ピンクッションは、南アフリカの沿岸部を原産地とする植物です。一度見たら忘れられない個性的な花姿と、非常に花もちがよいことから、園芸ではおもに切り花やドライフラワーとして扱われています。一方、ピンクッションは、ガーデニングにおいては中級者以上向けの植物とされています。理由は寒さと過湿に弱いため、日本の気候では栽培が少し難しいからです。
園芸部類 | 鉢植え |
形態 | 非耐寒性常緑低木 |
樹高・草丈 | 1.5m~2m |
花の色 | 赤、黄色、オレンジ |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 | 鉢植え、切り花、ドライフラワー |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
ピンクッションは非常に花もちがよく、開花すると6週間~8週間咲き続けます。この花もちのよさから、切り花として扱われることが多いです。また非常に個性的な花は、1つの花ではありません。多数の花が集まって花の形を形成しています。ピンクションのピンのような細い部分は、花びらではなく1つの花なのです。このような花の構造を「頭状花序(とうじょうかじょ)」と呼びます。
「ピンクッション」という名前の意味は、裁縫で使用する「針山(針刺し)」です。ピンクッションの花形が、待ち針がたくさん刺さっている針山に似ていることから、この名前がつけられました。また学名の「レウコスペルマム」は、ギリシャ語で「白い種子」という意味です。開花後につける種子が白いことに由来しています。
生花やドライフラワーで人気が高いピンクッションは、フラワーアレンジメントの花材として、高い人気を誇ります。独特の花形と明るい花色、花言葉もよい意味が多いため、贈り物にも問題なく使える花です。ピンクッションは個性の強い花姿のわりには、ほかの花材ともケンカしません。多種類の花と組み合わせた寄せ植え風の作品にしても、素敵な作品ができるでしょう。
タンゴはピンクッションの赤花品種です。特徴としては、赤~濃オレンジ色の鮮やかな花色と大きめの花、全体的にガッシリとした印象の花姿があげられます。ドライフラワーに加工しても色の変化が少ないため、ドライフラワーの花材によく利用されている品種です。
カーニバルイエローはピンクッションの園芸品種「カーニバルシリーズ」の1つで、淡黄色が特徴の品種です。その他のカーニバルシリーズには、鮮やかな赤色のカーニバルレッド、カーニバルイエローよりも濃い黄色が特徴のカーニバルコッパーがあります。カーニバルシリーズの品種はあまり大きくならないため、狭い庭でも育てやすいです。
植え替え(植え付け)の時期 | 5月(開花後) |
剪定の時期 | 5月(花後剪定) |
花が咲く時期/開花時期 | 3月~5月 |
ピンクッションの植え替えの適期は、花が咲き終わる5月中旬~5月下旬です。ピンクッションの栽培は、春に流通する開花苗から育てるのが基本となるため、一回り大きな鉢に植え替える鉢増し作業が中心となります。
ピンクッションは寒さに弱いです。このため日本で栽培する場合、地植えは不向きとされています。7℃~10℃以下になると枯れる恐れがあるので、寒冷地は気温の管理に注意しましょう。暖地は夏の季節に要注意です。ピンクッションは高温多湿な環境にも弱いため、夏特有の高温や湿気でダメージを負ってしまう恐れがあります。
ピンクッションの置き場所は、日当たりと風通しがよい場所であることが絶対条件です。鉢は地面ではなく、棚の上に置いたり、プランタースタンドを使ったりして風通しをよくするのもおすすめです。ピンクッションは過湿を嫌うため、梅雨時や雨の日が続くときなどは、雨にあたらない場所に移動させましょう。
ピンクッションの栽培に適しているのは、酸性で水はけのよい用土です。自分で土を作る場合は、鹿沼土5:ピートモス(酸度未調整)3:パーライト2の配合で作りましょう。市販品ですませたいなら、ピンクッションと同じく酸性土壌を好むブルーベリー用の培養土がおすすめです。
ピンクッション栽培で管理に気を遣うのが水やり作業です。ピンクッションは過湿に弱いため、水をやり過ぎると、すぐに根腐れを起こして枯れてしまいます。しかし水切れにも弱いので乾燥させ過ぎもNGです。ピンクッションの水やりは、春と秋は2日に1回、夏は雨が降らない日、冬は1週間に1回が目安です。
ピンクッションは、本来はやせ地で自生している植物で、少ない養分でも生きられる性質を持っています。このため、あまり肥料を必要としません。春と秋にリン酸の少ない肥料を少量与える程度で十分です。
ピンクッションの栽培過程で、特別警戒すべき病気や害虫はありません。ただし、梅雨時や真夏の高温多湿な時期に入ると発生しやすい根腐れには注意が必要です。
ピンクッションは、春頃に流通する開花苗での購入が基本です。花色や葉色が鮮やかで、枝ぶりがしっかりしているものを選びましょう。株に対して鉢の大きさが釣り合っているかどうかもポイントです。小さいと感じたなら、開花後に鉢増ししましょう。
ピンクッションの植え替えは開花後に行います。一回り大きな鉢と新しい用土を用意し、根鉢を崩さないようにして植え替えましょう。根鉢が崩れると根が傷んでしまうため、崩れないよう慎重に行います。
ピンクッションの栽培で行う剪定は、花がら摘みと花後剪定の2つです。つぼみの開花をうながし、株もちをよくするために、咲き終わった花は早急に切除します。すべての花が終わったら、土の表面から15cmほどの位置で剪定しましょう。ただし植え替え作業をしている場合は、株を落ち着かせるために10日以上置いてから剪定作業をします。
ピンクッションの夏越しは高温多湿への対策がカギです。基本的には日陰~半日陰の涼しい場所に置いて管理します。ピンクッションが枯れるのは、ほとんどが過湿による根腐れが原因です。湿気と水のやり過ぎに注意しましょう。
熱帯地域原産のピンクッションは、寒さに弱い植物です。冬の間は室内管理が基本です。光を好む性質なので、窓辺など日当たりのよい場所に置いて管理しましょう。
ピンクッションの場合は種まきと挿し木の2つが用いられています。しかし、どちらの方法も日本で行うのは難しいです。まず挿し木の場合、ピンクッションが好む気候と日本の気候があっていないため、成功率が低いという問題があります。種まきも難しいでしょう。ピンクッションの種は日本ではあまり流通していないため、入手が困難なのです。
出典:写真AC