黄色ベースにピンクのストライプが入る珍しい色合いの品種です。
ミディ系のビクトリアは海外で人気の高い、斑点状に模様が入る品種です。ミニやミディ系のコチョウランは近縁種のドリティスと交配した、ドリテノプシス属の花がほとんどです。本来は別種ですが、一般にはコチョウランの小型品種として販売されています。
植え付け(鉢替え)時期 | 5〜9月 |
植え替え(株分け)時期 | 5〜6月 |
成長時期 | 4〜10月中旬 |
花が咲く時期/開花時期 | 1年中/本来は春〜夏 |
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
植え付け 植え替え |
● | ● | ○ | ○ | ||||||||
開花期間 | ○ | ○ | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ○ | ○ |
肥料 | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||
成長期 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | |||||
休眠期 | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● |
コチョウラン本来の成長時期は4〜10月上旬の暖い時期です。花付きのコチョウランは1年中見かけられ、入手時期によっては花が咲いている時期が、栽培カレンダーとズレがあります。その場合は花芽が付いていたら肥料を与え、植え替え作業は翌シーズンに持ち越しましょう。
コチョウランは鉢植えで育てるのが基本です。ポット苗を苔玉や流木付け・ヘゴ板仕立てにしても育てられます。プラポットごと植え込めば、寄せ植えも可能です。ギフトでいただいたコチョウランは、そのまま1週間ほど飾った後にラッピングペーパーを外して管理しましょう。
鉢植えのコチョウランは、室内で育てます。生育適温は18〜30℃までです。成長期はレースのカーテン越しに日が当たる場所に置きます。エアコンや扇風機の風は、コチョウランの花がしおれたり葉が傷んだりするので避けましょう。冬は室温を10〜15℃に管理します。
コチョウランを育てるのは、一般の用土ではなく洋ランバークや水苔です。バークにはカバー材や堆肥などもありますが、洋ラン栽培用の物を選びます。バークや水苔は併用も可能です。鉢は根の呼吸のために、素焼きやテラコッタを使います。夏は蒸れやすいので、鉢カバーは秋から冬に使いましょう。
コチョウランの水やりの基本は霧吹きで行います。表面をおおった水苔やバークを、しっかりと湿らせるのがポイントです。成長期の4〜10月は水苔やバークがしっかりと乾いてから、休眠期の11〜3月は水苔やバークが乾いて数日経ってから水やりをします。花びらがシミになるので、水やりで水滴が飛ばないように注意しましょう。
肥料は固形肥料か液体肥料を、成長期の5〜9月に与えます。固形肥料は1〜2ヶ月に1回、液体肥料は1週間〜10日に1回のタイミングです。翌シーズンにも花を咲かせたい場合は、洋ラン専用の肥料を使い成長期に大きくて肉厚な葉を育てましょう。
室内で育てるコチョウランは1年を通して、カイガラムシの発生に注意します。入手したら葉と葉の間や裏側に付いた害虫をよく確認して、殺虫剤で早めに対策しましょう。
春から秋の高温期は蒸れで葉の表面や根元にカビが発生して、炭そ病を起こすことがあります。コチョウランは風通しをよくして水やりの後に、葉の根元の水分を拭き取ってカビや病気を防ぎましょう。
コチョウランの花は根元に近い方から咲いて、枯れていきます。しおれた花は摘み取り、花が咲き終わったら花茎の根元近くで剪定して、支柱を取り外します。2番花を咲かせたい場合は、花後に花茎を3節ほど残して剪定します。2番花は株が弱るので、若い株にはおすすめできません。
3〜5本仕立ての贈答用の選び方は、花のサイズが大きく向きが揃っていて、左右にバランスく並んでいるものがよいでしょう。さらに膨らんだつぼみが付いているものが理想的です。自宅用の選び方は葉の色が濃く数が多い株、花がある程度咲いていて膨らんだつぼみが付いているものがおすすめです。小さくて硬いつぼみは、開かないことがあります。
コチョウランの植え替えのタイミングは、2年に1回が目安です。用意するものは、洋ランバーク・水に浸けた水苔・一回り大きな素焼き鉢(テラコッタ、陶器鉢)鉢底ネットです。植え付けや鉢替えも手順は同様で、1鉢に1株ずつ植えていきます。
コチョウランが休眠中の冬の水やりは、水温に注意してください。20〜30℃ぐらいのぬるい温度で、時間帯は午前中に水やりを済ませます。室温を10〜15℃に管理し、昼間は適度に暖かく明るい場所に置きましょう。
ミディ系のコチョウランを18℃で管理すると、30日前後で花芽の素が作られます。その後22〜25℃で花茎を伸ばして、3ヶ月程度で花を咲かせます。ミニコチョウランなど厳密に管理しなくても、花芽を展開させる品種もあるので、トライしてみましょう。
コチョウランの増やし方は、株分けです。長く育てていると、稀に株元に子株ができることがあります。5〜6月に葉が5〜6枚あって発根している子株を切り分けて、植え付けます。手順は植え替えと同様です。花を咲かせっぱなしにしているとタネができることもありますが、そのままでは発芽しないので、タネからの増やし方はほぼ不可能です。
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