黒松は、本州・四国・九州の海岸沿いに広く分布しています。庭木や盆栽、海岸防風林など幅広く用いられる樹種です。クリスマスなどの装飾で親しまれる「松ぼっくり」を実らせます。
園芸部類 | 庭木 |
形態 | 常緑 |
樹高 | 高木 |
花の色 | 黄色 |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | やや強い |
特性・用途 | 庭木、盆栽 |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
黒松という名のとおり、樹皮が黒っぽいのが特徴です。樹皮だけで見分けられない場合は、葉先を触って痛いと感じるものは黒松と判別できます。そんな黒松は乾燥や湿気、大気汚染などのストレスに強いです。さまざまなストレスの中でも潮風に対する抵抗力がほかの樹木より強いので、防風・防潮林として植えられます。また、マメ科のように窒素固定菌と共生し、やせた土地でも生育できます。
植え付けは黒松の休眠期である2月~4月が適しています。定期的に根回しを行っているものは休眠期でなくとも植え付けが可能です。
基本的に、黒松は屋外で栽培しましょう。盆栽や庭木問わず屋外で栽培して、健やかな生育を目指します。
黒松は日が当たる環境を好みます。庭木なら日光が遮られない場所に植栽しましょう。
庭木の場合は、水やりを行わずとも十分に生育できます。しかし、幼い苗や盆栽のような小さい鉢で育てているものは水やりが必要です。水やりの時間帯は気孔が開いている朝が好ましいです。
基本的に水はけがよい土壌であれば、黒松の生育に問題はありません。用土は赤玉土、鹿沼土が好ましいです。枯れ枝や枯れ葉などの分解のされていないものを用土に混ぜるのは厳禁です。用土内が酸素不足になる危険性があります。窒素分を用土に含ませる場合は市販の腐葉土を用いましょう。
黒松は常緑で耐寒性があるため、冬に特別な対策は不要です。
12月~2月、黒松に有機肥料を施します。有機肥料は時間をかけて分解され、植物に吸収されます。冬場の施肥は、植物の成長が盛んな春に備えた養分になるのです。
マツカレハの幼虫が、黒松に害を与えます。幼虫は初夏に発生して、葉を食べます。葉の一部が茶色になっていたら、マツカレハの被害の可能性が高いです。繁殖を防ぐために殺虫剤を散布しましょう。
マツカレハと同様で、マツノミドリハバチの幼虫も黒松に害を与えます。その年伸びた柔らかい針葉を食べるのが特徴です。殺虫剤を散布して、繁殖を防ぎましょう。また、紹介した害虫は無理に殺虫剤を散布しなくても、鳥が害虫を食べてくれることがあります。枝透かし剪定で枝の重なりを減らして、鳥が害虫を見つけやすい環境をつくってあげましょう。
マツ材線虫病は、世界4大樹木病といわれるほど有名な病気です。マツの枯れる原因の多くを占めています。マツノザイセンチュウが仮道管に詰まり、枯死に至らせます。マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリが運んでくるため、防除することが難しいです。
葉ふるい病は、葉が落ちるのが特徴のカビ菌による病気です。梅雨時期~秋にかけて黒色で楕円形のやや盛り上がった菌体が多数現れます。7月~9月に薬剤散布をします。木が弱ると感染するので、樹勢を強くしましょう。
枝葉が多く、濃い緑色をしているものを選びましょう。枝ぶりが左右対称に出ているものが望ましいです。見た目がよいものは、今後の管理の簡易化、病害虫対策につながります。
黒松の休眠時期である2月~4月が好ましいです。根を切らないように慎重に行ってください。根の状態は、今後の生育に大きく関わります。
みどり摘みは、毎年5月頃に行う剪定です。マツは春に枝先から数本の新芽を出します。この新芽を「みどり」といいます。みどり摘みとは、この新芽が枝になり開く前に、元から摘み取って枝数を少なくしたり、新芽を途中で折り取って伸長を調整したりする剪定です。摘み方は、ハサミを使わずに指先で摘み取ります。長めの枝にしたい芽は芽先を1/3程度摘み取り、伸ばしたくない芽は1/3程度残して摘み取るのがポイントです。
もみあげは、毎年10月~12月にかけて行います。その年に出た葉を残し、その下部にある古い葉を手でむしり取る作業です。込み合う枝や枯れ枝を切り除いてから作業をすると楽にできます。また、上部の枝から作業をするのもポイントです。
黒松の開花時期は4月~5月です。雄花はその年伸びた枝の下部に多数つき、雌花は先端に1~3個つけます。松ぼっくりを採りたい場合は、みどり摘みを行わないようにしましょう。花後、受粉したものは翌年の秋ごろに松ぼっくりの姿になります。
基本的に、黒松は実生で増やします。播種してから発芽するまで必ず水を与えてください。発芽後は直射日光が当たらない、明るいところで管理します。実生苗の成長段階にあわせて鉢上げを忘れずにしてくださいね。鉢上げ時は、根を切らないように慎重にしましょう。
使用する挿し穂は、緑色の新芽を含むものが好ましいです。用土は小粒の赤玉土や調整ピートモス、バーミキュライトなどの保水性のあるものを使用します。挿し木したものは日光が過度に当たらない、湿度のあるところで管理しましょう。基本的に黒松は挿し木に適さない樹種なので、成功率は比較的低めです。あまり期待しないほうがよいでしょう。