水芭蕉は、日本の本州から北海道の湿原や沼地に自生する多年草のひとつです。日本では古来より歌や俳句に登場し、人びとの生活に密着してきました。童謡「夏の思い出」にも登場する花なので夏に咲く花と思われがちですが、本来の開花時期は春の3~4月です。湿地を好む花のため、通常の園芸用の花よりもやや栽培難易度が上がります。しかし、水芭蕉が好む環境に整えられれば、きれいな花を咲かせられますよ。
園芸部類 | 草花 |
形態 | 多年草 |
樹高・草丈 | 30~60cm |
花の色 | 白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 | 観賞用 |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
水芭蕉の大きな特徴は花の形状です。一枚の白い花びらのように見える箇所は、花ではありません。「仏炎苞(ぶつえんぼう)」と呼ばれる、葉が変化したものです。仏炎苞に包まれた黄色い円柱部分が花で、「花序(かじょ)」と呼ばれます。水芭蕉の花の開花時期は自生する場所によって変化します。低地では3~4月ごろ、尾瀬などの高地では5~6月ごろが見頃です。
自然界で自生している水芭蕉は絶滅危惧種に指定されています。そのため、群生地などに行って株を持ち帰るなどの行為は行わないでください。大手ネット通販サイトや園芸店などで販売されている苗は、栽培して増やしているものです。販売されているものを購入して育てること自体に問題はありません。
アメリカミズバショウは北アメリカの西海岸に自生する種類の水芭蕉です。別名を「コガネミズバショウ」「キバナミズバショウ」ともいい、黄色の仏炎苞が特徴といえます。水芭蕉と同様に、湿地にや水辺が主な生育地です。まるでスカンクのような臭気があるため、英名で「westurn skunk cbbage(ウェスタン・スカンクキャベツ)」とも呼ばれています。
植え付け時期 | 3~4月頃 |
肥料の時期 | 3~9月頃 |
株分けの時期 | 3~4月頃 |
種の収穫時期 | 6~7月頃 |
花が咲く時期/開花時期 | 3~4月頃(低地)、5~6月頃(高地) |
水芭蕉の開花時期は?
水芭蕉の開花時期は、栽培している土地によって変化します。本来の開花時期は3~4月の春が基本です。しかし、寒冷地や気温の低い高地では5~6月の初夏が開花の目安です。
低地での植え付け・植え替え時期は3~4月の春が理想です。しかし、寒冷地や高地など気温が低い土地での栽培の場合は時期をずらし、4~5月ごろに行いましょう。水芭蕉は冬が休眠期のため、気温が上がらないうちに植え替えなどを行うと球根が傷みやすくなってしまいます。しかし、暑さに弱い植物でもあり、夏になってからでは遅すぎます。時期を見誤ると根付かず枯れてしまうこともあるため、気温に注意して管理しましょう。
水芭蕉は、鉢植えと庭植えどちらでも育てられる植物です。しかし、土の管理や水やりなどが少々難しい植物のため、鉢植えの方が育てやすいでしょう。特に低地では夏の間の管理が重要です。栽培場所を気軽に移せるという意味でも、鉢植えでの管理がおすすめです。
水芭蕉を上手に育てるには、温度の管理も重要です。栽培地の気温に応じて室内・屋外の両方を利用して育てましょう。もともと水芭蕉が自生しているような環境の寒冷地に限り、屋外のみの管理でも問題はありません。
水芭蕉はじめじめとした湿地で育つ植物のため、涼しい日陰で管理しましょう。しかし、太陽の光が全くない状況では育ちにくく、適度に日光を当てることも大切です。一日中日陰の場所ではなく、時間によって日陰と日なたが変化するような場所で管理してください。
水芭蕉は暑さに弱いという特徴があり、気温が上がりすぎると枯れてしまいます。特に低地で育てる場合は、夏場の気温には注意しましょう。気温が30℃以上になる場合は室内に移動させたほうが賢明です。また、常に用土が湿った状態で管理する必要があるため、日光の当てすぎで用土が乾燥しすぎないように注意しましょう。
水芭蕉は、保湿力があり肥沃な用土を好みます。適しているのは田んぼの土です。市販で販売されている用土を利用する場合は、水持ちがよく粘土質の荒木田土がよいでしょう。通常の園芸用土に水コケを使用し、常に水を含ませておくという育て方も可能です。
水芭蕉の自生している環境は、沼地や湿地などの水辺です。この栽培環境を再現するために、水鉢に園芸用の用土を入れて水を張った状態で育てるのもおすすめですよ。「この用土でなければダメ」ということはありません。常に用土が湿った状態で管理することが大切なため、栽培環境にあわせて選んでみてください。
水芭蕉は、用土が冷たい水に浸かっているような状態での管理が望ましいです。そのため、水やりの頻度よりも、湿度や温度の管理が重要です。水芭蕉を日陰で管理していたとしても、用土は徐々に乾燥していきます。定期的に用土の状態をチェックしてください。水やりをするというよりも、常に土が湿っているかで考えましょう。水芭蕉の栽培環境に近いような、清廉で冷たい水に浸かっている状態を保つことが大切です。
水鉢を利用して水を張った状態で管理している場合は、夏の間の水温に気をつけましょう。水芭蕉を育てるのに最適な水温は20~28℃です。これ以上の水温になると株が傷み、枯れに繋がります。特に夏場は、定期的に水鉢の水を入れ替えて、常に新鮮な水でひんやりとした状態を保ってください。
水芭蕉の施肥には油粕などの有機肥料を与える方法と、遅効性の化成肥料を少量与える方法の2種類あります。有機肥料を与える場合は花後に使用しましょう。遅効性の化成肥料の場合は、与えすぎると植物の育成を阻害してしまうため、生育期の3~9月の間で3~6週間ごとに少量施肥するとよいでしょう。栽培環境にあわせて選んでくださいね。
水芭蕉は、害虫被害がほとんどない植物です。害虫被害による枯れなどは発生しません。しかし、栽培環境の悪化が原因での枯れや根腐れなどが起こる可能性があるため、特に夏場は注意して観察することが大切です。
水芭蕉は病気にかかりにくい植物のため、病気対策は特に必要ありません。新鮮で清潔な水を使った用土の管理が、水芭蕉を丈夫に育てるコツです。
水芭蕉の花後の管理は特に必要ありません。水芭蕉の花後は穂が倒れ、そのうちに枯れてしまいますが、根は生きておりそのまま冬越しが可能です。しかし、花後に種が採取できるため、水芭蕉を増やしたい場合はその種を利用するとよいでしょう。
水芭蕉の種まきは、花後の種を採取したらすぐに行いましょう。開花時期を過ぎた6~7月ごろが種まきの目安です。
水芭蕉の苗を選ぶときは、葉がみずみずしい緑色のものを選びましょう。茶色や黄色っぽく変色しているものは、株が弱っているか、枯れてしまっている可能性があります。また葉がぴんとしていて、幾重にも重なっているものも、状態のよい苗の証拠です。しっかりとした重さのあるものを選ぶとよいでしょう。
状態のよい苗のチェックポイント
水芭蕉の植え替えは2~3年に1回、開花時期と同じ3~4月ごろが適期です。しかし、高地での栽培でまだ気温が低い場合は、少し時期をずらしても問題ありません。「水芭蕉の花が咲く時期に植え替える」と覚えておくとよいでしょう。また、植え替える際には用土も新しいものに取り換えることをおすすめします。
水芭蕉は暑さに弱い植物のため、夏の間はしっかりとした管理が必要です。気温が30℃以上になる場合は鉢置き場所を日陰に移動させ、水や用土が温まらないようにしましょう。水鉢で育てている場合は水替えや流水を行い、水温が上がらないようにするのも大切です。鉢植えで育てている場合は、定期的に水コケを変えたり、新鮮で冷たい水を入れたりして、土の温度が上がらないようにしてください。
水芭蕉は、冬は休眠期に入ります。秋~冬にかけて地上部分は枯れてしまいますが、根は生きています。雑草などが生えてきたら適宜抜くなどこまめに手入れをしましょう。また、水鉢で育てている場合は水が凍ってしまう場合もあるため注意が必要です。気温が低いときは屋内に移動させるなど対策を取りましょう。
水芭蕉は、花後の種を利用して種から増やせます。水芭蕉の仏炎苞が枯れたあとの残った肉穂を利用する方法が一般的です。肉穂を採取したら、水に浸けておくことで発芽します。発芽して1~2週間ほどすると葉が生えてきます。1本ずつ用土に植えていきましょう。発芽しにくい場合は水温が高い可能性があるため、日陰や涼しい場所で管理するとうまくいきますよ。
水芭蕉は、2~3年ほど育てると子株を出すことがあります。子株を利用して、株分けでも増やすことが可能です。2~3年に1回の植え替えのタイミングで行うとスムーズです。株分けをするときは、根の傷みを防ぐため、なるべく根鉢を崩さないように行います。
水芭蕉の苗
参考価格: 1,199円
専用ポッドに植えられた状態で販売されている水芭蕉の苗です。休眠期に購入する場合は、地上部が無い球根だけの状態で届きますが、根は生きているのでそのまま植え付けができますよ。
手軽さ | ★★★★☆ |
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育てやすさ | ★★★☆☆ |
出典:写真AC