エンレイソウは白や紫の小さな花を咲かせる山野草です。種から開花までに約10年かかり、スプリングエフェメラル(春の妖精)ともいわれています。春から夏の数か月以外は地下で休眠しているため、限られた時期しかその姿を見られない植物です。
園芸部類 | 山野草・草花 |
形態 | 多年草 |
樹高・草丈 | 20cm~30cm |
花の色 | 白・薄紫 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 | 落葉性 |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
エンレイソウは和名で「延齢草」と書きます。エンレイソウは種から花を咲かせるまでに約10~15年かかり、約50年ほど花を咲かせ続けるものもあることから、「齢を延ぶる(よわいをのぶる)=命を延ばす」という意味で名付けられました。
エンレイソウは北海道~九州の低山湿地帯に分布し、主に落葉樹林の根元に生息していることが多い山野草です。草丈は20~30cm、1つの茎に葉・ガク片が3枚ずつ付きます。ガク片はまるで緑色・薄紫色の花弁のようで、花を咲かせたように横向きに開きます。
オオバナノエンレイソウは、北海道~本州北部の低山・高原などの湿地などで見られ、エンレイソウより大きく草丈30~70cmで、花弁は5~7cmの大きな白い花を上向きに咲かせます。
ミヤマエンレイソウは北海道~九州の比較的深い山に分布していることから、ミヤマ(=深山)という名前が付けられました。草丈20~40cm、花弁の直径は2~3cmになり白い花が横向きに咲きます。類似種として、薄紫の花が咲く「ムラサキエンレイソウ」や、エンレイソウとの雑種である「ヒダカエンレイソウ」などがあります。
植え付け時期 | 3月、6月 |
発芽の時期 | 3月~4月 |
花が咲く時期/開花時期 | 4月~5月 |
休眠期 | 9月~翌年2月 |
エンレイソウの成長時期は3~8月です。植え付けは、実生の場合は種が乾くと発芽率が悪くなるため、開花後に種ができる6月頃にすぐ取りまきしましょう。苗を購入した場合は、3月頃に植え付けると根が張って丈夫に育ちやすいです。
エンレイソウは地植えでも鉢植えでも育てられますが、地植えの方が増やしやすく大きく丈夫に育てられます。鉢植えならば、季節によって適切な場所に移動できるので管理がしやすいです。
エンレイソウの置き場所はできれば落葉樹の根元で、半日陰になり湿気が適度にある場所を選びます。同じ環境を好むシダ系の植物の近くに植えると共存して育ちます。茎が折れる可能性があるため強風を防ぐ工夫をしましょう。鉢植えの場合は秋~春は日なたで、夏は半日陰で管理し、水の乾燥に気をつけて育てましょう。
エンレイソウは根が腐りやすいため、用土は水はけがよいものを用意します。鹿沼土・軽石・赤玉石を同量ずつ混ぜたものに、排水性をよくするためにヤシ殻やパーライトを加えたものを使いましょう。
水やり方法は、地植えと鉢植えでは異なります。地植えの場合、生育期は、雨が降らず少し葉が弱ってきたようであれば水を与えます。休眠中はときどき与える程度にします。鉢植えの場合は、芽が出てきたら常に土を乾燥させないように管理し、休眠中も湿った状態を保持します。鉢を直接地面や砂床に埋めておくのがよいでしょう。
エンレイソウは肥料を適切な頻度で与えることで株が大きく丈夫に育ちます。ただ、肥料をやり過ぎると肥料やけを起こして枯れてしまうので量が大切です。発芽時期には、茎や葉を育てるために窒素の含有率が多い「油かす」や「骨粉」をひとつまみずつ、株が暑さで弱っている夏場以外の生育期は2000~3000倍に薄めた液肥を1週間~10日に1回施しましょう。
エンレイソウにはアブラムシなどの害虫がつきやすいです。春の新芽が出た頃に、つぼみにつき植物の汁液を吸い生育を阻害します。また、ウイルス病などの病気を媒介するため、増える前に定期的にブラシなどで落としましょう。
軟腐病は、地際や根部部分が腐り枯れてしまう病気です。水はけが悪い場所で発生するため、ヤシ殻など排水性のよい土にすることで水はけをよくし、極端に水を与えすぎないように注意しましょう。
エンレイソウは種まきでも、苗からでも育てられます。種まき後は、翌春に芽が出るまで乾燥させないように水やりを欠かさずに行いましょう。苗から育てる場合は、日本の原種苗は育てるのが難しく土などの環境に大きく左右されるため、実際に育てている方から株分けしてもらうか、園芸用に品種改良をしたものを選ぶと育てやすいです。
鉢植えの場合は2~3年に1回、葉が枯れて休眠に入る9~11月頃に植え替えましょう。根詰まりを起こすと株が小さくなるため、ひとまわり大きな鉢に植え替えます。根や茎を傷めるとそこから枯れてしまうので慎重に行います。
寒冷地で雪が積もる地域では、雪がマルチ代わりになって地中根や若葉を保護してくれます。温暖地でも早春の頃に凍結する地域であれば、出てきた若葉が冷気に触れて枯れる恐れがあるため、なるべく高うねにして不織布などを上からかぶせて保温します。
エンレイソウの増やし方は、花後の種を取りまきする実生の方がおすすめですが、花が咲くまで約10年かかります。株分けは大変難しく、もし行う場合は剪定ハサミを消毒し分けやすいものを選んで行いましょう。無理に株分けをすると剪定した部分から腐朽して株全体が枯れることがあります。
出典:写真AC