サンキライは冬に赤い実をつける、つる状の植物です。リースや生け花、ドライフラワーなどの花材として大変人気があります。
園芸部類 | 落葉樹 |
形態 | つる性 |
樹高・草丈 | 低木 |
花の色 | 黄緑色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | リースなど花材 |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
サンキライの最大の特徴は、赤い美しい実を冬につけることといえます。夏には若い緑色の実をつけ、それ自体も観賞価値があります。ドライフラワーに加工し、リースやプランツジュエリーに使われます。
サンキライは雌雄異株です。実をつけるのは雌の株のため、栽培する際には雌雄両方の苗を植える必要があります。
サンキライの葉を柏餅のように葉で餅を包んだ和菓子が兵庫県や愛知県で販売されています。兵庫県などでは、夏の風物詩として山帰来饅頭を楽しむ文化があります。
サンキライのうち「ケナシサルトリイバラ」という品種は生薬としても需要が高いです。梅毒の治療薬としてケナシサルトリイバラの根から作られた生薬は、江戸時代に中国から大量に輸入された歴史があります。
サンキライは漢字では「山帰来」と表され、サンキライの代表品種としてサルトリイバラとケナシサルトリイバラの2つがあります。
ケナシサルトリイバラの原産地は中国で、生薬名は「土茯苓(ドブクリョウ)」です。根には解毒作用があるといわれています。その昔、山に捨てられた病人がこの「土茯苓」の実を食べて回復し、山から無事に帰還したことから「山帰来(サンキライ)」の名がつけられました。
日本に自生していた「サルトリイバラ」の名前の由来はシンプルです。つる性の茎には多くのトゲがあり、「その茂みに踏み込めばサルでも動けなくなってしまうほど」という意味から「サルトリイバラ(猿捕茨)」と名付けられました。このサルトリイバラの根から作る生薬は「菝葜(バッカツ)」と呼ばれます。
生薬として効果を発揮した「土茯苓(ケナシサルトリイバラ)」と非常に似ていたサルトリイバラは「土茯苓」として代用することも多々ありました。やがて両者が混同されどちらも「サンキライ」と呼ばれるようになりました。
ボタニ子
サルトリイバラ | ケナシサルトリイバラ | |
名称 | サンキライ | サンキライ |
学名 | Smilax china | Smilax glabra |
生薬名 | 菝葜(バッカツ) | 土茯苓(ドブクリョウ) |
植物分類 | サルトリイバラ科シオデ属 | サルトリイバラ科シオデ属 |
原産国 | 日本 | 中国 |
植え付け時期 | 11月以降の冬 |
花が咲く時期/開花時期 | 4~5月頃 |
実が付き始める時期 | 5~6月頃 |
実が赤く色づく時期 | 11月以降の冬 |
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
植え付け 植え替え |
● | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● | ● |
開花期間 | ● | ● | ● | |||||||||
肥料 | ○ | ○ | ● | ● | ○ | |||||||
成長期 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ○ | |||
休眠期 | ● | ● | ○ | ● | ● |
サンキライは野山に自生する成育旺盛な野草です。植え付けの時期は特に選びませんが、実をつけおえた11月以降がおすすめです。まだ若い苗である場合、冬の霜などにあたると弱ってしまうこともあるので、真冬の植え付けは避けます。
サンキライは、根が付くとあっという間に広がるほど成育旺盛です。つる性のためどんどんと広がり、さまざまなものにつるを絡ませながら成長します。地中から新しい茎もどんどんと出てきて範囲を広げます。「サルトリイバラ」の名前のとおり、トゲが絡みついてしまうこともあります。庭植えにする場合は、大きく育っても人を傷つけてしまう恐れがない場所を選びます。寄せ植えには適しません。
サンキライを栽培できる範囲が限られている場合は、プランターや鉢植えがおすすめです。つるを絡ませるための支柱などを用意します。
サンキライは野草ですので、日が差し込む屋外の環境が望ましいです。鉢植えやプランターを用いて室内での栽培を考えている場合は日当たりのよい場所を選びましょう。
サンキライは日陰では育ちにくいです。花をつけにくくなるため、実も少なくなってしまいます。鉢植えの場合は日当たりのよい場所に置きます。
サンキライの用土は赤玉土に腐葉土をブレンドしたもので十分です。水はけが悪いと根腐れを起こしやすいので、鉢植えをする場合は底石をいれます。市販の野草用の土でもOKです。
サンキライの根がしっかりついた庭植え、地植えの場合はさほど神経質に管理する必要はありません。あまりに乾燥している夏場や、一日中日差しが降りそそぎ地面が絶えず乾燥するような場所では、土の様子を見ながら水をやります。
サンンキライは成育旺盛で強い野草ですが、水切れには弱いです。鉢植えやプランターを用いた栽培の場合は、1日1回は水をやり、水切れを起こさないように注意しましょう。
サンキライを植え付ける際に、土に元肥を混ぜ込んでやっているのであれば、1年間は肥料は必要ありません。2年以降の植え替えの際に窒素が少なめのリン酸・カリウムがメインの肥料を追肥すると実の付きがよくなります。花をさかせ、体力を使う時期には2週間に1回ほど、液体肥料を与えても構いません。
サンキライにこれといった害虫はつきません。ルリタテハと呼ばれる美しい蝶の幼虫が好みます。トゲを体に持ちますが、この幼虫自体に毒などはありません。サンキライは病気にもかかりにくく、強い野草といえるでしょう。
サンキライは、花をつけたあとすぐに実を付けます。花が終わった後に大掛かりな剪定を行ってしまうと実が少なくなってしまいます。葉も冬の訪れとともに落葉するので、特に手を入れる必要はないでしょう。
鉢植えやプランターで管理している場合、鉢の中の根が込み入ってきます。根詰まりを起こすと成育スピードが圧倒的に落ちるので、ひと回り大きな鉢へ植え替えを行います。実を取り終えた冬場に行うのがよいでしょう。古い土を落とし、込み入っている根は切り落としてしまって問題ありません。
サンキライを地植えした場合などは広範囲に広がることが予想されます。実が終わった後に望ましい範囲に刈り込みます。土の中の根からも新しい茎が出てくるので、トゲに気を付けながら剪定を適宜行います。花後に剪定をすると実がつかないので注意しましょう。
サンキライの増やし方は、熟した実から収穫した種を使います。果肉を取り除いたあと種を水洗いし、その種を土に植えればやがて芽が出てくるでしょう。適期は11~12月です。
サンキライの熟した実が地面に落ちると、そこからさらに芽が出ることもあります。地植えの際はこぼれ種でどんどん広がっていくこともあるでしょう。トゲのある植物なので管理には注意が必要です。
サンキライの名前の由来だけでも、中国とのつながりや歴史を感じますね。両者の違いを簡単にまとめておきましょう。