スイレン(睡蓮)は、池や沼に咲く多年草の水生植物です。水上に浮かぶ優美な花姿には、心が洗われるような魅力があります。大きな池や沼に咲いているイメージがあり、家庭で育てるのは難しいと感じられるかもしれません。しかし、睡蓮鉢を使えば家庭でも上手に育てられます。
園芸部類 | 水生植物 |
形態 | 多年草 |
樹高・草丈 | 10~30cm |
花の色 | 赤、白、ピンク、黄、紫 |
耐寒性 | 温帯性:強い/熱帯性:弱い |
耐暑性 | 温帯性:普通/熱帯性:強い |
特性・用途 | 落葉性、開花時期が長い |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
スイレンは、水位の変化が少ない静かな池や沼に育つ宿根草です。夏になると水中から長い茎を伸ばし、水面に花や葉を浮かべます。可憐な花は、朝夕に開閉を繰り返しながら2~4日咲きます。円形または楕円形の葉には、光沢と深い切込みがあるのが特徴です。
スイレンの花は、昼に咲き夕方になると徐々に閉じます。その様子が眠っているように見えたことから「眠るハス(蓮)」を意味する「睡蓮」と名付けられました。また別名の「ヒツジグサ」は、未の刻(午後2時ごろ)に花が開くことに由来します。
スイレンは、世界中の熱帯地域~温帯地域にかけて約40種が自生しています。日本には明治時代に外国産のスイレンが輸入され品種改良が進められました。現在は、耐寒性の違いから「温帯スイレン」と「熱帯スイレン」の2種類に分けられ出回っています。
(ビオトープ)睡蓮 姫睡蓮(ヒメスイレン) 桃 リトル・スー(1ポット)
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寒さに強い温帯スイレンは、別名「耐寒性スイレン」とも呼ばれます。ヨーロッパの原産種を品種改良した可憐な雰囲気をもつ種類です。水中の太い根茎から長い茎を伸ばして、水面に花や葉を浮かべます。円形状の葉には深い切込みがあり、花は昼咲き性です。日本では小型の葉と花が特徴の「ヒメスイレン(姫睡蓮)」が育てやすく人気です。
熱帯スイレン
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寒さに弱い熱帯スイレンは、エジプトや東南アジアなど熱帯地域が原産です。花茎を水面より上に伸ばして青や紫色の花を咲かせます。エキゾチックな雰囲気で、昼咲き性と夜咲き性があります。耐寒性がないため水温が10℃を下回ると枯れてしまう点も特徴です。生育が衰え始める11月あたりから室内に移動させて管理しましょう。
温帯スイレン | 熱帯スイレン | |
植え付け時期 | 4~5月 | 6~7月 |
植え替え時期 | 3~4月 | 5~7月 |
株分けの時期 | 3~4月 | 5~7月 |
開花時期 | 5月中旬~11月 | 7~10月 |
温帯スイレンと熱帯スイレンでは開花時期が異なるため、植え付けと植え替え時期も異なります。温帯スイレンは4~5月ごろ植え付け、熱帯スイレンは少し暑くなり始めた6~7月ごろに植え付けましょう。
スイレンを家庭で栽培するときは、水を張った睡蓮鉢の中に鉢植えごと沈めて育てます。スイレンを植え付ける鉢は、重みのある素焼きの鉢を使いましょう。重量のある鉢に植えることで、スイレンが浮き上がるのを防ぎます。温帯スイレンは深さの浅い6~7号サイズ、熱帯スイレンは4~7合サイズの鉢がおすすめです。
睡蓮鉢は、風情のある陶器の鉢がおすすめです。陶器の鉢は、耐久性に優れているため屋外で長く使えます。直径40~60cm程度のものを選びましょう。スイレンの株元から5~20cm程度の水位になるように、睡蓮鉢の底に石や砂利を敷き詰めて水深を調整します。水面に葉がしっかり広がり、株元まで日が当たる環境づくりが大切です。
スイレンは日光を好む植物です。日当たりがよいと水温が上昇し、活発に成長して花つきがよくなります。枯れて腐った葉はこまめに取り除き、水面の葉と水中の株元まで、半日以上しっかり日が当たる場所に置きましょう。外の気温が10℃前後になったら、室内の日当たりのよい窓際に移動します。またエアコンの風が直接当たらないように管理します。
用土には、田んぼの土のような粘土質の重い土を使います。市販の荒木田土がおすすめですが、入手できない場合は小粒赤玉土や黒土を水で練って使います。初心者の方は、水生植物用培養土を使って植え付けましょう。
スイレンは水の中に沈めて育てるため、水切れにならないように管理します。水位を株元から5~20cm程度に保つことが重要です。水温の上昇を防ぐために水位をこまめに管理し、水が濁ったときは新しい水に入れ替えましょう。特に夏は水が傷みやすくなるため注意が必要です。
植え付けの際、固形の発酵済みの油カスか緩効性化成肥料を株元から離れた位置に埋め込みます。葉が黄色になったり、花つきが悪くなったりしたら肥料切れです。生育旺盛な6~9月ごろ月1回追肥しましょう。冬は休眠期になるため肥料を与える必要はありません。
スイレン栽培では、アブラムシやボウフラに注意が必要です。アブラムシは葉や新芽に寄生して汁液を吸ってスイレンを弱らせます。大量発生する前に殺虫剤をまきましょう。ボウフラは蚊の幼虫です。水たまりに発生する害虫で、スイレンよりも人間に害を与えます。睡蓮鉢に金魚やメダカを泳がせる害虫対策がおすすめです。
咲き終わった花がらは、花茎のつけ根から切り取ります。咲き終わると花を閉じて下を向くため、これから咲く蕾(つぼみ)と間違えないようにしましょう。
スイレンの苗は、3月中旬~5月ごろ購入します。温帯性と熱帯性では育て方が異なるため、栽培地域の気候によって苗を選びます。特に色や品種が豊富な熱帯スイレンは、寒さに弱い性質を考えてから購入しましょう。
生育力の強いスイレンは、1~2年に1回は植え替えが必要です。温帯スイレンは3~4月に、熱帯スイレンは5~7月に植え替えましょう。太い根茎を選び、伸びた根を切り落とします。鉢の中の古い土を取り除き新しい土に入れ替えて植え付けます。
茶褐色や黄色に変化した葉は、必ず取り除きます。放っておくと水が腐る原因となるため、株元から切り取りましょう。こまめに剪定すると、株元まで日が当たり新しい葉も早く出ます。また花つきもよくなるため、葉の剪定はスイレン栽培の重要な作業です。
熱帯スイレンは冬の寒さに弱いため、水温が10℃以下になると枯れてしまいます。冬はスイレンを植えている鉢を大きな容器に移し、鉢が隠れる高さまで水を張って温かな室内で管理しましょう。温帯スイレンは屋外に置いたまま冬越しできます。睡蓮鉢の水が凍っても平気ですが、根茎が水から出ないよう管理します。
増やし方は、株分けがおすすめです。種からも増やせますが、株分けのほうが手軽にできます。3年に1回の目安で、植え替えの時期に株分けしましょう。1株に1芽がつくように根を10cm程度の長さに切り、乾燥する前にすぐ別の鉢に植え付けます。