デンドロビウム・ノビル系は、日本でもっとも品種改良が進んでいる洋ランです。花色が豊富で開花期間が長く、ギフトとしても人気があります。ランの中でも特に育てやすく、洋ラン初心者の方も咲かせやすい品種です。国内に自生する近縁種の東洋ラン セッコクと交配した、小型のデンドロビウムも増えています。
園芸部類 | 洋ラン、鉢花 |
形態 | 落葉性多年草、着生植物 |
樹高 | 20〜60cm |
花の色 | 白、黄色、ピンク、オレンジ、緑、褐色 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
デンドロビウムは栄養を蓄えるバルブと呼ばれる、直立した太い茎の節に葉やたくさんの花を付けるのが特徴です。自生地では他の植物や岩などに、根付いて成長します。デンドロビウムには多数の系統があり、切り花が人気のデンファレもデンドロビウムの一種です。デンドロビウム・ノビル系の花びらはやや薄く繊細で、花にほのかな香りがあります。
学名のデンドロビウムとは、ギリシャ語の「樹上で生活する」という言葉に由来しています。セッコクの別名でもある長生蘭は、漢方の生薬として用いられることに由来した和名です。
インド北部のヒマラヤやタイ北部に自生する、デンドロビウム・ノビル系の原種です。ノビルを素に品種改良で、たくさんの種類が作られています。
デンドロビューム苗Den.Venus Smile‘Happy Time’ビーナススマイル‘ハッピータイム’
参考価格: 2,750円
ビーナススマイルハッピータイムの花は明るいクリームイエローの中央に褐色の班があり、原種の特性を残しているのが特徴です。
レア度 | ★★☆ |
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サイズ | 2.5号ポット(直径7.5cm) |
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デンドロビューム苗Den. Oriental Smile‘Fantasy’AD/AOSオリエンタルスマイル‘ファンタジー’
参考価格: 2,750円
オリエンタルスマイルファンタジーは、世界初となる赤系の色合いが特徴です。赤みがかったオレンジ色のグラデーションが美しいデンドロビウムです。この品種を作り出した山本デンドロビューム園は、デンドロビウムの組織培養に成功した草分け的存在で、日本を代表する洋ランメーカーです。
レア度 | ★★★ |
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サイズ | 2.5号ポット(直径7.5cm) |
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植え付け(鉢替え)時期 | 4〜5月 |
植え替え(株分け)時期 | 4〜5月 |
肥料を与える時期 | 5〜7月 |
花が咲く時期/開花時期 | 3〜5月頃 |
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
植え付け 植え替え |
○ | ● | ||||||||||
肥料 | ● | ● | ● | |||||||||
開花期間 | ○ | ● | ● | ○ | ||||||||
屋外管理 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
冬に満開のデンドロビウムをフラワーショップで見かけますが、本来の開花は3〜4月ごろにピークを迎えます。花が咲き終わった後に植え替え作業を行い、その後は秋までは屋外で管理できます。秋に屋外で寒さを感じて、花芽の素が作り出されます。
デンドロビウムは鉢植えで育てるのが基本です。小型のデンドロビウムは水苔で包んで、苔玉仕立てにしても育てられます。根の加湿を嫌うので、水苔の場合は乾かし気味に管理するとよいでしょう。
デンドロビウムは秋から冬にかけては室内で育てます。デンドロビウムの生育適温は18〜32℃です。レースのカーテン越しに日が当たる、明るい場所に置きます。エアコンの風が当たらないところで、冬は天気のよい日の午前中にややぬるめの水を与えます。やや涼しく感じられる場所の方が、花持ちがよくなります。
春5月から秋10月まではデンドロビウムを屋外に出し、半日陰の風通しのよい場所で育てます。根の加湿を嫌うデンドロビウムは、梅雨時期や秋の長雨が当たらない、軒下などが最適です。真夏は50%の遮光ネットや、常緑樹の木陰に移動して葉焼けを防ぎましょう。
デンドロビウムの用土は、コチョウランと同じ洋ランバークか水苔を使います。鉢は素焼き鉢やテラコッタ、陶器鉢が最適です。水苔で育てる場合は素焼き鉢を使って、乾燥気味に管理しましょう。洋ランの土はシンビジウム向きです。
小型のデンドロビウムの鉢替えを紹介する動画です!
デンドロビウムの水やりは、しっかりと乾いてから与えます。受け皿に水を溜めず、水やり後は溜まった水を捨てましょう。冬12〜2月は水やりをごく控えめにして(10日に1回を目安に)、花芽が動き始めたら徐々に増やしていきます。5月〜9月の成長期は、乾いたらたっぷりと与えましょう。10〜11月は量と回数を徐々に減らします。
デンドロビウムの花を咲かせるコツは、肥料の与え方です。肥料を与える時期は、5〜7月の3ヶ月間のみ置き肥として与えます。洋ランの肥料を使い、固形の有機質肥料や化成肥料どちらでも大丈夫です。その後置き肥は、取り除きます。液体肥料の場合は1週間から10日に1回で、バルブにしっかりと栄養と水分を蓄えさせましょう。8月以降は不要です。
デンドロビウムは丈夫で育てやすい品種ですが、特に屋外で管理するときには害虫の発生に注意します。アブラムシやハダニには、殺虫剤での予防と対策が効果的です。環境によっては、新芽や若い葉のナメクジの食害に注意しましょう。
デンドロビウムは葉に、ウィルス性の黒い斑点が出ることがあります。殺菌スプレーなどで予防と対策をしましょう。風通しよく管理して、病気や害虫の発生を押さえるのがポイントです。
花付きのデンドロビウムは、1輪ずつ花がしおれてきたら、花茎ごと摘み取ります。バルブと呼ばれる太い茎は翌年も花芽をつける可能性があるので、花後の管理で傷つけないようにしましょう。
花付きの鉢を入手することの多いデンドロビウムの選び方は、バルブと呼ばれる茎が太くしっかりとしていること、葉の緑が濃く数も多いことです。花付きのデンドロビウムが出回るのは2月ごろから、病害虫の発生がない健康な苗を選びましょう。
デンドロビウムのバルブが出揃った秋に、株全体の形を整える支柱立てを行います。株全体に満遍なく日が当たるように、支柱に誘引してバルブとバルブの間隔を整えます。花芽に影響しないよう、丈の低い支柱を使います。
デンドロビウム・ノビル系の植え替え時期は4〜5月に、2年に1回のタイミングで行います。用意するものは、洋ランバークまたは水苔・素焼きや陶器の鉢・鉢底ネットです。水苔の場合は発泡スチロールのかけらや、発泡系の底石を鉢底に入れ水はけをよくします。鉢の中でバルブがいっぱいになっていたら、株分けするか一回り大きな鉢を選びましょう。
デンドロビウムを育てているとバルブの上の方から、小さなバルブが出てくることがあります。高芽と呼ばれる小さなバルブをかき取って、植え付けて増やすことができます。花が咲くまでにはしばらくかかりますが、成長する過程も楽しめる増やし方です。
デンドロビウムは植え替え時期に、株分けして増やすこともできます。株分けでは少なくとも3〜4本のバルブと新芽を、消毒したハサミやナイフで切り分けます。バルブを傷つけないように注意して植え付けましょう。
出典:写真AC