パキポディウム・グラキリスはどんな植物?
丸みを帯びてトゲトゲのある幹が可愛らしい姿から、パキポディウムの仲間の中でも特に人気があるのがグラキリスです。実生の育て方をマスターするために、まずパキポディウム・グラキリスがどんな植物なのかを知っておきましょう。
基本情報
植物名 | パキポディウム・グラキリス | 学名 | Pachypodium Gracilius |
科名 | キョウチクトウ科 | 属名 | パキポディウム属 |
原産地 | マダガスカル、南アフリカ | 形態 | 多年草 |
耐暑性 | 高い | 耐寒性 | 弱い |
種まき | 6~7月 | 特徴 | 落葉性 |
塊根植物のパキポディウム・グラキリス
パキポディウムの仲間は、南アフリカやマダガスカルといった乾燥と高温の地域が原産地の植物です。グラキリスはこの乾燥に適応するために、ぷっくりと木質化した幹の中に水分を溜め込むことができます。このような木質化した幹や根を持つ植物を塊根植物と呼びます。
夏は屋外、冬は室内で育てる
乾燥と日光を好むパキポディウム・グラキリスは、暑い夏が成長期です。夏は屋外でも育てられますが、長い間雨にあたると根腐れなどの原因になるので、様子を見て室内に入れる必要があります。また、冬は休眠期のため落葉します。この時期はあまり水分を必要としませんが、寒さに弱いので室内が5℃以下にならないよう、温度管理に気をつけましょう。
パキポディウムの種はカビやすい
実はパキポディウムの仲間の実生方法に正解はなく、様々な方法が試されているのが現状です。どうして手探り状態なのかというと、種がとてもカビやすいからです。発芽するためには適切な湿度と温度が必要なのですが、それすらもカビ発生の要因になってしまうほど。私達がパキポディウムの種にしてあげられることは、種まき前に熱湯や殺菌剤を使って容器や培養土などを殺菌することなのです。
パキポディウム・グラキリス実生の魅力って?
パキポディウム・グラキリスは、高温には強いのですが多湿は弱い植物です。原産地であるマダガスカルなどと比べると、湿度の高い日本はちょっと苦手な環境といえます。輸入された株を買って育てるなら、環境に気を配る必要がありますが、日本で種から発芽させて育てる場合は、日本の気候に馴染んだ株を手に入れることができます。実生株には輸入株のようなワイルドさはありませんが、1から自分の手で育てる楽しさや、愛おしさを存分に感じられることが魅力ですよね。
3通りある種の入手方法
パキポディウム・グラキリスの種を手に入れるには、少し手間をかける必要があります。なぜなら、他の植物のように、一般的な園芸店やホームセンターでは種を売っていないからです。主な入手ルートは、「自家受粉による採取」「種を取り扱っている通販ショップから購入」「海外通販ショップから個人輸入」になります。
自家受粉による採取
パキポディウムは雌雄同体の植物なので、1株でも花が咲けば種を採取することが可能です。春先に開花した株を持っていたら、ぜひ種の採取に挑戦してみてください。また、身の回りにパキポディウム・グラキリスを育てている人がいる場合は、問い合わせてみるのもいいですね。
種を取り扱っている通販ショップから購入
植物を扱っている通販ショップの中には、パキポディウムの種の販売をしているお店があります。また、自分で採集した人がネットオークションに出品している場合もありますので、そういった場所から購入することもできます。国内の通販ショップやオークションなら、手軽に利用できるのが魅力ですね。
海外通販ショップから個人輸入
次は自分で海外から直接種を輸入する方法です。国内ではなかなか手に入らない珍しい種が買えるのが魅力ですが、基本的に英語で購入手続きをすることになります。また、植物を輸入するので、検疫手数料など馴染みのない手続きを全て自分で行うなど、ちょっとハードルの高い入手方法ともいえるでしょう。
パキポディウム・グラキリス実生の育て方【殺菌】
せっかく手に入れた種を少しでもカビから守るために、種まきの前に殺菌を行います。鉢・培養土などさまざまなものを殺菌するので、大変だと思われるかもしれませんが、熱湯殺菌という簡単な方法で行うので安心してください。
用意するもの
プラスチック鉢(熱湯に強いもの) | サボテン・多肉植物用培養土(土が細かいもの) |
蓋付きの鉢がすっぽり入る器(腰水用) | ピンセット |
沸かしてから冷ました水(水やり用) | 熱湯(殺菌用) |
ボタニ子
熱湯殺菌のやり方
予め培養土を入れた鉢とピンセットに沸かした熱湯をたっぷりかけます。多くのカビは60℃で死滅するので、熱湯殺菌が手軽で効果的です。熱湯をかけた後は冷めるまで一晩置きましょう。ここで注意するポイントは、プラスチック鉢のなかには熱湯をかけると変形してしまうものもあります。その場合は、園芸用ザルなどに培養土を入れてから熱湯殺菌をし、鉢はアルコールなどで殺菌をします。
パキポディウム・グラキリス実生の育て方【種まき】
殺菌作業が終わったら、さっそく種まきをしましょう。パキポディウム・グラキリスの種はとても小さく水に濡れると扱いづらいですが、焦りは禁物ですよ。
①種に水を吸わせる
多くの植物は、種に十分な水分を吸わせてから種まきすると発芽しやすく、これはパキポディウムにも効果が期待できる方法です。小皿に冷ました水を入れ、種を約11時間漬けます。この時、種が水に浮くかもしれませんが、完全に沈める必要はありません。
②培養土に種をまく
熱湯殺菌した培養土と用器が十分に冷めたことを確認してから、土表面に爪楊枝などで深さ5mmほどの穴を開けます。このとき、種が密集しない程度に間隔を開けてください。1つの穴に対して1粒蒔きます。その際、種に土を被せる必要はありません。
③水やりは腰水で与える
水を入れた腰水用の器に、種をまいた鉢ごと浸します。土が徐々に水を吸い上げるので、足りなければ水を器に追加します。手順⑤でもお話しますが、発芽後しばらくは腰水管理で育てます。土が水を吸い上げたあとも、水は捨てずに残してくださいね。
④蓋をして湿度と温度を上げる
通気孔の穴を開けた蓋をします。蓋がない場合はサランラップをふんわりとかけてもOKです。蓋やラップをすると、湿度と温度が上がって発芽促進にはいいのですが、カビやすくなります。栽培中に糸状のカビが生えた種を発見したら、周囲の土ごと取り除きましょう。
発芽したら蓋は取り除く
蒔いた種がある程度発芽したら、蓋やラップを取り除きます。幹が細長くなる徒長化を防ぐため、あまり長い期間被覆するのは避けたほうがいいでしょう。
⑤明るい半日陰で腰水管理
発芽するまでは室内で育てます。パキポディウム・グラキリスの発芽に必要な温度は30℃前後なので、温度が極端に下がらないような場所を選ぶといいでしょう。また、発芽から2~3週間までは腰水管理で育てます。ここでのポイントは、決して水切れを起こさせないことです。常に土が濡れているか、腰水用の器の水量と土の状態をこまめに確認しましょう。
腰水管理のやめ方
腰水管理から通常の水やりに切り替える時期でも、水切れは苗に致命的なダメージを与えてしまいます。そこで、腰水用の器を水受け皿としてそのまま使います。水やりをすると受け皿に水が貯まるので、捨てずにそのままにするのです。苗の幹(塊根部)が木化するぐらいふっくらしてきたら、徐々に受け皿の水を捨てるタイミングを早めましょう。
ボタニ子
お水が足りないと、種が上手に発芽できないんだって。朝と夕方に、お水の量と土が濡れてるかチェックするといいよ!
水やり用のお水も熱殺菌するのがポイントなんだね。