分類 | 単子葉植物イネ科ドクムギ属 |
形態 | 一年草 |
樹高・草丈 | 40~80cm |
花の色 | 白 |
花期 | 5~7月 |
生息場所 | 道端、空き地、公園、草地 |
分布 | 日本全国 |
利用の可否 | 可 |
ネズミムギは麦畑に混入して生えますが、食用には不向きな植物です。ネズミがつく植物は役に立たない種類が多く、ネズミムギも食べられないことが名前の由来です。また、英名のイタリアンライグラスはイタリアから栽培が始まったことに由来します。
ネズミムギは目立った花をつけません。4月になると茎をのばし、枝を出さずに小穂を直接つけます。小穂の数は15~25個で左右交互に互生し、穂は長いです。小穂の形状は扁平で芒(のぎ:殻などに生える針状の毛)があり、開花期には10~20個の小さな花を咲かせ花粉をとばします。
ネズミムギの花粉はイネ科アレルギーの原因物質です。
ネズミムギの葉はやわらかく、葉は幅が4~8mm、長さ5~20cmの線形です。裏面に光沢があるのが特徴で、葉脈がはっきりとしていません。葉と茎の付け根には、葉耳(ようじ)とよばれる茎から葉を支える白っぽい肉厚な部分を確認できます。
ネズミムギの茎は無毛で直立し、1つの株から数本伸長させ叢生(そうせい:群れて生える)します。出穂時期までは柔らかい葉で覆われているため、良質な牧草として利用されますが、開花時期を過ぎると硬くなる性質を示します。
ネズミムギの株から出てくる茎にはすべてに穂がつきます。
ネズミムギは牧草として日本にもちこまれた植物で、牧草地で頻繁に確認できます。積雪地帯では雪腐れ病になるため、北日本以北では栽培箇所があまり多くありません。しかし、野生化したものは日本中のあらゆる場所に分布しています。生息範囲は道端や空き地、河川敷などの生活エリアから畑や畦などの農業エリアまでと広いです。
ネズミムギの種子は風に運ばれることで生育エリアを拡大します。また、休眠能力も高いため牛などの家畜に食べられても発芽能力を失うことはなく、たい肥から発生します。周りにネズミムギがないのに生えてくる場合は、牛糞たい肥から侵入しているケースが多いです。
ネズミムギはムギ畑の有害雑草です。幼齢期の姿がムギと区別できないため駆除しにくく、混ざったまま収穫すると、ムギの品質が著しく落ちてしまいます。またネズミムギは農作物だけでなく人に対しても影響があります。スギ花粉症の人は、ネズミムギの花粉にもアレルギー症状が出るケースが多く、くしゃみや鼻づまりを引き起こすことがあるのです。
ネズミムギを農薬により防除する場合は、ラウンドアップやサンフーロンなどのグリホサート系除草剤を使用します。100倍程度に希釈した農薬を成長したネズミムギに散布すれば枯らせますが、効果的な使用方法は発生直後のネズミムギに散布することです。作物栽培前に耕起をし、雑草を充分生え揃えさせた後に、200倍程度の農薬を散布してください。
畑で発生するネズミムギを、農薬を用いずに防除する場合は、石灰窒素がおすすめです。ネズミムギの厄介な点としてだらだらと長期間発生することがあげられますが、石灰窒素の散布によって発芽促進もしくは種子を死滅させられます。作物の播種3カ月前から70kg/10a程度の石灰窒素を散布し、耕起を繰り返すことで発芽したネズミムギを駆除できます。
ネズミムギの防除適期は気温の高い時期が効果的です。農薬や資材は8月~9月の気温や水分条件が高い時期に散布をすることで、ネズミムギの発生を抑えられます。気温の低い時期は休眠期のため、農薬の効果が小さくなるので使用を控えてください。
ネズミムギはイタリアンライグラスの名前で牧草利用されています。イネ科牧草の王様といわれ、育てやすさと高い栄養価から日本で広く利用されている牧草です。イタリアンライグラスは、収量性に富んだ品種や越年生の高い品種など、さまざまな特性をもった品種が改良されています。
ネズミムギ(イタリアンライグラス)は、秋時期に種子を散布して栽培します。畑で栽培することが多いですが、耐湿性が高いため稲作後の水田でも栽培が可能です。播種後の管理はほとんど必要がなく、再生力が高いため刈取後も複数回収穫ができます。
ネズミムギは、出穂時期に収穫すると牛の飼料になります。秋に播種をすると、収穫時期は4月~5月ごろになり、その後2カ月後にもう一度収穫が可能です。生の草をそのまま利用すると日持ちがしないため、天気のいい日に乾燥させロール状に集草します。
ネズミムギによく似た仲間にホソムギがあげられます。こちらもペレニアルライグラスという名前で家畜の餌として使われており、外国から持ち込まれた帰化植物です。ホソムギはネズミムギに比べて、寒い地域でも生育ができるため、寒地帯では牧草利用だけでなく芝生としても活用されています。
ネズミムギもホソムギも穂の付き方である花序(かじょ)が同じで、小穂が左右交互についています。両者を区別するためには、小穂から毛が出ているかどうかで見分けられます。ネズミムギは芒がありますが、ホソムギの小穂は芒がありません。ただし、交雑をした雑種もあるので注意して確認が必要です。
出典:筆者撮影