ヒツジグサ(未草)とはどんな花?
小さな池や沼地などで、湖面にびっしりと葉が浮いていて、ところどころに白い花が咲いている様子をよく見かけることがあります。睡蓮によく似ているのですが、これはヒツジグサという花で、睡蓮の種類の中では唯一日本原産の花です。ヒツジグサという名前も不思議な響きがありますね。ではヒツジグサとはどんな花なのでしょうか。ここで詳しくご紹介します。
ヒツジグサ(未草)の基本情報
学名 | Nymphaea tetragona |
属名 | スイレン科スイレン属 |
分類 | 水生多年草 |
花期 | 6月~9月 |
花色 | 白 |
ヒツジグサはスイレン科スイレン属の中の一種類です。6月~9月にかけて水面に白い花を咲かせます。別名の姫睡蓮という名前で呼ばれることもあるのですが、実は姫睡蓮はヒツジグサを原種として改良品種された種類で、ピンク色の花が咲きます。ヒツジグサは白い花が咲く日本原産の固有種です。
ヒツジグサ(未草)の生息地
ヒツジグサは沖縄を除く日本全国に分布していて、小さな池や沼で生息する水生植物です。大きな池ではなく、山間にあるような比較的小さな池で、一面に広がって咲いているのをよく見かけます。冬の寒さにもよく耐えるので、標高の高い山にある湿地などにも生息しています。
大きな池ではあまり見かけない理由は?
ヒツジグサが比較的小さな池や沼に生息している理由は、葉を食べる魚の被害に合うことが少ないからです。大きな池にいる草食や雑食の魚には、食糧不足になる冬に水生植物の葉や根を食べる種類もあります。実際に、観賞用の鯉を池に放したらヒツジグサが全滅した、ということもあるようです。
ヒツジグサ(未草)の名前の由来
午後2時(未の刻)に咲くので「未草」と名付けられた
ヒツジグサは漢字で「未草」と書きます。「未」という漢字を「ヒツジ」と読むのはあまり馴染みがないでしょうが、日本では時間を漢字で表すことがあり、「未の刻(ひつじのこく)」は午後2時を指します。そこで、花が午後2時頃に咲くから、という理由で「未の刻に咲く草」つまり「未草(ヒツジグサ)」と呼ばれるようになりました。
ヒツジグサ(未草)の花言葉
「清純な心」「信頼」「信仰」
ヒツジグサの花は純白で透き通るような美しさがあります。「清純な心」はまさにこのヒツジグサの花のイメージですね。また、花か閉じたり開いたりする様子には神秘的な雰囲気もあるので、「信頼」「信仰」というような宗教的な意味合いの花言葉がついたのでしょう。
ヒツジグサ(未草)の特徴
花の特徴
ヒツジグサの花の大きさは3cm~7cmで小ぶりの可愛い花です。花の色は真っ白で清楚な美しさがあります。とがった白い花びらが8枚~15枚ほど開き、花の中心には黄色いしべが多数あります。実際には午前中に開花して夕方にしぼむので、名前の由来となった午後2時に咲くという説は少し現実とは違うようです。咲いた花は3日ほど咲き続けた後、水中に沈んで実をつけます。
葉っぱの特徴
ヒツジグサの葉っぱは水面に浮いている浮葉と、水中に沈んでいる沈水葉の2種類があります。円形、または楕円形の葉っぱには深い切れ込みが1本入っています。大きさは長さが8~15cm、幅が5~12cmです。葉っぱの表面は光沢があり、裏面は暗紫色を帯びています。春から夏は緑色の葉っぱですが、秋には赤茶色に紅葉するので、葉っぱの色の変化も楽しめます。
根の特徴
ヒツジグサの根は単独の茎のような塊に多数のひげのような根を生やしていて、水生植物によく見られるような根茎での横伸びはしません。開花後の実が種になり、水中に沈むことによって新しい株として発根します。
出典:写真AC