マタタビは日本の北海道~九州全土の野山に自生している落葉蔓性低木のひとつです。旅人がマタタビの実を食したことから「また旅」と名付けられました。
園芸部類 | 野草 |
形態 | 落葉蔓性低木 |
樹高・草丈 | 2~10m |
花の色 | 白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 観賞用、食用 |
栽培難易度※猫害予防をしている場合 | ★☆☆☆☆ |
マタタビの大きな特徴は、株によって雄株と両性株があることです。花はどちらにも咲きますが、結実するのは両性株のみなので、実の収穫を目的として栽培するときは株の種類に気をつける必要があります。開花時期は6~7月で、花後の実は食用や果実酒の材料として人気です。元来が野草なので丈夫で枯れにくく、初心者でも挑戦しやすい植物といえるでしょう。
マタタビの葉は、梅雨の時期になると先端が白化します。白化する原因ははっきりと分かってはいませんが、開花時期を虫に知らせるためだという説があります。白く変化している部分は着色されているわけではありません。葉の表層が浮き上がって空気が入り込み、光を反射して白く見えているだけです。開花時期を過ぎると葉の色は元の緑色に戻るので、花が咲く時期のみの特徴ともいえるでしょう。
猫がマタタビを好むのは、「マタタビラクトン」という成分が含まれているからです。マタタビラクトンには、猫の脳神経を麻痺させて酔っ払ったようないい気分にさせる作用があります。マタタビを栽培するときは、猫の被害にあわないように管理することがとても大切といえるでしょう。
マタタビの実は通常は細身のどんぐり型ですが、ずんぐりとしたカボチャのような形の実がついていることがあります。これは「虫こぶ」といい、開花時期にマタタビノアブラムシやマタタビミタマバエなどの虫に寄生された姿です。寄生されると子房の部分が膨れて虫こぶとなるので、見た目は果実でも果実ではありません。そのため、実ができない雄株でもみられる特徴のひとつです。
マタタビの大敵は、猫であるといっても過言ではありません。猫による被害があるかないかで、栽培難易度が大きく左右されます。猫はマタタビの臭いに引き寄せらるため、若芽を食べてしまいます。また、野良猫が多い地域では庭に猫が集まってしまい、ほかの植物にも被害が出ることもあるでしょう。排せつ物の臭いでご近所トラブルにもなりかねません。野良猫が多い地域でマタタビを庭植えするのは避けましょう。
ミヤママタタビ
参考価格: 1,650円
ミヤママタタビは、日本の本州中部以北に分布するマタタビ科の植物です。ミヤマは「深山」の字があてられており、その名のとおり深い山の中で自生しています。マタタビとのわかりやすい違いは葉の色でしょう。ミヤママタタビの葉は白化したのち、花が落ちる頃に深い赤紫色に変わります。マタタビの葉は赤く変色しないため、見分けがつきやすいですよ。
レア度 | ★★☆☆☆ |
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栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
オニマタタビは、中国原産のマタタビ科の植物です。別名を「シナサルナシ」と呼び、森や里山など草木が茂ってた場所に自生しています。キウイフルーツの元となった品種なので、キウイフルーツをオニマタタビと呼ぶこともあります。果実は甘く、もともとは食用として利用されていました。しかし現在では生薬として扱われることが多い植物です。
キウイフルーツ
参考価格: 1,782円
日本でもよく食べられているキウイフルーツもマタタビ科の植物です。もともとは中国原産の「オニマタタビ」を品種改良して作られました。「キウイ」という呼び方は、ニュージーランドのシンボルである「kiwi(キーウィ)」という鳥にちなんでつけられた名前です。マタタビと同じように猫の好む香りがするため、栽培は猫害に注意する必要があります。
レア度 | ★☆☆☆☆ |
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栽培難易度 | ★★★☆☆ |
サルナシ
参考価格: 1,000円
サルナシは、日本や朝鮮半島、中国に分布するマタタビ科の植物です。別名をシラクチカズラともいます。甘く小さな果実はサルやクマ、鳥の好物で、野生動物の貴重な食料として重要視されてきました。商品として流通しているものはベビーキウイと呼ばれています。大きいスーパーやショッピングモールで販売されることも増えてきたため、見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
レア度 | ★★★☆☆ |
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栽培難易度 | ★★★☆☆ |
植え付け時期 | 11~4月頃 |
肥料の時期 | 1~2月頃 |
収穫の時期 | 9~10月頃 |
剪定の時期 | 適時 |
花が咲く時期/開花時期 | 6~7月頃 |
マタタビの植え付け時期は?
マタタビは寒さに強い植物なので、植え付けの季節も11~4月と長期間です。どのタイミングで植え付けを行っても問題なく育ちます。心配な方は、成長期である春の暖かい季節に植え付けを行いましょう。
マタタビの剪定時期は?
マタタビは特に剪定をしなくても問題なく育ちます。しかし、風通しが悪くなると病気や害虫被害にあいやすくなるので、ツルが混みあっているところは、その都度間引きましょう。また、葉が落ち始めた秋~冬に、古いツルを剪定すると次の年の成長がよくなります。マタタビは新しいツルが赤紫色、古いツルは茶色をしているので見分けがつきやすいですよ。
鉢植えでマタタビを育てる場合は、支柱をさしてツルを這わせる方法が一般的です。数本の支柱に輪がついたフレームを使用する「あんどん仕立て」での管理がよいでしょう。四方八方に伸びるツルをうまく紐で固定すれば、コンパクトに育てることも可能です。
マタタビを庭植えで育てる場合は、ネットやトレリスを利用した「垣根仕立て」か、棚を組んで「棚仕立て」で管理しましょう。半日陰で湿度が高い場所を好むので、庭の北側などでも問題なく育てられます。庭で育てるときは、猫の被害にあわないように十分な対策が必要です。
マタタビを室内で育てる場合は、日光が当たりすぎない場所で管理するとうまく育ちます。特に直射日光には弱いため、なるべく日陰で風通しのよい場所に置きましょう。屋外で育てる場合も同様に、日光が当たらない半日陰で管理します。
マタタビは直射日光に弱く、当てすぎると葉が弱り枯れに繋がります。置き場所は必ず日が当たりにくい場所を選んでください。耐寒性が強いので、北向きの窓辺や庭でも育てられますよ。また、マタタビはやや湿った環境を好みますが、風通しが悪い場所での管理は病気や害虫の被害にあいやすくなります。しっかりと風が抜ける場所で育てましょう。日本の山林と同じような環境を整えることが大切ですよ。
マタタビはもともとは野草なので、よほど乾燥した土でなければ用土にこだわらず育てられます。自分で用土を作る場合は、赤玉土と腐葉土を6:4の比率で混ぜ合わせたものを使いましょう。また、市販の培養土を使用しても問題ありません。庭植えの場合は特に用土を作らなくても栽培できますが、腐葉土を混ぜ込むと水はけがよくなるのでおすすめです。
マタタビは湿り気のある環境を好むので、たっぷりと水やりしましょう。しかし水やりをしすぎると根腐れをおこし、枯れてしまうことがあるので注意が必要です。鉢植えの場合は、用土が乾き始めたらすぐにたっぷりと水やりを行います。夏場は1日1回程度、そのほかの季節は2~3日に1回程度が目安です。受け皿の水は根腐れの原因になるため、その都度捨てましょう。庭植えの場合は降雨で十分育つので、水やりの必要はありません。
マタタビは、植え付けと植え替えのときに遅効性の化成肥料を与え、あとは肥料なしでも十分育ちます。しかし、株をより大きくしたい場合は1~2月に液体肥料を与えるとよいでしょう。
ヨツボシクサカゲロウはアブラムシを食べる益虫として有名です。しかし、オスのみマタタビの臭いに反応して食害を引き起こします。予防は難しいので、発生しだい駆除しましょう。ヨツボシクサカゲロウは夜行性で光に集まる習性があるので、虫駆除用の電気式殺虫器具の取り付けを行うのが効果的です。難しい場合は市販の殺虫スプレーで駆除してください。
アメイロハバチモドキは6~7月に発生し葉を食害します。見つけ次第殺虫剤などで駆除しましょう。予防策は屋内で育てることです。庭植えの場合は予防は難しいため、発見したら市販の殺虫スプレーを使い、都度駆除してください。
猫のマタタビへの被害は、鉢植えで室内管理を行うことで防げます。庭植えの場合は、野良猫が少ない地域であればネットなどで覆って育てることも可能です。しかし、匂いにつられて猫が庭へ入り込んでしまうことまでは防げません。栽培している地域に野良猫がいるかいないかを調査してから、鉢植えか庭植えかを検討するとよいでしょう。猫が入ってこられないベランダなどで楽しむのもおすすめですよ。
マタタビは病気になりにくい植物です。しかし、水やりのしすぎや水もちがよすぎる場所で栽培すると、根腐れを起こして枯れてしまうことがあります。鉢植えで育てている場合は水やりのしすぎに注意し、受け皿にたまった水は、その都度捨ててください。庭植えで育てている場合は、用土に腐葉土を混ぜ込むことで水はけをよくできますよ。
マタタビは花後の管理は必要ありませんが、見栄えを気にする場合は花がら摘みを行ってもよいでしょう。ただ、実を採取する目的で育てている場合は子房を摘んでしまうと実がならなくなってしまうので注意が必要です。
マタタビは種まきでの栽培が可能です。しかし、マタタビの発芽率は約45%と低めなので、難易度が高いでしょう。種は園芸ショップや大手ネット通信販売サイトで購入できます。また、花後の果実から種が採取できるため、近くにマタタビが自生していたり、すでに栽培していたりする場合はそれらを使用するのもよいでしょう。種まきの適期は5~10月です。
マタタビには雄株と両性株がありどちらかは種の状態からは判断できません。ある程度育てて開花時期を迎えた頃に、花を観察してようやくわかります。もし果実が目的でマタタビを栽培するなら雄株と両性株の両方を育てる必要があるため、種まきでは確実性がありません。挿し木や苗を使用するのが無難でしょう。
マタタビの苗を育てるには、温度管理が重要です。マタタビは20~27℃以上で発芽するので、暖かくなった季節に種を育苗ポットにまいて栽培しましょう。10~20cmほどの大きさまで育ったら鉢に植え替えて栽培します。
マタタビの苗を選ぶときは、ツルや葉に張りがあり、鮮やかな緑色のものを選んでください。葉が食害にあっているものは株自体が弱っている可能性があるため、避けたほうが無難です。また、マタタビには雄株と両性株があり果実をつけるのは両性株のみです。果実を楽しみたい場合は、受粉ができるように雄株と両性株の両方を選びましょう。
マタタビを鉢植えで育てている場合は、鉢底から根が飛び出していたり、水がしみていかなくなったりしたら植え替えのタイミングです。ひと回り大きい鉢に植え替えましょう。植え替えに適した季節は5~6月頃です。株分けも行いたいときは植え替えと同じタイミングで行うと効率がいいのでおすすめです。庭植えの場合は植え替えの必要はありません。
マタタビは、ツルや葉が茂りすぎていると害虫被害にあいやすくなります。また、風通しが悪くなり、株が蒸れてしまうので、枯れの原因にもなります。適時剪定をすることで害虫被害や湿度の上昇を予防でき、失敗しにくくなるでしょう。
マタタビの剪定は、ツルが茂っている箇所を間引くイメージで行います。また、落葉後は古いツルを剪定するチャンスです。ツルが茶色い木肌のようになっているものは古いツルなので、風通しがよくなる程度に剪定してください。
マタタビは夏越しの対策は特に必要ありません。しかし、夏の直射日光はやや苦手なため、心配な方は室内管理に切り替えましょう。
マタタビは寒さにとても強いので、屋外でも問題なく冬越しできます。そのため、対策は必要ありません。
株分けは、鉢植えで育てている場合におすすめの増やし方です。株分けを行うときは、ツルをある程度切り戻し古い根を取り除いてから植えつけましょう。植え替えのときに行うと効率がよいのでおすすめです。ある程度成長し、丈夫な株になってからの増やし方なので、挿し木よりも失敗が少なくおすすめですよ。
マタタビを庭うえで育てている場合は、挿し木で増やすとよいでしょう。株分けと違い、根を掘り起こす手間が省けて便利です。挿し木で増やす場合は切ったツルを水揚げし、用土に挿して乾燥しないように水やりをしましょう。約2週間後くらいに新芽が出てくれば成功です。
マタタビの花後の実を採取し、その種を使って種まきを行います。発芽率が低く、また栽培してから花が咲くまで2~3年ほどかかるので、あまり一般的な方法ではありません。
マタタビの苗
参考価格: 1,635円
マタタビの苗は、大手ネット通信販売サイトや園芸ショップで購入できます。ある程度育った状態からスタートできるので、失敗が少ないのが嬉しいポイントです。雄株や両性株が判別している状態で購入できるので、栽培目的にあわせて選択しましょう。
育てやすさ | ★★★★★ |
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出典:写真AC