クロマツ(黒松)とは?
日本に自生するクロマツ(黒松)は、主に本州から九州の海辺でよく見られます。紅葉せず1年中葉は緑色で、樹木は高く成長するためクロマツは常緑高木とされ、海の近くでは造林や砂防といった実用目的で植栽されるほか、盆栽としても親しまれています。
基本情報
クロマツ(黒松)の基本情報
名前 | 黒松(クロマツ) |
学名 | Pinus thunbergii |
分類 |
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生息地 |
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高さ | 15~40m |
別名 |
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用途 | 造林・砂防・庭木 盆栽・並木・建築など |
名前の由来
樹皮の色が黒味を帯びていることが名前の由来の黒松は、正月の門松の材料として古くから使用され、飾るさいは右に黒松を挿し、左に赤松を挿して飾ります。
クロマツの特徴
森林保護のための造林や砂の流出を防ぐ砂防、身近で親しむ盆栽や庭木など、さまざまな用途を持つクロマツ。その葉や樹皮、雄花や雌花、マツボックリなどにはつぎのような特徴があります。
特徴①葉
クロマツの葉の特徴
無数に伸びた枝の先のから針のような形をした線形の葉をたくさんつけ、鋭い先端を触るとチクチクした痛みを感じ、葉にはしなやかさと堅さがあります。深緑色の葉の中央はくぼんでいて、葉を切ると2つの陸があり断面が半月状になっています。
特徴②樹皮
クロマツの樹皮の特徴
樹皮の色は灰黒で名前の由来にもなり、樹齢を重ねた老木の樹皮はたくさんの深い亀裂が亀甲状にできています。若木のうちは樹皮にあまり裂け目がなく、亀甲状の裂け目は年数が経つにつれ深くなり、しだいに剥離していきます。
特徴③雄花
クロマツの雄花の特徴
クロマツは雌雄同株(雄花と雌花が同じ木に咲く)で、花は雌雄異花(雄しべと雌しべどちらかしか機能しない花)です。雄花の色は黄色で雌花よりも数が多く、その年にでた若い枝の下部に複数の雄花が固まってつきます。
特徴④雌花
クロマツの雌花の特徴
雄花、雌花ともに開花時期は4~5月です。雌花の色は全体が赤紫色、または先が紫がかった緑色をしていて、つく場所は必ずしも雄花の上というわけではなく、雄花の下になることや、同じ枝にはつかないこともあります。
特徴⑤果実
クロマツの果実の特徴
雌花は花が終わると果実になり種をつけますが種をだすまでには2年半ほど月日がかかり、果実は最初白っぽい色から茶色に変わり、1年目の夏には緑色となって冬越し、2年半後の秋にようやく茶褐色になって開きます。成長した果実は大きさが5cmほどの円錐形で、卵のような形をしています。
特徴⑥マツボックリ
クロマツのマツボックリの特徴
花のあと2年半経って完熟したマツボックリ(果実)は、種鱗(うろこ状のヒダ)のあいだに種を2個つけます。マツボックリが湿気っているあいだは種鱗が開かず、乾燥すると鱗片が開いて種子が風に乗り飛びだします。
つぎのページではクロマツの盆栽の育て方を紹介していきます。
クロマツの育て方「盆栽」
日本庭園の庭木や垣根としてよく植栽されるクロマツは古くから盆栽としても人気があり、今ではおしゃれなインテリアとしてクロマツのミニ盆栽を育てる人も多くいます。ここでは人気の盆栽の育て方(基本)を紹介していきます。
栽培カレンダー
育て方①置き場所
日当たりだけでなく半日陰や日陰にも適応
クロマツは日当たりのよい場所を好みますが、半日陰や日陰でも育てることができます。年間を通して風通しがよく、冬は霜や強風があたらない陽だまりで管理します。室内で育てる場合は、冬季1週間、それ以外は3日にいちどベランダや縁側などで日光浴させます。
育て方②水やり
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水やりは土がすっかり乾いてから
水やりは土がすっかり乾いてから、目安として春と秋は1~2日に1回、夏は1日に2回、冬は3日(状態を見て)に1回の頻度で、鉢底からたっぷりと水がでてくるまで与えます。土を少し乾燥気味にして育てると味のある荒々しい樹皮になり、小さいながらも風格がでてきます。
育て方③肥料
固形の有機肥料を施肥
肥料は月1回(ただし梅雨期と真夏は施肥しない)、チッ素・リン酸・カリウムが配合された固形の有機肥料を土の上に置き肥します。すでに配合済みの盆栽用肥料が使いやすくおすすめ。置き肥は長く置いたままにしておくとカビがはえてしまうので、毎月交換するようにしましょう。
育て方④剪定
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剪定は長く育てるのにかかせない作業
剪定は春に間延びした芽の付け根部分と、芽切りのさいに切らなかった箇所の葉を3枚ほど残し、ほかはすべて切り落とします。剪定には以下のような役割があります。
- 成長を促進させ新芽や枝振りをよくする
- 樹形を一回り小さくする
- 日当たりや風通しをよくする
育て方⑤針金かけ
針金かけは樹形の成形作業
針金かけは枝を針金で固定して曲げる樹形の成形作業で、樹木が休眠している冬のあいだにおこないます。太くない枝は11~3月に針金をかけ、太い幹や大きく曲げたい枝は2月すぐに針金かけして固定し、針金は半年から長くて1年はかけたままにしておきます。幹が太くなって針金が食い込みはじめたら早めにはずし、もういちど針金をかけ直します。
育て方⑥芽摘み
芽摘みすると樹形が整う
形の良い樹形にするため、勢いよく伸びはじめた芽を半分に折り取って、短い芽や伸びの弱い芽を残し育てていきます。芽摘みすると秋にでてくる2番芽が綺麗にそろい、樹形が整います。
育て方⑦芽切り
芽切りも樹形の成形に重要
夏におこなう芽切り作業も樹形の成形に重要で、芽切りすると葉の長さが短くたもて葉の数も増えます。芽摘みのあと成長が悪かった弱々しい芽を葉を切らないように付け根から切り落とし、1~2週間時間をあけて今度は強く成長した芽を切り取ります。
育て方⑧葉すかし
葉を間引いてそろえる
葉すかしは、葉の密集している場所や古い葉を間引いて葉をそろえる作業です。クロマツは11月ころになると古い葉をしぜんに落としますが、落ちなかった葉は指やピンセットを使って取り除きます。ただし弱い葉はそのままにしておきます。
育て方⑨植え替え
時期は新芽の出始め
1~2年にいちど植え替えしますが、樹皮におもむきがでてきたら3~4年にいちどの植え替えにします。植え替えの時期は、春期の新芽がでてくるころがベストです。
植え替え用土
用土は赤玉土・黒土・天神川砂を5:2:3の割合でブレンドするか、赤玉土・桐生砂(または山砂)を6:4の割合でブレンドして使います。
クロマツとアカマツ(赤松)の違い
アカマツの基本情報
名前 | 赤松(アカマツ) |
学名 | Pinus thunbergii |
分類 |
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生息地 |
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高さ | 20~30m |
別名 |
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4つの違い
クロマツとアカマツには、以下のような4つの違いがあります。
- 生息地…大きく分けてクロマツは海辺、アカマツは山地に生息
- 幹の色…アカマツの幹は赤茶色
- 新芽の色…クロマツの新芽は白で、アカマツは茶色
- 感触…アカマツは柔らかく、触れても痛くない
まとめ
日本庭園や盆栽、門松など、日本の情緒あふれる景観や古くからの風習にかかせない樹木「クロマツ」。荒々しい樹皮にシャープな葉という豪快さと繊細さをあわせ持つ魅力的な樹は、近年ミニ盆栽として楽しむ人も増えています。比較的育てやすい樹木なので、興味のある人は小さな盆栽から育ててみましょう。
出典:写真AC