ミズバショウについて
ミズバショウは高原や山間部の湿地で見かけます。水辺でひっそりと咲く様子は可憐な妖精のようです。このミズバショウとはどんな植物なのか、ここで詳しく説明します。
ミズバショウの基本情報
属名 | サトイモ科ミズバショウ属 |
学名 | Lysichiton camtschatcense |
分類 | 湿性植物 |
草丈 | 30~60cm |
開花時期 | 3月下旬~4月 |
花色 | 白 |
ミズバショウは春の花
ミズバショウは寒さには強いのですが、暑さに弱い花です。山間部の湿地や沼地などで水がきれいな場所を好んで自生します。草丈は大きいもので60cmで、成長するにつれてどんどん上に伸びて行きます。開花時期は低地では3月~4月の早春で、気温が低い高地では5月~7月です。
ミズバショウの名前の由来
イトバショウ(糸芭蕉)に似ていることが由来
ミズバショウの葉がイトバショウ(糸芭蕉)によく似ていて、水辺の花なので水芭蕉という名前が付きました。イトバショウは沖縄や奄美群島に生息して、草丈2m以上にもなる植物です。葉から繊維を取って芭蕉布という生地が作られます。
芭蕉布は沖縄や奄美群島の特産品
芭蕉布は薄くて着心地が涼しいので、高温多湿な気候の沖縄や奄美群島では、衣類として昔からよく利用されています。
ミズバショウの特徴
ミズバショウの生息地
多湿な水辺を好む
ミズバショウは乾燥に弱い湿性植物です。湿原や川などの水辺に根を張り、花や葉を伸ばして生息します。山間部の水がきれいな湿地などを特に好みます。
冷涼地を好む
ミズバショウは寒さには強く、暑さにはとても弱い植物です。そのため日本では中部地方以北から北海道までに多く自生して、暖かい地方では育ちません。
ミズバショウの花
白い部分は花ではなくて仏炎苞
ミズバショウの白い部分が花だと思われがちですが、実はこれは花ではなくて葉が変形したもので、仏炎苞(ぶつえんほう)というものです。
花は中心の肉穂花序
本当の花は、中心にある棒のような軸に無数に付いています。こういう穂状になった花を肉穂花序(にくすいかじょ)といいます。
ミズバショウの葉
ミズバショウの葉は花が出た後に急速に伸びて行きます。葉の幅は15~30cmで表面はなめらかでやや光沢があります。長さは40cmから、長いもので100cmほどまで大きくなるものもあります。
ミズバショウの増え方
ミズバショウは中央にある肉穂花序(にくすいかじょ)が受粉すると種ができます。種が完熟すると穂が砕けて水面に落下します。種は軽く浮きやすいので、水の流れに任せて別の場所に移動して定着します。その後約3年で花が咲くまでに成長します。また種のほかに、地下茎を伸ばすことで株を増やすこともできます。
ミズバショウの毒性
ミズバショウの葉から出る汁が肌に触れるとかぶれてしまいます。また根には毒性があって、吐き気や呼吸困難などを起こします。クマがミズバショウを食べることがあるのですが、これは冬眠後の老廃物を嘔吐や下痢で体内から排出するために利用しているのです。人間は絶対に食べないように気をつけてください。
ミズバショウの見頃の時期
ミズバショウの開花は3月下旬~4月
ミズバショウの開花時期は平地で3月下旬~4月です。最初は小さな花ですが日に日に大きくなっていきます。それとともに葉も大きく伸びてくるので、そのうち花が目立たなくなります。そのため、葉がまだ小さい咲き始めの頃がミズバショウの花の見頃と言えます。
では、どうしてミズバショウは夏の思い出として歌われているの?
山間部での開花時期は5月~7月
春に咲くミズバショウが、どうして夏の思い出として歌われるのかというと、山間部で平地より気温が低い場所では、ミズバショウが咲く時期が遅れるからです。「夏の思い出」に出てくる尾瀬のミズバショウは、雪解けが遅いために5月末~6月頃に咲きます。その頃は平地ではもう初夏の陽気の季節なので、ミズバショウは夏の花、というイメージが強くなったのでしょう。
出典:筆者撮影