はじめに
スイレン(睡蓮)は公園やお寺などの池や沼で見かける水性植物です。水面に浮かび上がる神秘的な美しさのある花と葉の姿は、うっとりと心が奪われるような魅力があります。「栽培には、大きな池のある庭がないとむずかしいのでは?」と思われる方も多いでしょう。しかし、品種をうまく選べば、限られた空間でも睡蓮鉢を使った鉢植え栽培が可能です。今回はスイレンの栽培方法をご紹介します。
スイレン(睡蓮)とは
科名 | スイレン科 |
属名 | スイレン属 |
学名 | Nymphaea(ニンファイエア) |
英名 | Water lily, Water nymph |
開花時期 | 5月~10月 |
原産国 | 熱帯性:エジプト 温帯性:東南アジア、ヨーロッパ |
スイレンは水位が安定している静かな池や沼に生育する水生多年草です。水面下の地下茎から長い茎を伸ばして水上に円形の葉と花を展開します。一つの花が咲く期間は3~5日ほどです。現代では品種改良が盛んで、いくつかの原種を交配したものが園芸品種としてたくさん出回っています。
スイレン(睡蓮)の種類
スイレンは大別して「熱帯スイレン」か「温帯スイレン」の2種類があります。どちらのスイレンを選択するかによって栽培の難易度が変わります。熱帯スイレンは耐寒性がなく寒さには非常に弱いので、日本での栽培は難易度が高くなり、温帯スイレンは耐寒性があるので育てやすい種類になります。購入する前にはどちらの種類のスイレンを栽培したいかを確認しましょう。
熱帯スイレン
「熱帯スイレン」は、エジプトや東南アジアなど熱帯地域が原産種のグループです。 茎を伸ばして、大きな花が水面より上に咲きます。 昼咲き種と夜咲き種があり、温帯スイレンにはない青や紫の花色もあって、エキゾチックな雰囲気があります。水温が15℃を下回ると枯れ込んできてしまうため、日本での栽培は冬の時期は室内に移動させるなどの配慮が必要です。
温帯スイレン(耐寒性スイレン)
「温帯スイレン」は主にヨーロッパの原産種を元に品種改良され、世界の温帯域に生息しているグループです。「耐寒性スイレン」とも呼ばれ、寒さに一定の耐性があるので育てやすい品種です。日本に自生しているヒツジグサと呼ばれる原種のスイレンも「温帯スイレン」の仲間であり、「温帯スイレン」を改良したものでは、こぶりな花と葉を展開する小型品種に姫睡蓮(ヒメスイレン)があります。
スイレン(睡蓮)の育て方
まず始めに、鉢と睡蓮鉢(水鉢)、用土、肥料、そして気に入ったスイレンの苗を用意しましょう。スイレンは種から育てるのが非常にむずかしい品種であるため、園芸店やホームセンターなどでポリポットに入って販売されている苗から育てるのが一般的な方法です。購入した苗の入ったポリポットのサイズよりも少し大きめの、できれば5〜8号の素焼鉢にさっそく苗を植え替えましょう。
育て方①鉢植えの管理
スイレンは水中での栽培環境が常に必要になります。水をしっかり張った睡蓮鉢の中に、スイレンの鉢植えごと丸ごと沈めて栽培するため、スイレンを植え付ける鉢は浮き上がってこないよう、しっかりと重量のある素焼きタイプの鉢を選びましょう。鉢のサイズは熱帯スイレンは4〜7号程度の鉢がおすすめです。温帯スイレンは6〜7号の深さが浅い鉢が適しています。
鉢のサイズ
- 熱帯スイレンは4〜7号(標準鉢)
- 温帯スイレンは6〜8号(浅鉢)
- 姫スイレンは5〜6号(浅鉢)
育て方②植え付け方法
熱帯スイレンの植え付け時期は6~8月で、温帯スイレン(耐寒性スイレン)の植え付け時期は4~5月になります。植え付け方法は、鉢に用意した土を3分の1程度入れ、その上に元肥として固形の発酵油かすを土に埋め込みます。そして、その上に元肥が見えなくなる程度、土を足しましょう。あとは購入した球根や苗を置いて土をさらにかけます。スイレンの根茎が直接、肥料に接触すると肥料焼けを起こすので注意しましょう。
- 水を張った睡蓮鉢に鉢植えごと入れた際に、土が流れ出さないようにスイレンの苗を植え付けた後はしっかりと土に水をやります。
育て方③睡蓮鉢(水鉢)の用意
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水を張った睡蓮鉢の中で、スイレンの葉が水面にゆったりと広がり、しっかりと太陽の光を浴び、光合成ができる環境をつくりましょう。睡蓮鉢の内寸は40cm以上あるものがおすすめです。小型種の姫睡蓮であれば内寸30cm程度あるものが望ましいです。
睡蓮鉢(水鉢)の内寸サイズ
- 熱帯、温帯スイレンは内寸40cm以上
- 姫スイレンは内寸30cm以上
水深の調整には
花を咲かせるスイレンを楽しみたい場合、水深はスイレンの鉢植えの土の面から10〜15cm程度、小型品種の姫睡蓮は10cm程度あるのがおすすめです。睡蓮鉢に沈めたスイレンの鉢の下には、別の鉢を逆さまに置いたり、石や小砂利などをしきつめて土台代わりに使ったりして水深調整をしましょう。はじめは高さのある大きめな土台を底に置き、スイレンの成長に合わせ土台を小さく低いものに置き替えて行きましょう。
育て方④用土
スイレンの用土には、粘り気のある粘度質の土が最適です。田んぼなどの下層でみられる粘土質の重い土が必要であるため、市販されている「荒木田土」を用意しましょう。「荒木田土」がない場合は、赤玉土(小粒)や黒土を水で練ったものを使います。初心者の方は市販されている水生植物用の土を購入して、そのまま使用するほうがよいでしょう。
育て方⑤肥料の与え方
睡蓮鉢で植物のスイレンだけを育てる場合、肥料は緩効性のある化成肥料でかまいませんが、メダカを入れる場合は、発酵油かすや骨粉などの有機質の緩効性肥料を元肥として根から離れたところに埋め込みましょう。植え付けの際に土に埋め込んでおいて、月に一度のペースで追肥してあげましょう。真冬の生育の衰える時期には肥料を施す必要はありません。
育て方⑥日当たり
スイレンは、とにかく日光を好みます。少なくとも半日以上は直射日光が当たるようにします。日の光が水の表面だけでなく水中の株元まで届くようにするのが育成を早めて花つきをよくする秘訣です。葉が重なり込み合ってきたら適度に取り除きましょう。日差しの強い夏などは蒸発によって1日であっという間に水がなくなってしまうので、こまめに水位の確認をしましょう。
育て方⑦越冬の方法
温帯スイレン(耐寒性スイレン)は、そのまま水面に植えた状態でも冬越しが可能です。睡蓮鉢の水の表面が凍っても平気ですが、水がなくなって鉢土まで凍ると枯死しますから、しっかり水位は保つように注意しましょう。熱帯スイレンは寒さに弱いため暖かな室内へ移動しましょう。玄関などに移動して冬の間も10~15℃の水温に保って越冬してください。
球根を掘り上げて越冬させる方法
12月頃に完全に生育が止まったあと、スイレンの球根を土から掘り上げて、球根から根と葉をすべて取り除きます。このときに芽の部分は取らないように注意しましょう。根と葉を取り除いた球根を水が入ったコップに入れ、明るい窓辺に置いて冬越しさせます。水が濁ってきたら水換えをしましょう。もしくは1~2日陰干しして、少し乾かしたあとにキッチンペーパーなどに包んでからビニール袋に入れ、密閉して室内で保管しましょう。越冬中は、温度は5~15℃にします。
- 越冬保管していた球根は翌年の4月を過ぎた頃に水が入ったコップに入れ、芽が出だしたら土に植え込みます。
育て方⑧植え替え
スイレンは生育がとても旺盛なので、あっという間に根が鉢にまわって根詰まりを起こしてしまいます。そのため毎年、新しい用土を使って植え替えをしましょう。温帯スイレン(耐寒性スイレン)の場合は3~4月頃、熱帯スイレンの場合は5~7月頃が植え替えに適した時期です。株分けと同時期に行うと良いでしょう。
出典:BOTANICA