タラノキは、日あたりのよい山地や林道などに自生している落葉低木です。全国各地に分布していますが、樹木よりも「タラの芽」と呼ばれる新芽は食材としても有名です。タラの芽は食べられる野草で、山菜狩りで入手するのが一般的ですが、スーパーや道の駅などでも購入できます。
園芸部類 | 樹木 |
形態 | 落葉低木 |
樹高・草丈 | 2~5m |
花の色 | 白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 新芽は食用、樹皮は生薬になる |
栽培の可否 | 可 |
タラノキにはさまざまな品種があります。新芽は食用としても人気があるので、タラの芽の収穫・販売のために栽培する場合は収穫量を高めた栽培品種が人気です。この章では山地や林道などで見かけるタラノキ自生種の特徴を、わかりやすく紹介します。
タラノキはほとんど枝分かれせず、まっすぐに天に向かって幹を伸ばしていきます。生育環境によっては、1年で50~60cm成長することもあります。そのため新芽の収穫を目的に栽培する場合は、管理しやすい樹丈を維持するために剪定(刈り込み)しますが、樹形の管理のための剪定はほぼ行いません。
自生種のタラノキの幹は、先端がとがったトゲが樹皮から生えているのが特徴です。幹に生えたトゲは、野生動物から新芽を守るための役割があります。庭木や新芽の収穫のためにタラノキを栽培する場合は幹のトゲが危険なので、トゲの少ない改良品種を選ぶのがおすすめです。
タラノキの葉は、枝の先端に集中して生えています。葉には全体的に毛が生えており、葉の縁は鋸歯型です。葉の色は表が緑色、裏が白っぽいのが特徴です。ただし落葉低木なので紅葉の時期になると葉は枯れ、葉が枯れた状態で冬越しします。
自生種のタラノキは、冬越し以外で葉が枯れることはめったにありません。日当たりのよい場所を好みますが、半日陰でも枯れずに育ちます。また土壌の栄養だけでも成長できるので、肥料不足で枯れることもありません。ただし品種改良されたタラノキでは、生育環境や肥料枯れが原因で葉が枯れることがあります。
タラノキの花は、8~9月に開花時期を迎えます。花は葉と同じく、枝の先端に集中して花をつけるのが特徴です。小さくて白い花が枝先にまとまって開花するため、小さくても見ごたえがあります。タラノキの花弁は三角形の形をしており、花の中心から5本のおしべが突きでているのも特徴です。
タラノキの花後は、花弁が落ちる前におしべが落ちます。花がついた状態でおしべだけが先に落ちるのは、自家受粉を防ぐためです。おしべが落ちると花に残っためしべが成熟するため、花が完全に枯れて落ちるのはめしべが成熟し結実したときになります。
タラノキは、丸い形をした黒い色の実がつきます。実が成熟するのは9~10月で、実の直径は約3mmと小さいです。花と同じく実も密集して付きますが、めしべの数しか実はつきません。タラノキのめしべはおしべと同じく5本なので、1つの花になる実は5個です。
タラノキは用土や日当たりなど、生育環境に左右されず成長します。肥料も庭木や観賞用として栽培する場合は特に必要ありませんが、新芽を食用として収穫するなら土壌改良のために肥料を施してもよいです。植え付け後は水やりも特に必要ありません。干ばつなどで土の乾燥がひどく目立つ場合は、適宜水やりしてください。
タラノキの植え付けは挿し木(挿し穂)を使いますが、定植後の成長は旺盛です。ただし植え替えは基本的に行わないので、植え付け時の株間は注意しましょう。樹丈2m前後でキープするのが管理上おすすめです。この高さでも、株間は50~60cmとりましょう。タラの芽畑として栽培するなら、2列の株間は1m以上が理想です。
タラノキは幹全体に鋭いトゲがあるので、害虫が寄生する心配がほとんどありません。葉にはトゲはありませんが、全体が毛に覆われ、毛自体がチクチクしているので好んで食べる虫はいません。病気の心配もありませんが幹や葉のトゲが危険なので、管理するときは注意が必要です。
タラノキの増やし方は挿し木が基本です。挿し木用の挿し穂は直径2~3cmの枝を選び、先端から15cmをのこぎりで切り落とします。ただしタラノキを挿し木で増やす場合は「ふかし」後に植え付けをしないと成長しません。
ボタニ子
タラノキの新芽や樹皮にはさまざまな成分が含まれており、食用や生薬として収穫することもあります。特にタラノキの新芽は「タラの芽」と呼ばれ、春が旬の野草としても人気です。またトゲが全体について危険なタラノキの樹皮にも、体の調子を整える成分が含まれています。
タラノキの新芽は食感・香り・風味がよいため、てんぷらやおひたしなどにして食べるのが人気です。ただし1本の幹から収穫できる新芽は平均3個しかありません。そのため新芽の収穫を目的に庭で栽培する場合は、少なくとも家族の人数分のタラノキを植えましょう。
「タラの芽」と呼ばれるタラノキの新芽は、独特の香りと風味が美味しいと人気です。そんなタラノキの新芽にはたくさんの栄養成分が含まれており、中でもβカロテン・ビタミンC・ビタミンEなどのビタミン類が豊富に含まれます。さらにカリウムやマグネシウム、ナトリウムなどのミネラル類も豊富です。
タラノキは冬を前に落葉するため、新芽であるタラの芽が出てくるのは春、収穫時期は4月中旬~5月下旬です。ただし植え付けしてから1年目は苗を大きく育てることが重要なので、1年目は収穫せずに残しておきます。2年目からは収穫できますが、収穫が遅れると大きくなりすぎて硬くなり食味も悪いです。
タラノキの樹皮には「おなかの調子を整える」「胃の不調を抑える」「血糖値の上昇を緩やかにする」などの効果があり、民間療法では生薬の原料に使われます。タラノキの根皮にも樹皮と同じ作用の成分があり、乾燥させてお茶にするのが人気です。ただし体温を上げる作用もあるため、のぼせやすい人や妊婦には適しません。
品種名 | 特徴 | 樹丈 |
---|---|---|
ノダラ | 原種(自生種)で個体数も少ない。新芽の品質は格段によい。 | 3~4m |
新駒みどり | トゲが少ないため、新芽の販売を目的とした栽培におすすめ。 | 1.5~2m |
静岡緑 | 柔らかく食べやすい新芽が特徴。販売を目的とした栽培が可能。 | 1.5~2m |
とげなしタラノキ | 静岡緑から特に優良な苗を改良した品種。収穫の安定が魅力。 | 1~1.5m |
七島 | 沖縄地方の変種といわれる。新芽の品質がノダラに近い。 | 3~4m |
「ふかし」とは、挿し穂を斜めにたてて芽が出るまで水やりする管理法です。