オペルクリカリア・パキプスとは
「塊根植物の王様」とも呼ばれるオペルクリカリア・パキプスは、独特な風貌と存在感が魅力的な植物です。また、ワシントン条約Ⅱ類に指定され、流通量が少なく、成長速度が遅くて栽培難易度も高いため、植物愛好家の憧れの存在でもあります。まずはそんなオペルクリカリア・パキプスの特徴をご紹介していきます。
オペルクリカリア・パキプスの基本情報
科名 | ウルシ科 |
属名 | オペルクリカリア属 |
原産地 | マダガスカル南西部 |
ワシントン条約 | Ⅱ類 |
耐暑性 | 強い |
耐寒性 | 弱い |
生育期 | 春~夏 |
オペルクリカリア・パキプスの希少性
オペルクリカリア・パキプスは、マダガスカル島の限られたエリアのみに自生する希少種です。しかし、現地では木材などとして伐採されるとともに、日本を含む欧米諸国での塊根植物ブームの影響で乱獲され、絶滅の恐れが出ています。そのため、ワシントン条約Ⅱ類に指定され、保護の対象となっています。
ワシントン条約Ⅱ類とは
ワシントン条約は、絶滅の恐れがある動植物の国際取引を規制する条約です。ワシントン条約Ⅱ類に指定されているオペルクリカリア・パキプスは、マダガスカル政府により保護され、指定された業者によって決められた数のみ採集されています。そのため、流通する量が限られ、希少価値も高くなっています。栽培する場合は、ワシントン条約に指定されていることを忘れないようにしましょう。
オペルクリカリア・パキプスの成長速度
オペルクリカリア・パキプスは、雨と栄養分が非常に少ない痩せた土地に自生しているため、成長速度が非常にゆっくりです。現地で見られる大きな株は、数百年かけて成長した、大変貴重なものなのです。それ故、一度伐採してしまうと、自生では簡単には復活できなくなってしまいます。
栽培下での成長速度
栽培下でのオペルクリカリア・パキプスも、基本的には成長速度がゆっくりです。温度を保ち、適度に水やりや肥料分を与えることで、多少成長速度が速くなりますが、それでも塊根部は年間を通しても10cm成長するかどうかです。ただ、枝に関しては適度に成長するため、変化を楽しむことができます。寿命も長いため、まさに生涯をかけて付き合える植物といえます。
オペルクリカリア・パキプスの流通
現地で厳重に保護されているオペルクリカリア・パキプスは、毎年決められた数の株だけ流通します。現地から輸入される株は、検疫のために根っこを切断された「未発根株」と呼ばれる状態で輸入されます。発根させるためにはテクニックがいるため、初心者の方は専門店で発根させた株を購入したほうが安心です。
実生個体も流通する
オペルクリカリア・パキプスは、種まきから育てられた実生株も流通します。実生株は、日本で種まきから育てられたため、輸入株に比べて日本の環境に適応しやすく、しっかりとした根っこがあるので育てやすいのが特徴です。しかし、成長速度が遅いため、その独特な塊根を形成するまでには長い年月が掛かってしまいます。
オペルクリカリア・パキプスの育て方
育て方①用土
オペルクリカリア・パキプスは塊根植物の中では、栽培難易度が少し高い植物です。しかし、コツを掴めば簡単に枯れてしまう植物でもありません。ここでは、オペルクリカリア・パキプスの育て方のポイントをご紹介していきます。
オペルクリカリア・パキプスは水はけのよい用土を好みます。そのため、一般的な草花用の用土はあまり適していないので、用土を自分で配合してみましょう。硬質赤玉土:鹿沼土:軽石:ゼオライト5:3:1:1の割合で混ぜ合わせると、水はけのよい用土を作り上げることができます。この用土をベースにご自宅の環境や、栽培スタイルに合わせて調整してみてください。
肥料
やせた土地に自生しているオペルクリカリア・パキプスは、それほど肥料を必要としません。しかし、無肥料では十分に育つことができませんので、生育期に粒状の緩効性肥料を少なめに与えましょう。用土の上に肥料を転がしておくと、水やりの度に少しずつ肥料分が染み出ていきます。
育て方②植え替え
鉢の種類
オペルクリカリア・パキプスの栽培には、黒いプラ鉢がおすすめです。黒い鉢は鉢内の温度が上がりやすく、高温を好むオペルクリカリア・パキプスの成長を促してくれます。また、プラ鉢は軽いため、冬場の日中に移動する場合など、持ち運びがしやすい点もメリットの一つです。
鉢のサイズ
鉢の大きさは、オペルクリカリア・パキプスの一回り大きいサイズの物にしましょう。オペルクリカリア・パキプスは成長が遅いため、あまり大きな鉢を用意する必要がありません。むしろ大きすぎる鉢は、鉢内の水分量が多くなりすぎて多湿になりすぎ、弱らせる原因となってしまいます。
植え替えの時期
植え替えの時期は生育期の初期である春頃に行います。夏の間は、植え替え作業中に温度が高くなりすぎることや、蒸れてしまうことがあるため、控えるようにしましょう。また、秋に植え替えをすると、冬までに根っこが活着する時間が少なく、冬を越せなくなる可能性が高いため、注意してください。
育て方③置き場所
生育期である春から夏は、直射日光が当たり、風通しのいい場所が理想的です。温度が低い時期は軒下など、雨のかからない場所で水やりをコントロールしますが、真夏の温度が高い時期は雨ざらし栽培も可能です。夏の間にしっかりと日に当てて、塊茎に養分を蓄えることで、冬の休眠時期を乗り越えることができます。
冬場の置き場所
冬場は温度が下がると枯れてしまう恐れがあるため、15℃以上の場所で管理するのが理想的です。温度を保つためにエアコンを使用するか、園芸用の温室を利用するとよいでしょう。また、冬場は落葉していますが、塊茎の表面でも光合成を行うため、日中は日が当たる場所に置いてください。
育て方④水やり
生育期の水やりは、1週間に1回程度です。用土が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりとした量の水やりを行いましょう。沢山の水やりをすることによって、鉢内の老廃物を流し、新陳代謝を促します。中途半端な量の水やりでは鉢の隅々まで水が行き渡らないため注意しましょう。
冬場の水やり
多くの塊根植物では、冬になり、落葉したら水やりはやめて断水するのが基本です。しかし、オペルクリカリア・パキプスの場合は、冬の休眠期に根っこを完全に乾かさないほうが、春の生育期がスムーズにスタートします。そのため、月に1度を目安に、好天が続く日の日中にごく少量の水を与えましょう。水が多すぎると、夜間の冷え込みで根っこが傷むため、夕方までに乾く量にしましょう。
次のページでは、オペルクリカリア・パキプスの発根方法と増やし方をご紹介します。