エンレイソウとは?
エンレイソウはユリの仲間です。アジアや北米で見られる多年草で、春、芽生えて葉を出し、4月ごろ花をつけます。花を咲かせたあと、樹木の陰で育ち、秋には葉を落として休眠します。土の上から姿を隠し、根を広げて冬を越します。
エンレイソウの基本情報
名前 | エンレイソウ 延齢草 |
学名 | Trillium apetalon |
分類 | ユリ科エンレイソウ属 |
分布 | 日本、東アジア、北米 |
エンレイソウの生育場所
エンレイソウは平地から山、谷間、落葉樹の茂った根元の湿った土地によく見られます。日本ではエンレイソウ、オオバナエンレイソウ、ミヤマ(シロバナ)エンレイソウの3種類が代表的です。北は北海道から南は九州までほぼ全土に生息します。
エンレイソウの花言葉
- 奥ゆかしい美しさ
- 叡智
- 落ち着いた美しさ
- 熱心
木陰に凛として咲いている姿が落ち着きがあり、奥ゆかしさを感じさせる女性のようでこのような花言葉がつけられたようです。白い花から神々しく叡智、知恵を持つもの、一生懸命咲いているところから熱心などの花言葉も生まれました。
エンレイソウは食べられる?
中国では根を乾燥させて胃腸薬として飲まれているようですが、日本では地方によっては葉などを茹でて食べるところもあるようです。ただし、エンレイソウにはサポニンという成分が含まれており、抗菌・抗ウイルス作用、コレステロール除去などの働きをすることが知られていますが、たくさん食べると下痢や嘔吐を引き起こすため、あまり食用には向かないようです。
エンレイソウの名前の由来
海外では学名の Trillium(トリリウム)、「3から成るユリ」と呼ばれていますが、日本だとエンレイソウ。漢字にすると延齢草とおめでたい印象です。その名前の由来はどこからきたのでしょう。
エンレイソウの日本名の由来
中国ではこのエンレイソウの根を「延齢草根」と呼び、民間薬として用いられています。腹痛や食あたりに胃腸薬として、また、高血圧や神経が弱っている時などに乾燥させた根を煮出して飲みます。このように薬として用いられて胃腸などの症状が治り命ながらえた人がいたことから延齢草と呼ばれてきたようです。
エンレイソウの特徴
葉・茎・根
エンレイソウは根を茎のように延ばして広がっていく、つまり根茎で生長していく植物です。この根茎から3〜4月、芽が出始め、茎が伸びます。茎が20~50cm伸びて、先に葉を3枚つけます。葉の形は丸い菱形で直径15cmほどに広がります。
花
3枚の葉の中心から花を支える短い花柄が伸び、その先に4〜5月ごろ、花を一輪咲かせます。花びら(花柄)は3枚で、本当の花びらではなく3枚の萼(がく)だけの品種もあります。
実
花が咲いたあと、夏の終わりも8月末ごろ実ができます。地方によってはその実をショウブと呼んで食べることもあったようです。柑橘系の味がして子供たちには人気があったようです。ただし、葉や根にはサポニンという成分が含まれていて下痢など起こすため、あまり食べない方がよさそうです。
エンレイソウの見分け方
落葉樹の下、半日陰になるような場所で木漏れ日を浴びながら咲くエンレイソウ。小さな花なので見落としがちですが、わかりやすい見分け方をお教えします。
花・葉すベて「3」
エンレイソウは、3の倍数で構成されている植物です。茎の先に葉が3枚付き、花は3枚の萼と3枚の花びらが開きます。このようにすべて「3」とその倍数で構成されている不思議な植物です。学名のTrillium(トリリウム)のTri(トリ)はラテン語の「3」を意味します。つまりエンレイソウの学名Trilliumは「3から成るユリ」と意味があります。
花は1茎に1輪
エンレイソウは、春になると芽を出して茎を10~40cm伸ばし、3枚の葉を広げます。さらにその先に花梗(かこう)と呼ばれる花を支える枝を伸ばし、その先に1輪、花を咲かせます。この花梗が無い品種もありますが、日本には存在せず北米などに見られます。花梗がない種類でも3枚の葉の上に1輪だけ花がつくのでまるで葉の上にコロンと花が乗っているように見えます。
エンレイソウの代表的な品種
日本で見られるエンレイソウには大きく分けて3種類あります。そのほか北米や東アジアではまた異なった品種が見られます。また、原種から育てられた園芸品種がいくつもあります。今回、代表的なエンレイソウを5種類ご紹介します。
エンレイソウ
花びらはなく、花びらに見える萼があります。花びらのない品種はこの1種のみです。花は茶色く、直径2cmほどしかありません。
オオバナノエンレイソウ
直径5~6cmほどの大きな白い花が上を向いて咲きます。北海道ではよく見かける野草です。特に十勝、広尾町のオオバナノエンレイソウの群生が有名です。白い花をいっぱいに咲かせ、見応えがあります。
ミヤマエンレイソウ
シロバナエンレイソウとも呼ばれます。 はっきりとした3つの緑色の萼と3つの白い花びらで、横向きに花を咲かせます。
トリリウム・グランディフローラム
北米原産、高さ60cmくらいにもなる大きな株で、比較的育てやすいとされています。白い花の直径は5~6cmで、花びらが波打ち、優雅なイメージです。
トリリウム・グランディフローラム‘フローレ・プレノ’
トリリウム・グランディフローラムを改良した園芸品種。はっきりした八重咲きの白い花を咲かせます。「八重咲き大花延齢草」と言われることもあります。強く、育てやすい品種です。
まとめ
エンレイソウの特徴や見分け方、名前の由来などについてお話ししてきました。さまざまな品種も紹介しましたが、植物園に行くといろんな種類のエンレイソウを見れるかもしれませんね。季節のよい5月ごろ、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC