スターチスは、世界各地に100種類以上分布するイソマツ属の植物の総称です。日本でよく知られているのは、おもに地中海沿岸を原産とするシヌアータ(Limonium sinuatum:シヌアツム)系の種類で、花浜匙(ハナハマサジ)の和名があり、一年草として扱われます。シヌアータ系のほかに、宿根スターチスと呼ばれる多年草の種類なども流通しています。
園芸部類 | 草花 |
形態 | 一年草、多年草 |
樹高・草丈 | 30cm~80cm |
花の色 | 青、白、紫、黄色、ピンク、赤など |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 花壇、鉢植え、切り花、ドライフラワー |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
スターチスの葉は、タンポポの葉のように地表近くで放射状に広がるへら形です。春になると、翼のような葉をもつ茎がぐんと伸びて直立します。茎は角ばっていて枝分かれし、その先にがくの目立つ小さな花が密集して咲きます。
カサカサした質感で花のように目立つのは変形した「がく」で、花はがくの先に小さく咲きます。花色として扱われるのもがくの色です。青、白、黄色、紅色とそれぞれに濃い色から淡い色まで揃っており、バリエーションは豊富です。花が枯れ落ちてもがくが残り、色あせにくいためドライフラワーやアレンジメント、仏花として用いられます。
以前はスターチス属に分類されていたため、現在でもスターチスの名で流通しています。最近は学名でもあるリモニウムの名で呼ばれるようにもなりました。スターチスは、ギリシャ語の「止める」に由来し、下痢止めの薬草に使われていた経緯からといわれています。リモニウムには「草地」の意味があります。
スターチス ラティフォリウム(ポット苗)
参考価格: 440円
リモニウム・ラティフォリウム(latifolium)は、ブルガリアなどの東欧に分布する種類で、淡いラベンダー色が美しい多年草です。日本には明治期に入ってきたといわれ、宿根スターチスとして流通しています。ニワハナビ、シーラベンダーのなどの別名があります。
種類と形態 | ラティフォリウム種、多年草 |
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花(がく)色 | ブルー |
「ブルーファンタジア」は、ヨーロッパやコーカサスに分布するリモニウム・ベリディフォリウム種(bellidifolium)と東欧に分布するラティフォリウム種の交雑品種で、四季咲き性の多年草です。枝分かれが多く、カスミソウのような繊細な印象が魅力です。
リモニウム・ペレジー(perezii)はカナリア諸島原産で、青紫色のがくと白い花が美しい種類です。葉は幅広で、茎の根元はほかのスターチスと異なり木質化する多年草です。ペレジズ・シーラベンダーとも呼ばれます。
種まき時期 | 9月~10月 |
植え付け時期 | 10月~11月、3月~4月 |
肥料 | 3月頃 |
開花時期 | 5月~7月 |
基本的には秋まき・秋植えの植物ですが、寒冷地や植え付け時期が遅くなった場合の庭植えは、根を広く張れないまま冬を迎えるため、霜枯れすることがあります。その場合はポットで育て、春になってから庭に植え付けるのがよいでしょう。
スターチスは庭植え・鉢植え、どちらでも育ちますが、霜と多湿に弱いため、季節ごとに適切な場所に移動できる鉢植えのほうが管理しやすいでしょう。暖地では冬越しの手間も少ないので、庭植え可能です。
日当たりがよく、できれば風通しもよい場所が適しています。雨に長く当たり続けると病気になりやすいため、何日も雨が続くときは軒下などに移動させましょう。雨の吹き込まないベランダは、育てやすい環境です。庭植えは、一段高くした花壇に植えると水はけがよくなります。
多くのスターチスの自生地は、海岸沿いや砂地の野原など水はけのよい場所です。水はけが悪いと根腐れや病気にかかりやすく、粘土質の土壌では育ちにくいです。植える場所をよく耕して腐葉土を混ぜ、一段高くして水はけをよくしましょう。酸性土壌を嫌うので、苦土石灰を少し混ぜてください。鉢植えの用土は、市販の酸度調整済み草花用培養土か、赤玉土:腐葉土:川砂(またはパーライト)を6:3:1の割合であわせて使います。
スターチスは加湿を嫌います。鉢植えは、土の表面が乾ききってから水やりするようにしましょう。宿根スターチスは特に多湿に弱いので気をつけてください。庭植えは、自然の降雨のみで育ちます。
スターチスを植え付けるときに、緩効性肥料を混ぜてください。3月ごろに一度追肥し、そのあと元気に育っていれば再度の追肥は不要です。葉の色が薄いなど、生育が悪そうなら再び追肥しましょう。肥料を与えすぎると、茎がひょろ長くなってしまいます。
アブラムシは生育期間をとおして気をつけたい害虫で、特に春先に発生します。新芽や葉裏に集まりがちなので、まめにチェックして洗い流してください。
気をつけたい病気は灰色かび病です。多湿で風通しが悪いと発症してしまいます。株間をあけ、下のほうの枯れ葉をこまめに摘み取り、水はけと風通しをよくして予防しましょう。
がくが十分色づいてから切り花にすると、長持ちします。ドライフラワー用には、がくがカサカサしすぎないうちに切り取ってください。花後そのままにしておくと、種ができます。宿根スターチスは、花後に株元から10cmほど残して茎を剪定します。一年草は、種を採り終えたら株を片付けましょう。
土を湿らせた育苗ポットに数粒ずつまき、ぱらぱらと1~2mm程度覆土し、霧吹きで水を吹きかけます。用土は、市販の種まき用土かバーミキュライトがよいでしょう。風通しのよい場所で乾かさないように管理し、本葉が出たら1つに間引きします。
種を育苗トレーにばらまきして、発芽後に生育のよい苗を育苗ポットに1つずつ鉢上げする方法でもOKです。
スターチスは苗よりも種のほうが多く流通していますが、苗からも育てられます。葉が多く、元気のよい苗を選んでください。
本葉が5~6枚出たころに、鉢や庭に植え付けます。ポットから植え替えるときに根鉢をくずさないように(根を切らないように)気をつけてください。庭植えは、冬の寒さが来る前に根を広く張らせておくと霜の被害にあいにくいです。寒冷地や植え付けが遅れた場合は、春まで待って植え付けましょう。
複数植えるときは、株間を30cm程度あけてください。
霜に当たると枯れてしまうので、冬は軒下に移すか不織布をかけるなど霜よけ対策をしてください。
冬は室内に置いてもいいですか?
屋内に取り込んでもかまいませんが、暖房の効いた場所に置くと春に花芽を付けにくいので気をつけましょう。霜に当てずに3℃~15℃程度の環境に置くのが理想的です。
スターチスは自立しますが、切り花やドライフラワー用にまっすぐな茎を保ちたいときは、支柱を立てて結んでおくと安心です。枯れた葉はそのつど摘み取ると病気予防になります。
スターチスは種を採って増やします。花後そのままにしておくと、茎が茶色になったころに種ができます。採取した種は砂を混ぜてこすりあわせ、覆っている毛を取り除いてからまいてください。
スターチス・シニュアータミッドナイトブルー【種子】
参考価格: 220円
シヌアータは一年草スターチスの代表的な種類で、花(がく)色が豊富です。ミッドナイトブルーは青系の人気品種の一つで切り花などでもよく出回っています。
種類と形態 | シヌアータ、一年草 |
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花(がく)色 | ブルー |
出典:写真AC