ミミカキグサ(耳掻草)とは?
今回ご紹介するのはミミカキグサ(耳掻草)という食虫植物です。食虫植物というと熱帯の植物を想像するかもしれませんが、このミミカキグサは日本の湿地などでもみられる身近な存在です。本州から沖縄だけでなく、オーストラリアを含むアジアの広い地域に分布しています。
ミミカキグサの基本情報
和名 | ミミカキグサ(耳掻草) |
別名 | ウトリクラリア |
学名 | Utricularia bifida |
分類 | タヌキモ科 タヌキモ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 5~15cm |
花の時期 | 8~10月 |
花の色 | 黄色 |
ミミカキグサの特徴
ミミカキグサはとても小さな植物で、葉の大きさは6~8mm、花もわずか4mm程度しかありません。このため花の時期以外は、よほど注意していないと見つけることができません。夏になると、上向きに伸びた細長い茎の先に黄色い花を咲かせます。花が終わったあとの実とがくの形が耳掻きに似ていることからミミカキグサと名づけられました。
食虫植物としての特徴
弱々しい見た目からは想像しづらいですが、ミミカキグサは食虫植物です。食虫植物といっても葉や花で虫を捕まえるわけではありません。地下茎に捕虫のうという小さな器官を持っています。この捕虫のうは1mmほどの大きさで、湿地に住む微生物を捕まえて栄養を吸収します。とても小さいため捕虫の様子を肉眼で見るのは難しいですが、ルーペなどを使って観察することができます。
ミミカキグサの仲間
日本のミミカキグサの仲間
日本に自生するミミカキグサの仲間は全部で4種類あります。このうち黄色の花を咲かせるのはミミカキグサだけなので、ほかの3種類とは簡単に見分けることができます。どの種類もミミカキグサと同じく個性的な特徴を持つものばかりですが、湿地の減少などによって年々その数が減っています。
ムラサキミミカキグサ
8~10月に薄紫色のかわいらしい花を咲かせる品種で、ほぼ日本全国に分布しています。花色の美しさから山野草としても人気があります。
ホザキノミミカキグサ
ホザキミミカキグサとも呼びます。ほぼ日本全国に分布していて、6~9月に花を咲かせます。ムラサキミミカキグサによく似ていますが、ホザキノミミカキグサの花は下部分が長く伸びるのが特徴です。
ヒメミミカキグサ
ミミカキグサよりもさらに小型の品種です。花の大きさは2mmほどしかなく、8~10月に咲きます。アジアやオーストラリアにも分布しますが、国内では東海地方のごく一部でしか見られません。
海外のミミカキグサの仲間
ミミカキグサの仲間は種類がとても多く、世界のいたるところで見られます。園芸植物としてはポピュラーでないため、一部の食虫植物マニア以外にはほとんど知られていませんが、なかには国内の園芸店などで入手できるものもあります。ここでは見た目が面白く特に人気の高い品種をご紹介します。
ウサギゴケ
ウサギゴケは南アフリカ原産のミミカキグサの仲間です。ウサギの耳に似たかわいらしい花が人気で、ミミカキグサの仲間としてはもっともポピュラーな品種です。国内の品種よりもややデリケートで、強い日差しが苦手です。
クリオネソウ
クリオネミミカキグサとも呼びます。原産地は中国で、クリオネそっくりの花が特徴です。ウサギゴケと同じくかわいらしい見た目が人気です。
ミミカキグサの育て方
ミミカキグサは園芸店やホームセンターで入手できます。流通量は多くありませんが、山野草や食虫植物を扱っているお店で販売されています。基本的な知識さえあれば、栽培はそれほど難しくありません。用土や肥料をたくさん準備する必要がなく、場所も取らないのですぐに始められます。
育て方①環境は?
明るく風通しのいい場所で育てます。屋外で管理できますが、強い直射日光や冷たい北風は避けましょう。用土は保水性がよく栄養分の少ないものを使います。ピートモスや赤玉土、鹿沼土などが適しているほか、管理のしやすさから水苔だけを使った栽培もよく行われています。
育て方②管理は?
用土が乾いてしまわないように、水はたっぷり与えましょう。腰水による管理が一般的です。水を張った皿やバットに鉢を置いて、常に湿った状態を保ちます。水は汚れてきたら取り換えましょう。気を付けるポイントはカビの発生です。こまめにチェックしてください。水だけで十分育つので、肥料は特に必要ありません。
育て方③増やし方は?
普段の管理をきちんとしていれば、鉢の中でどんどん増えていきます。そのまま放っておくと根詰まりしてしまうので、毎年植え替えをする必要があります。植え替え時期は春で、ひとまわり大きな鉢に植え替えるか株分けをして鉢を増やします。水苔で栽培している場合は、この作業をとても楽に行えます。
まとめ
今回はあまり知られていないミミカキグサについてご紹介しました。山野草や食虫植物はマニアックなものと思われがちですが、ミミカキグサの育て方はとてもシンプルなので、誰でも手軽に始められます。野山で見つけることは難しくても、栽培することでその生態をじっくり観察できますし、さらに面白い発見があるかもしれません。ぜひ挑戦してみてください。