トウガラシは、熱帯アメリカが原産です。ピーマンやしし唐などの辛味のない種類(sweet pepper)と辛味のある種類(red pepper)をあわせてトウガラシと呼びます。夏の暑さに強く秋まで収穫できて、比較的病害虫の被害も少ない育てやすい野菜です。
園芸部類 | 野菜 |
形態 | 一年草 |
樹高 | 60~80cm |
花の色 | 白 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 弱い |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
トウガラシの果実には辛味成分のカプサイシンなどが含まれ、食欲増進や血行を促進し代謝アップを図ってくれることから、ダイエット素材としても注目されています。トウガラシを用いた調味料は世界中にあり、食文化のうえで重要な位置を占めています。
鷹の爪トウガラシは「八ツ房」という果実が鈴なりにつく種類の改良種です。日本ではトウガラシの代名詞ともいえ、関東地方を中心に古くから全国各地で栽培されています。
万願寺トウガラシは京都府舞鶴市万願寺が発祥の辛味のない甘トウガラシで、しわのよった独特の形が特徴です。長さが20cmと大ぶりで、天ぷらや煮物など調理の幅が広いトウガラシです。
比較的辛味が少なく、ほのかな甘みとさわやかな香りが特徴のトウガラシです。グリーンの未熟果を収穫し、酢漬けにして利用します。
ハバネロにはスタンダードなオレンジ色のほかに、赤や黄色の品種もあります。激辛の品種ですが、独特な香りをもつことも特徴です。
苗の植え付け時期 | 4月下旬~5月中旬 |
わき芽かき・支柱立ての時期 | 5月上旬~下旬 |
追肥の時期 | 5月中旬~9月中旬 |
収穫時期(開花後60日から) | 7月下旬~10月下旬 |
トウガラシの植え付けは5月の連休ごろ、遅霜のおそれがなくなってからが適しています。生育温度は20℃~30℃ですが、ピーマンより寒さに弱く、幼苗は寒さにあうと生育が悪くなります。
トウガラシは、プランターや鉢植えでも育てられます。露地栽培とのメリットとデメリットを比較してみましょう。
メリット | デメリット | |
プランター栽培 | 温度・気象災害の管理が容易 | 収穫量が少ない |
露地栽培 | 収穫量が多い | 管理が大掛かり |
トウガラシは、野外の日当たりと風通しがよい場所で管理します。植え付け後、プランターや鉢植えの場合、気温が15℃以下になりそうな日は室内に取り込みます。
基本的に、トウガラシは屋外で管理します。ただし、移動可能な鉢植えは、気温の低い日(遅霜や梅雨寒)は室内に取り込みます。地植えでは、定植してから幼苗のうちはビニールのトンネルなどで苗を寒さから守りましょう。
プランターや鉢の置き場所は、一日中よく日が当たる場所が適しています。梅雨時のじめじめした環境は、根腐れや害虫被害を招きます。長雨のときは、雨が当たりにくい場所に移動させて管理しましょう。
トウガラシは、連作障害がでやすい作物です。同じ場所で栽培をするときは3~4年以上あけます。
連作とは、同じ場所で同じ種類の作物を続けて栽培することです。だんだん収穫量が減ってきたり、病害虫の被害も多くなったりすることがあります。このような状態を「連作障害」といいます。
連作障害を防ぐために、一度栽培した場所ではしばらく同じ作物を作らずに一定期間をおきます。これを「輪作年限」といいます。
トウガラシは高温と乾燥を好むため、水はけよく育てるのが大切です。また長期間収穫を目指すなら、肥沃な用土づくりが収穫アップにつながります。
地植えの場合、畑の準備は定植の2週間まえから始めます。まいて耕すという作業を2回くりかえします。
苦土石灰 | 2週間以上前 | 150g |
完熟堆肥 | 定植1週間前 | 1㎡あたり2~3kg |
化成肥料 | 定植1週間前 | 1㎡あたり150g |
トウガラシを乾燥気味に育てるために、畝を立てます。畝は幅70cm、高さは15~20cm程度に作ります。
トウガラシの定植は、遅霜のおそれがなくなってから行います。地温をあげるために、黒いポリマルチを敷いてから植え付けるとよいでしょう。
本葉7~8枚程度ついている、しっかりとした苗を用意します。根鉢をくずさないように、ポリマルチの穴の位置に苗を置き、株元を軽く押さえて密着させてください。そのあとじょうろで水やりをします。
地植えの場合、トウガラシの株間は50cmとりましょう。
トウガラシは長い期間、花を咲かせて花後に果実をつけます。たくさん収穫するためには、植え付け後3週間から、定期的な追肥が欠かせません。追肥は2~3週間ごとに化成肥料を施します。
育苗箱やポット育苗で、保温しながら育てます。適温を確保できていれば、5~7日で発芽します。
種を植える間隔は、1~2cmあけます。畑の直播きは発芽温度が25~30℃と高いので、日本国内では沖縄県のような条件でないと難しいでしょう。
発芽までは25℃以上で保温し管理すると、5~7日で発芽します。水切れをしないように気をつけましょう。
盛夏までに充実した株に育てましょう。夏場は水切れに気をつけて、過度な乾燥は株を弱らせます。敷きわらなどで、マルチングするのもよい方法です。
プランターや鉢植えの場合は、表面の用土が乾いたらたっぷりと水やりをします。露地栽培の場合は、夏場の過度な乾燥はトウガラシにはストレスになるので、水やりの回数を増やします。
トウガラシの枝は細く折れやすいので、支柱を立てます。株元から2~3cm離れたところに支柱を立て、麻ひもで茎を誘引します。麻ひもはゆるめに8の字に結びます。
マルチングは畑などに植え付けるときの「ポリマルチ」と、夏場の乾燥防止の敷きわらの「マルチング」と2回あります。
ポリマルチ | 畑の畝作りのとき敷く | 幼苗の防寒 |
敷きわら | 盛夏になったとき | 水切れ予防 |
トウガラシは肥料切れをおこしやすく、植え付け後3週間もすると肥料が足りなくなります。葉の色がうすくなってきたら、2~4週間ごとに追肥を施します。
開花からおよそ60日すると、トウガラシは実をつけはじめます。青いうちにとる「シシトウ」や「万願寺トウガラシ」は7月下旬から収穫がはじまります。花後、完全に赤くしてから収穫の「鷹の爪トウガラシ」などの収穫は10月ごろです。
トウガラシは、たくさんの肥料を必要とします。そのため、植え付けてから3週間後くらいから追肥をはじましょう。葉色がうすくなったり、黄色になったりしたときは肥料不足です。
夏場のトウガラシは水やりが欠かせません。トウガラシの根は浅く張っているので乾燥に弱く、夏場は水不足に陥りやすいです。そのため実が育ちません。
夏を過ぎて、水切れや肥料切れなどのトウガラシが受けたストレスが、甘い品種に「辛い個体」を増やす原因です。ストレスを減らす栽培が大切です。
トウガラシがかかる病気はとくに幼苗のころです。多湿に弱いので、長雨の時期は病気がでやすくなります。
青枯れ病は、7~8月に起こる連作障害から起こる病気です。日中に葉がちぢれて、夜には回復をします。これをくり返して、最後は青いまま枯れてしまう病気です。
うどんこ病は、若い葉や茎にうどん粉をまぶしたような白いカビが生える病気です。花梗(かこう)とよばれる花の軸がうどん粉病になると、開花が阻害されます。
モザイク病 | 葉や花にまだらの模様があらわれる 葉がちぢれたり、黄化したりする |
灰カビ病 | 多湿時に発生 茎や葉にカビが生え被害部が腐敗する |
薬剤散布は収穫の寸前ではできませんが、植え付けて早いうちなら殺菌剤の散布は可能です。できるだけ、食品成分由来の殺菌剤を使うことをおすすめします。
トウガラシは虫がつきにくいのですが、幼苗のときには注意が必要です。
アザミウマは、花や葉に寄生します。とくに夏の高温乾燥期に発生が多く、花が奇形になって開花しないなどの被害がでます。
ネキリムシは、夜間、地表にでて地ぎわの茎を食害します。昼間は土にもぐっているので、発見が難しい害虫です。
コガネムシ(幼虫) | 土の中で根を食害する 苗は枯死するなどの被害がでる |
ヨトウムシ | 夜間に葉を大量に食害する 昼間は株元にいるためみつけにくい |
ハダニ | 葉裏に寄生し吸われた部分が白くなる 梅雨明けから夏に多くみられる |
アブラムシ | 新芽や葉裏に寄生する ウィルス性の病気を媒介する |
アブラムシなどは物理的にブラシで取り除いたり、牛乳や重曹水をうすめて散布したりするなど、農薬を使わないこともできます。ハダニは水をシャワー状に散布すると効果があります。退治しづらい害虫は、植物由来の薬剤を散布するのもよいでしょう。
トウガラシの発芽は温度が25~30℃が適温です。そのため種まきをするときは、収穫は遅くなりますが5月上旬か、室内で発芽・苗づくりをする方法があります。
トウガラシは発芽適温が高めなので、遅霜の心配がなくなった5月の上旬に育苗箱にまきます。
トウガラシの種は5~7日で発芽します。発芽後、本葉が2枚ほど出たらポリポットに移植しましょう。
トウガラシは、夜間も25℃を保って栽培しましょう。ポットに何本か苗があるときは、1本に間引きます。
種まき後60~80日経ち、高さが15cmくらいで本葉が8枚になれば定植する時期です。
定植するときは、株間を50cmくらいあけて、畝は15cmくらいで植えます。
出典:写真AC